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想定よりも大きな風呂敷をちらつかされたとき、読者は唖然として読むのを止めるのかもしれない

 小説を読んでいるとき「新展開」はワクワクするもの……で、あると同時に、ゲンナリするものであるとき、ありませんか?

 新しいものを「覚える」ことは、頭に「負荷のかかること」なのだと思います。
 新しい小説を読み始めるときも、物語に入り込むまでは多少、時間がかかるので、これは合っているのではないかと思います。
「新展開」も同じことで、新しい情報がたくさん出てきます。

「新展開」――大風呂敷を広げるところです。
 目の前が、広大な唐草模様(でなくてもいいけど)で、埋め尽くされています。
 唐草模様(でなくても……)の上には、謎の物体が山ほど載っています。

「ちょっと、待て! これ、収拾がつくわけ!?」

 読者は心の中でツッコミます。
 風呂敷の上の謎の物体(=情報)を理解しなければ、先を読み進めることはできないようです。

「そんな面倒なこと、やってられるか!」

 そして、本を閉じ、あるいはブラウザをバックし、ブックマーク、フォロー等を外し……。
 ……作者としては、あまり想像したくないですけどね……。

 巨大で荒唐無稽なものを見せられたとき、人は「やだなー」と思うのではないかと思うのです。

 たとえば、それは、「夏休みの宿題だよ」と、分厚いドリルを渡されると、見ただけで拒否反応があるのと同じ気がします。

 けれど、そのとき「一日一ページやれば、ちゃんと終わるから」と、「分かりやすい目標」を立ててもらえれば、気持ちが変わってくると思います。
 更に、「一日分終わったあと、巻末の台紙にシールを貼っていけば、最後の日には素敵な絵が出てくるよ」と言ってもらえれば完璧です。(かな……?)

 最終的なものは大きくても、小さな「目標」と小さな「達成感」があれば、なんとかなる……気がします。
「達成感」というのは快感なので、また同じ体験をしたいと思うのです(たぶん)。

 だから、大風呂敷を広げても、その上に小風呂敷をたくさん並べて、「まずは、この風呂敷から見てみようか」とやっていけばいい――

 ――のだと思うのだけど、風呂敷広げまくった気がします!
 あー、やっちゃいましたね。

「達成感」を出す前に、次のやつ出しちゃったなー、――今回のエピソード……。
 
 ははははは……。
 ……ふぅ……。

『di;vine+sin;fonia ~デヴァイン・シンフォニア~』
  https://kakuyomu.jp/works/1177354054881135517

  第七章 星影の境界線で

  5.紡ぎあげられた邂逅ー2

 を、明日、土曜日、朝7時ごろ更新します。
 よろしくお願いします。

※第一部完結まで、毎週土曜日朝7時ごろ、定期更新です。
 近況ノートは、朝寝坊してもいいように(すみません)、前日に上げておきます。



 以下、恒例の執筆裏話「制作ノート」です。
(少しネタバレを含むため、スペースを空けます。
 本編のあとにお読みください)











 制作ノート
「表の事情、裏の事情(=キャラクターの事情、作者の事情)」

 今回の「メイシアの父救出作戦」。
 登場人物側の目的は、いわずもがな「メイシアの父を救出すること」でした。
 しかし、作者の目的は幾つもあって、そのひとつが「ホンシュアに会うこと」でした。

 小説でも、現実の出来ごとでも、目標や目的があるから、それに向かって進んでいく、というのが自然な形だと思います。
(だからこそ、たまには、ぼーーーっと何も考えないのもいいなぁ、なんてこともあるのですが)

 目的があればやる気が出て、それを達成できれば嬉しい。満足です。
 登場人物と一緒に物語世界を冒険している読者にとっても、おそらくそれは同じだと思います。

 だから、登場人物が「目的を達成する」のは、読者にとって(たぶん)快感です。
 けれど、今回の「ホンシュアに会う」ということは、作者の目的であって、登場人物(=読者)の目的ではないんですよね。それが達成できても、快感ではない。
 むしろ、謎が深まって、「ややこしいわぁ!」ということに……。

