「働くヒト」小説コンテストにエントリー中の「ちっちゃいけど…」の冒頭、官庁訪問のシーンをつらつらと書いておりますが、それについてここで若干の言い訳、もとい、補足を……m(^ ^)m
国家公務員試験では、一次試験(筆記)の合格発表から二次試験(人物試験)の実施までに、一か月から一か月半ほどの間があります。この間、省庁側は「業務説明会」を開き、受験者に対する情報提供の場を設けるわけですが、これがいわゆる「官庁訪問」と呼ばれてきたものです。
あくまで「情報提供の場」に過ぎないはずなのですが、そこはやはり闇の人材争奪戦のようなものがありまして、「個別質問を受け付けます」という文言で事実上の個別面接をやっているところもあります。今年は、省庁間で「フライング禁止」の厳しい取り決めを設けるそうで、人事院が示す「採用の流れ」でも、「一次試験→業務説明会→二次試験→最終合格→官庁訪問→(各省庁ごとの)採用面接」であると解説されています。「官庁訪問」を最終合格と採用面接の間にわざわざ明記しているあたり、いかにも念押しのような雰囲気がありますが、実態はどうなるか分かりません。
主人公の官庁訪問シーンも、「闇の動き」があるものとして描いています。なぜかというと、私自身が、過去に「闇の動き」を知らずにヒドイ目にあったことがあるからです。未来ある若者に私と同じ不幸を味わって欲しくはありません。そんな願いも込めて、あのような記述をしています。
あれはまだ、国家公務員一般職(大卒程度)の試験区分が「国家Ⅱ種」と呼ばれていた時代。私はその試験を受けました。当時は「業務説明会」などという表立ったものはなく、一次と二次の間にあると言われていた「官庁訪問」は、全く闇の領域でした。エリート官僚候補である「国家Ⅰ種(現:国家公務員総合職)」の受験者は一次試験の合格発表直後から官庁訪問を始めるのが「常識」でしたが、Ⅱ種に関しては、全く情報がありませんでした。公務員専門学校にでも行っていれば、それなりに情報を得られたのかもしれませんが、独学組の私にはそういうサポートもありません。
ネットでちょろちょろ調べた私は、「Ⅱ種では官庁訪問はない」というガセネタを掴み、一次試験に受かった後、全く何もしないで二次試験に臨みました。面接当日、私が「ちっちゃいけど…」の主人公のように椅子に座ったとたん、面接官(確か三人いた)の一人が開口一番、強烈な質問をしてきました。
面接官A「官庁訪問はどこ行ったの?」
私 「へ? 行ってないです。Ⅱ種は官庁訪問しない、って聞いたので」
面接官A「ええええええ! そんなことないよお! みんな来てたよお!」
私 「ええええええ!」
面接官B「と、取りあえず、どこ希望してるの?」
私 「○○省と△△省と××省を……」
すると、面接官Cが、手元の書類をペラペラっとめくりました。どうもそれは、各省庁の「採用枠数」及び「内定者数」が記録された秘密文書だったのではないかと思われます。そして、
面接官C「もっと早く来てくれればあああ!」
私 「ええええええ!」
その後、最終合格はしたものの、当然ながらどこぞの省庁に内定したわけではないので、就職はできません。幸い、別の行先があったので、どうにか社会人にはなれましたが……。
情報社会と言われて久しい現在、さすがに私のようなボケはいないだろうと思っていましたら、拙作を書く上でいろいろとネットで調べているうちに、質問サイトに「官庁訪問のことを知らずに最終合格したんですが、これから採用面接に行って大丈夫でしょうか」という可哀想な書き込みを見つけました。南無阿弥陀仏……。
拙作を見てくださる方々の中に、これから国家公務員試験を受ける予定があるという方がいらっしゃるかどうかは分かりませんが、「闇の部分」があるかもしれないという視点で現実を注意深く見ていただきたいという願いをこめて、闇の官庁訪問シーンを書いた次第でございますm(_ _)m