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カクヨム漫画原作小説コンテストNES作品残念会会場より中継

 あ、もう映ってるんだ。
「はーい、曙川ヒナです。今日は作者のNESさんに代わって、カクヨム漫画原作小説コンテスト残念会の会場にお邪魔していまーす」
 カメラに向かってニッコリ。打ち合わせ通りに。やれやれ、急にこんなことを頼まれるとは思いもしなかったよ。
「NESさんは今、恋愛小説コンテスト向けの作品にかかりっきりのため、全く余裕がないとのことで、急きょ代理で私がレポートをおこなうことになりました。よろしくお願いいたしまーす」
 よく言うよ、まったく。

 一次選考通過作品が発表されて、エントリーしたNES作品が全て落選していることが確認できた。まあ、残念会の準備が無駄にならなかったのはいいことだ。会場は某ホテルのビュッフェレストラン。思いのほか予算がかかっている。これ、まさか万一の時は祝賀会にでもするつもりだったんじゃなかろうな?
 合同残念会ということで、今回は時空の枠を超えて各作品のメインキャラクターたちに集まってもらった。ナシュトに言わせればなんだっけ、「過去現在未来はヨーグルトソースの中で一つ」だかなんだか。どうでもいいかそんなこと。
 で、今回エントリーしていなかった作品の中から、ヒナがレポーターとして抜擢された。あのね、こんなの書いている暇があるんだったら続き書こうよ。第十三話の反響、割と良かったんだよ? 勢いがあるうちに続けておこうよ。もったいない。

 最初のエントリー作品は、ああ、なんだ土地神様か。
「まずは『かみさまクラスタ』から、トヨちゃんです」
「やー、どーもどーも」
 土地神様は相変わらず楽しそうというか、生き生きとした感じだ。神様が元気でいてくれているというのは、良いことなのかな。お皿にケーキを山盛りにしているのが、ちょっと気になるところではあるけど。
「今回は残念でした」
「しょーがないよ。元々レギュレーションオーバーだし」
「うーん、なんかあんまり三万文字とか関係なかったみたいですが」
「んでも、××とか、××とかが残ってなくて安心したかな。これで××に負けたとかだったら流石に悔しくて憤死してたと思う」
「・・・やめましょう」
 ダメだ、土地神様は言葉に遠慮が無さすぎる。カンペが出た。『マズい』判ってるよ。
「あとほら××とか――」
「えー、『かみさまクラスタ』からトヨちゃんでしたー」
 まだ何か言いたそうな土地神様の前から、取材スタッフ一同は無理矢理引き上げた。土地神様、ごめんなさい。今度クリーム大福買っていきます。

 次は『明日また、学校で』の人たちか。高校生だから、ヒナと同い年? 三年生だから一つ年上だな。
 あれ? いないんだけど。おーい、取材だよー。インタビューだよー。
「すいません。気が付きませんでした」
 お、かっこいい男子。主人公のマキトさんだ。やっぱり鍛えているというか、逞しい感じがする。厳しい世界観で生きているからか、まとっているオーラがヒナたちとは根底から違うよね。
「では『明日また、学校で』から、マキトさんです」
「どうも、ご声援ありがとうございました」
「えーっと、他のメンバーの方は・・・」
 ぐるり、と会場を見回すと。
 シェフがステーキを焼いてくれるコーナーで、何やら言い争いをしている集団が。
「てめぇ、サチカ、俺が先に並んでたんだぞ!」
「あら、整理券でも配ってたのかしら?」
 なんだろう、あのみっともない田舎者丸出し感。
「・・・その、現実世界でこれだけの御馳走が出るのって、珍しくて」
 なるほど。今回の会場は、皆さんにはちょっと刺激が強すぎたかもでしたね。カメラさん、あっちは撮らないでおいて、マキトさんを集中的に。
「わぁー、ごめーん!」
 そんな声がしたと思ったら、突然カメラにサッカーボールが激突した。ひっくり返るスタッフ、飛び散る料理。群がる新星学園三年一組三班の面々。
「ちょっとー、これどうなってるのー?」
 ビュッフェ会場でリフティングしちゃいけません。仮想世界ではそういうマナーはお勉強しないのか? まったくもう。