 書いているときは、ホンシュアの登場が読者にとってのストレス(新しい情報)になることに、気づかなかったんですよ。
 何しろ、ホンシュアの登場は、私にとっての目的で、どうやったら自然に、必然で登場できるか、頭を悩ませていたくらいですから。
 ホンシュアに関しては、私にとっての「目的」が「達成」できたので、私は結構「満足」していたんですよね。

 それが、時間を置いて再読したら……。

「もう少しで、脱出が成功するっていう、いいところで、めっちゃくちゃ、訳の分かんない方向に大風呂敷を広げているだけに見えるじゃん!」

 と、自分にツッコんだのでした。

 目的が達成できないまま、長い時間ほったらかしにされると、人間は「嫌になる」んですよね。
 これ、まずいかも。読者がついていけないやつかも……。

 構成の問題なので、今更修正できるわけでもなく、そのままです。すみません。


 フィクションなんだから、本当は全部、嘘。
 けど、それをどれだけ素敵に、心地よく夢見させてくれるか。その技を磨こうとあがくのが、物書きなのかな、なんて思いました。

7件のコメント

  • おはようございます~。

    「フィクションなんだから、本当は全部、嘘。
    けど、それをどれだけ素敵に、心地よく夢見させてくれるか。」

    以前、和泉ユウキ様の近況ノートを拝見した時にも思いましたけど、月ノ瀬様、素敵な名言が多いです……っ!

    ふだん、無意識に思っていることを言語化されて、ハッとさせられることが多い気がします。


    この達成感の話や、読者の目的、作者の目的の話もすごく頷かされました。
    物語を書く上で、どうしても作者として、ここでこんな展開にしたい、この情報を出しておきたいとか、作者の目的は色々と出てきますけれど、作者の目的を叶えつつ、「読者の達成感」も大切にする。
    すごく大事なことを教えていただきました! ありがとうございます!

    甘くて柔らかいばかりじゃつまらないので、時々、苦さや固さも入れますけれど、やっぱり書くからには、読者様に読んで心地よいと思っていただける小説を書けるよう、精進したいです(*´▽`*)
  • 月ノ瀬さんは、本当に色んなことを考えられていて脱帽します。

    達成感についての、読者側と作者側で視点を分けて書かれているの、とても興味深かったです。
    確かに、読者側の達成感と作者の目的って、どこかでズレたり食い違ったりもするのですよね。

    私の場合は、なるべく少しずつ情報を出していく(出来ていない部分も多々ありますが)、というのだけは心がけていましたが、達成感についてはあまり考えていなかったなーと反省してしまいました。
    私自身は、風呂敷広げて謎が謎を呼ぶ展開って結構好きなので、余計に目から鱗と言いますか。
    そういう考え方もあるのか、と視野が広がった気がします。
    心地良い小説……精進します!

    ……おおお、早く月ノ瀬さんの小説が読みたいです!
    近況ノートの後半を、読める様になりたい……(笑)。
  • 春さん
     コメントありがとうございます。

     もう、本当に今回のエピソードは、自分の都合で詰め込んでしまったなぁ、と反省しています。
     書いていたときには、ひとつずつこなしているつもりだったんですよね。
     作者である自分は、この先がどうなるか知っているから、スッキリ終わった気になれるけれど、客観的に考えたら「そこはまだ内緒ね? ネタバレだからそれ以上は言わないよ。でさー、次にこいつが現れてねー」という感じなんですよね。(この図々しい語り口調込みで、こんな感じ)
     土下座ものです! すみませんでした!

     ↑の言葉、良い言葉と言ってくださり、ありがとうございます!
  • 綾束さん
     コメントありがとうございます。

     素敵な名言なんて、とんでもないです。
    (褒められて、恥ずかしい。でも、実は凄く喜んでいるのですっ!)

     普段、考えていることを、つらつらーっと、|小説サイト《お仲間が居るところ》に書くと、「そうそう! そうだよね!」と分かってもらえるのが嬉しくて、なんか書いてしまっています。
    「あるあるだね!」と言い合えるのが凄く嬉しいです。
     ありがとうございます!
    (近況ノートはルビつかないんですよね。読みにくいぃ……)

     作者は話の続きを知っているので、どうしても読者と一心同体にはなれなくて、独りよがりになってしまうこともあると思います。
     今回は猛反省したのでした。

     そうそう! 甘いだけじゃ、駄目なんですよね。あとで、もっと甘~く感じてもらうためにも、塩コショウと唐辛子。ふわふわお布団でゴロゴロしてばかりじゃ、ありがたみが分からないから、たまには野宿を。
     心の揺れ幅が大きいほうが、きっと、あとのお楽しみが大きいはずですよね。
  • 和泉さん
     コメントありがとうございます。
     再び、お越しくださり、嬉しいです!

