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近況報告と短編1

 スパイシー改めまして、茶畑紅です。久方ぶりの近況ノートになりました。

 執筆作業はずっと続けていたのですが、なんだかうまくいかなくて、投稿できずにだいぶ期間が開いてしまいました。うまくいかない理由はだいたいわかっていて、それを解決するためにこの近況ノートという機能を使うことにしました。
 この使い方が正しいのかわかりませんが、近況報告という名目の呟きと、ランダムで生成された単語を使った短編をこれからたびたびあげていこうと思います。

 今日の単語は、『ピアニスト』『和洋折衷』の二つです。こういった試みは初めてなので、無理やり入れ込んだ感がある上になんだか文脈もおかしい気がしますが、とにかく書く練習ということでこのまま置いておきます。もし気が向きましたら、読んでみてください。
 それでは、また。





・短編 お題 『ピアニスト』『和洋折衷』

 僕は今日、クラスメイトのピアノの演奏会に呼ばれていた。
 ホール内の一番隅のほうにぽつんと陣取って、何で僕はここにいるんだろうと思いながら開演を待っていた。
 もちろん、僕の座る席の隣には誰もいない。ホール内のどこかに他のクラスメイトもいるのかもしれないけれど、探す気はさらさら無かった。だって、別に仲良くもないし、お互いを認識しても気まずくなるだけなのがわかっているから。
 だから僕は隠れるようにして、この一番演奏の見辛い端の端の席をを選んだのだ。

 いや、ほんとうに僕は何をしに来たのだろうか。
 改めてそんなことを考えながら、小さく溜息を吐くと、薄暗いホール内で唯一明るい場所に、不思議な服装の女の子が現れた。
 上半身は着物のようでいて、下半身はフリルのついたロングスカートだった。和と洋が半端に混ざったその服装を見て、センスがいまいちわからない僕はアニメかなんかのコスプレなのかなと思った。

 そのへんてこな服装の女の子は、ピアノの正面で止まって、静かな表情を保ちながら、優雅な仕草でこちらにお辞儀してから椅子に座った。
 僕はそんな彼女の誘いでここにいるわけだけど、なんだか普段の彼女と比べてかなり印象が違った。普段はもっと天真爛漫な性格で、誰にでも好意的に接する女の子だったはずだ。だからこそ、クラスで浮いている僕のような奴もこの演奏会に誘ったのだ。「暇だったら見にきてね!」なんて、クラスメイト全員に触れ回りながらおどける様子は、今でも鮮明に思い出せる。

 だけど、何故だろう。僕は普段と違う彼女のその姿に、見惚れてしまっていた。心臓の鼓動が強く脈打つのを感じていた。こんなこと、僕の人生の中でいままで一度も無かった。
 ……ああ、これはまずいな。そう思ったところで、演奏が始まった。

 彼女は、全身を使って音を奏で始めた。僕は一番遠い席を選んでしまったから、指や足の動きみたいな細かいところは見えなかった。音楽についても流行のJ-POPくらいしか聞かないから、その良し悪しもわからなかった。
 だから、僕はただただ彼女を眺め続けた。そして、なんでこんなに後ろの席にしてしまったのだろう、と後悔した。そう思ったことで自分が抱いた気持ちにもはっきりと気付いてしまった。

 あーあ、と思った。だって、僕なんかが彼女と釣り合うはずないから。
 教室の隅にいるような奴と、クラスの中心でキラキラ輝いている人。そんなのどう転んだって、付き合うどころか仲良くなることすらでき無いだろう。それに、彼女結構モテるって聞いたし。
 それでも玉砕覚悟で突き進むべきでは? なんて一瞬思ったけど、そんな勇気無いだろうと自分自身で苦笑した。

 色々考えていたら、いつの間にか演奏は終えていて、彼女が少しだけ満足そうな笑みを浮かべてお辞儀するところだった。ホール内を温かい拍手が包み、僕も回りに合わせて控えめに拍手する。そしてそれが治まったらすぐに、クラスメイトに見つかる前に外に出ようと、逃げるようにして席を立った。

 日差しの下に出て一番に、僕は大きく溜息を吐いた。
 そして、この想いを胸のうちにしまおうと決めた。
 うん、それで良いだろう。どうせ叶わない恋ならば、何もせずにこの甘く苦しい想いに浸っていよう。臆病で根暗な僕にはそれがお似合いだ。
 僕は苦笑しながら、家へ向けて歩みを進めた。

 ……でも、もしまた演奏会に誘われることがあったなら、次はもっと前の席を取ることにしようか。

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