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神々の憂鬱 (小噺)

神々の憂鬱 (小噺)


はるか昔、銀河のどこかで・・・


神々の間で「パラダイス・ゲーム」が流行した。地を這うものたちの上に降臨してΣ(幸福度) の極大化を図るのである。気の合う「神々」がチームを結成して、地を這うものたちによる人気投票の結果を指標に優劣を競う団体戦だ。

銀河辺縁系のある惑星に降臨した神々は、ひたすら人気取りに徹して、持続可能性も論理的整合性も無視して、甘言につられてだまされやすい「善良なものたち」(社会学的にB層と名付けられた)をターゲットにして、ポイントを稼ぎ続けた。

初めの数十年は成功した(ように見えた)・・・が、神々は何となく憂鬱だった。地を這うものたちが全く幸せそうには見えないからだ。確かに、数字の上では人気があるのだ。不満の声があれば、神々の特権をフルに活用して、無視したり、もみ消したり、場合によってはデータの改竄までして、神々のゲームランキングでは上位を維持してきたのだ。

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「虚しい・・・」

ある日突然、チームリーダーの一人が呟いて、ゲームを投げ出して別の世界に旅立ってしまった。

残された神々は困惑した。今までの場当たり的なやり方の矛盾が一気に噴出しつつあった。リーダーみたいに「向こう側」に行ける人が羨ましい・・・

「もう神々ごっこはやめよう」

チームの残務処理を話し合う場での残された神々の総意だった。神々だって自分に向き合って自分らしく生きてみたかったのである。

神々が宇宙のどこかへ思い思いに旅立っていった後、地を這うものたちのΣ(幸福度)は正の無限大に発散した。

彼らを抑圧していたものの正体は、神々の存在だったらしい・・・

(完)

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