     小説を書くことに関係した、「なんか、それっぽいこと」を思いつきで書いているだけなので、『脱帽』なんて言われてしまうと恐縮です。
     ノリとしては、「物書きあるある」な感じで。
     あるいは「ねぇねぇ! 凄いこと発見しちゃった!」(←実は全然、凄くないやつ。でも、瞳はキラキラしている)という感じです。

     ちょっとだけ真面目に言いますと、「達成感」の話は、添削の相棒の友人氏にケチョンケチョンに(死語?)やられたことから考えたのです。
    「作者はソレを説明したいかもしれないけど、読者が『今』知りたいのはソレじゃないんだよぉ!」
    「別に後でソレを出すのは構わない。でも『今』は、そのときじゃない」
    「『今』、読者が気になっている、一番興味を持っていることはコレだろぅぅ!」

     ――と、まぁ、こんなふうに、めちゃくちゃ怒られたわけです。
     読者の顔色をうかがう、というわけではなくて、読者が『今』何を見ているか、何を知りたいのかを把握しろ、という感じ、です。

     謎が謎を呼ぶ展開、いいと思いますよ!
     私が今回反省していたのは、謎が謎を呼んで、更に謎に巻かれて、謎に流された感じになってしまったからです。つまり、やりすぎた……。

     作風や、作品の読者層によって、どのくらいの謎を出すのが心地よいのか、まったく変わってくると思います。
     その作品にとって、「ちょうどよい塩梅の謎」を見極めるのが大事ってことだと思います。

     私の小説を読みたいと言ってくださり、嬉しいです。
     でも、なんか、すごい作品を期待されていそうで、期待はずれになってしまわないか心配です。
     いや、ほんとに好みが分かれるので(近況ノートと作品では、別人に見えるかもしれない)。
     この作品はちょっと読むのが辛いな、と思ったら、無理はしないでください。和泉さんとお話するのは楽しいので、作品を読む読まない関係なしに、変わらず絡んでくださいな。
  •  なんか。世の中の問題の全ては、この「夏休みの宿題」の例えで乗り切れるんじゃって思います。

     最終目標と、そこに行きつくための小さな目標を設定しないとってことですね。
     RPGでも小ボス、中ボス、大ボス、ラスボスと段階を踏んでプレーヤーが強くなって出来ることが増えてわくわくするのですものねー。
     あれ? 読者の目の前ににんじんをぶら下げる所業な気も……。

     風呂敷広げすぎ……あるあるですね! ついつい筆が滑って思わせぶりな文章入れちゃったりして、着地点が構想通りじゃ済まなくなったりして。うふふ。
     最終的に面白くなれば良いと思います!
  • 奈月さん
     こんにちは!
     私の「小説を書いているときに、こんなことを考えたよ!」というおしゃべりに、再びのコメント、どうもありがとうございます。嬉しいです。

     夏休みの宿題。あれは、人間の心理をついた、高度に考え抜かれた仕組みだったのか……!
     なんて、ちょっと大げさに言ってみましたが、子供に限らず誰だって、段階を踏んで強くなるのは、「やったぜ!」感があって、気持ちいいですよね。
    (そして、にんじんをぶらーりすれば、読者は追ってきてくれるんですね。心がけます!)

    「ついつい、思わせぶり」あります!
     なんか格好いいから、あの一文入れちゃったんだ。へへ。
     ――なんて、言えないので、必死につじつまを合わせるという……。

     うまくまとめられたときは、自分の限界を超えた、ギリギリの世界を見たような気がします。
     そして、予定よりも壮大な物語に!
    (そりゃ、大言壮語を吐いたんだから、壮大になるはず?
     それでもって、結果オーライってのは、綱渡りなわけで……良い子は真似しちゃいけないやつですね)

     最終的に面白い! を目指して頑張ります!
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