 酷い目にあった。気を取り直して、次は『ZAP!』のメンバー。こちらは皆さん大人しくテーブルについているみたい、かな。
「続きまして『ZAP!』から、ルミリアさんです」
「・・・だからさ、なんか文句あんのかっつーの」
 はい?
 あ、ものすごい数の空きグラス。ルミリアさん、耳まで真っ赤。アーシュさんもクラナスさんも視線を合わせてない。
「パンツだ全裸だって煽ったのは確かだけどさぁ、別に嘘は一つもついてなくない?」
「は、はぁ」
 うっは、酒臭い。目が据わってる。外見は小柄で、小学校高学年ぐらいな感じなんだけど、そういえばしっかりと成年済みなんでしたよね。お酒は二十歳を超えてから。その二十倍はトシ食ってるんでした。
「それなのになんで『ZAP!』が人気なんだー、って大きなお世話だぁー!」
 ルミリアさんが大声で吠えた。それはあれですね、監修さんのコメントですね。「なんで『明日また、学校で』より『ZAP!』の方が人気なんじゃー」ってヤツ。監修さん的にはそっちの方が力入れてたみたいだからなぁ。
「ハイファンタジーなめんなぁ!」
 ダメだ、そっとしておこう。っていうかこれ、下手に絡んだら会場で爆裂魔法とか使い出しかねない。

 えーと、次は誰だっけ。ヒナ、もう疲れてきちゃったよ。
「こんばんは。『ヨルを狩る者』から、小島ユウです」
 うわぁーん、癒しだ。ユウちゃん可愛いよ、ユウちゃん。
「どうも、初めまして。曙川ヒナです。NESの創作経歴からすると、大先輩ですよね?」
「NES名義では新規になるので、ヒナさんの方が先輩でいいですよ」
 ええ子や。なんか他のメンバーがシッチャカメッチャカだから、相対的に物凄く良い人に思える。
 普通に会話しているだけなのにね。
「今回は最後発ということで、色々とふるいませんでしたね」
「コンテストはもう度外視して、ぽつぽつとシリーズで書いていこうという意図だったみたいです。なので、結果についてはあまり意識していませんし、今回の残念会もわざわざ呼んでいただいて感謝しているくらいです」
 わー、まともにしゃべってる。今までの奴らは一体なんだったんだ。
「作品傾向が暗い感じですが、これは今後もそうなんでしょうか?」
「そうですね、これは仕方ない面もあると思います。読み手の好みもあるとは思うのですが、作者であるNESさんの考える作品世界の表現の一つなので、私としてはこういうカタチもまたあり得るんだな、とおおらかな気持ちで受け取ってもらいたいと思います」
「あ、ありがとうございました。最後にちゃんとしたインタビューが出来て嬉しかったです」
 いやもうホントに。ユウちゃんはにっこりと笑ってくれた。見た目は中学生くらいなのに、良く出来た子だ。
 ・・・そういえば実際は何歳くらいなんだろう?

 これで全員?
 そう思っていたら、ドレスを着た女の人が近付いてきた。おお、凄い綺麗な金髪。結い上げてまとめてあって、照明を浴びてきらきらと光っている。ドレスも良く見ると豪華。白のシルクに、金糸で刺繍が入っている。これ、高いぞ。
「ごきげんよう。本日は残念会にご招待いただいて、ありがとうございました」
 ええっと、いいえどういたしまして、って。
 誰だろう、この人? アイスブルーの瞳。真っ白な肌。美人だな。名簿ある? ちょっと見せて。
「私の名前でしたら、特別招待枠、のところにあると思いますわ」
 なるほど。えーっと、この人か。メリアさん。
「カクヨム漫画原作小説コンテスト、色々と参考にさせていただきました。ここで得られた様々な知見は、これから生まれてくるNESの小説世界の全てに生かされることになるでしょう」
 あれ? ところでメリアさんって、どの作品の人?
「それでは皆様ごきげんよう。十月になりましたら、カクヨム恋愛小説コンテストでお会いいたしましょう」
 カンペ。『まいて』って、ええー。
「えーっと、本日はカクヨム漫画原作小説コンテスト残念会会場か――」

 ぶちっ。

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