参加していた自主企画・第五回こむら川朗読小説賞(
https://kakuyomu.jp/user_events/16817139556453736660)が終わったので、応募した自作の解説をしてみようと思います。
こちらの企画、規定を満たした応募作品に対して闇の評議員3人からの講評がつくという企画です。今回はnoteの上限を越える(!)膨大な量の講評を積み上げていただいて、その労力と真摯さにひれ伏しています……なので、こちらとしてもアンサーを出さねば、ということで語ってみます。ちなみに企画の結果発表はこちらです→
https://note.com/violetsnake206_/n/nf8f989cb9f70 スクロールバーの小ささがすごいでしょう……。読む方は講評から面白そうな作品を読んでみていただくのも良いかと思います。時期未定ながら次回も開催予定とのことなので、書く方にもお勧めの企画です。
さて、一作目はダークファンタジー「妖精王の愛し子たち」(
https://kakuyomu.jp/works/16817139556455014299)でした。
こちらは、闇の評議員のお三方を刺そうと思って考えたものです。要項に記載されていたお三方の好みは下記の通り。
・謎の有袋類さん→黒髪長髪イケメン、人外、不遇少女が報われるファンタジー→魔王とか出してみよう
・謎のお姫様→構想時はどなたか存じ上げなかったのですが、ミステリ好きならギミックを仕込めば良いかな??
・謎の原猿類さん→ブロマンス、人外→過去作品からは生き物がお好きなイメージだったのですが、ブロマンスも行けるなら男同士の激重感情にしてみよう
……という感じで考えていきました。
あと、同類なので有袋類さんのお好みはあるていど分かる、と思うのですが、人外・不遇少女~というのは「人間の倫理や常識の外での幸せ」というところが大事なポイントだと思うので、「食べてもらうのを喜ぶ生贄たち」という方向から詰めました。
もう一点、今回のお題が「男性の一人称」だったので、得意というか大好きな「台詞のみの形式」にしようと考えました。この形式、情報の出し方を非常に恣意的に操作できる(台詞=一人称の思考とは異なるため、真実を言っているとは限らない)ので、叙述トリックやどんでん返しともとても相性が良いんですよね……。「本当のところはどうなんだろう?」と読者に想わせてなんぼの考察の余地がある作品にできる可能性が高いのです。
また、この形式で大事なのは「誰が誰に、どうして語るのか」というところ。普通の会話だとあんまり自分の心の奥底をさらけ出したりしないものですから。重大な秘密を漏らしたり脅したり騙したりするシチュエーションは──と考えて煮詰めていって出来上がりました。最初は、勇者の勝利を祝う宴会か何かが舞台で、昔語りが次第に不穏な気配を帯びていって──という流れも考えたのですが、ただのパーティ出席者に激重感情を漏らすような語り手ではなかったので断念した経緯もあります。「勇者の息子」というポジション、「子供を誘い出す」というシチュエーションが決まったらよい感じに収まったと思います。
講評を拝見して、狙ったところは刺さっていたので良かったです! が、形式や語り口ゆえに分かり辛かった面もあったようなのが反省です。いや、こういう重たげな雰囲気や世界観を愉しんでいただきたいとも思ってはいるのですが。台詞だけの形式にもこだわりがあるのですが。万人受けするものではない・伝わりにくいものである、と(あるていどは分かっているつもりだったのですが)肝に銘じる所存です。
講評にいただいたコメントで特にご返信がしたかったものについてお答えします。
> 例えば「そなたの父の生い立ちは、吟遊詩人の歌にも名高い。」という描写について、”謙遜のために自分のことを客観的に見ているのか”、”こいつは本当の父親じゃないのか”とこんがらがってしまいました。
これは狙ってやられていたのでしょうか?
この点、初読では「父」=「勇者」の台詞と見えるように、ネタが割れてから再読すると「そういえば第三者のもの言いだな……」と取れるように、という狙いでやっていました。初読時に迷われるのは想定外だったのですが、得意ジャンルの違いによるものかもしれないですね。私が好む翻訳もの、舞台、歴史・時代ものだとこういう言い回しはよくあるような気がします。役職・立場・関係性などを主語に置くというか、偉い人はあんまりIやyouという直接的な人称代名詞を使わないような気がしますがはっきりした知識はないので気のせいかもしれません!
こむら川1作目についての自分語りはこれくらいで。もう1作あるのですが長くなったのでまた明日以降に出したいと思います。