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ツイッターにすごい映画の情報が流れてきたのでツッコミを入れる&レビュ返

 お久しぶりです。前に近況ノートを書いたのが六月なので半年以上ですね。レビュ返がどんどん溜まっていく状況を実は歯痒く思っていたのですが、ちょうどいいネタがツイッターに転がり込んできたので、今回はこれを元に近況ノートを書くことにしました。

 で、その「ちょうどいいネタ」が何かというと、『バイバイ、ヴァンプ!』という同性愛を扱った映画です。これがすごいんですよ。悪い意味で。とりあえず映画.COMのリンクと作品紹介を引用します。

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 『バイバイ、ヴァンプ!』 
 https://eiga.com/movie/92427/

 噛まれると同性愛者になってしまうバンパイアによって巻き起された騒動に立ち向かう高校生たちの姿を描いた青春ホラー。中世ルーマニアから人間と共存し、生きながらえてきた美貌のバンパイアたちが、新たな王国を築く場所として、日本の茨城県にある私立野薔薇高校に目をつける。そこに通う高校2年生の小日向京平は、友人たちと毎日を楽しく過ごしていたが、ある日、親友の吾郎が怪しい人物に襲われたことで事態は急変。無類の女好きであるはずの吾郎が女装し、同性愛者となってしまい、クラス中が大騒ぎになる。巷では町にバンパイアが現れるという噂が流れており、京平たちは、そのバンパイアに噛まれると同性愛者になるのではと予測を立てるが……。
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 すごい。(語彙の消失)

 どんな時代だってアウトなものはアウトだから「令和だぞ」みたいなことを言う気はないのですが、2020年という土壌からこの作物が取れるのは素直に驚きました。「どこから生えてきた?」という気分。まあ、そう思える風潮が形成されていること自体は悪くないんですけどね。マクロの問題というよりミクロの問題だと思いますし、見たところ作品への意見は批判の方が圧倒的に多いですから、社会への不信感みたいなものは覚えません。これが大衆に受け入れられてヒットしたら別ですけど。

 とはいえ「社会全体に万引きは良くないという風潮があるからちょっとぐらい万引きするやつが出てもしょうがないよね」とはならないわけで、そりゃ万引き犯の顔と本名をネットに晒して無関係の大衆がボコボコにするのはやりすぎだとしても、万引きされた店は万引き犯を怒る権利があるわけです。それで僕も一応ホモやっている以上、この『バイバイ、ヴァンプ!』という作品に対しては「万引きされた店」のポジションにいるので、批判してもいいんじゃないかなと。

 というわけで批判します。まあ色々と書きましたが、素直に言うとツッコミ心が抑えきれなくなっただけです。だって本当にすごいんだもの。ネガティブな話を聞きたくない人はブラウザバックして下さい。

 ではまずコンセプトの「噛まれると同性愛者になってしまうバンパイアによって巻き起された騒動に立ち向かう高校生たちの姿を描いた青春ホラー」から。

 これについては「噛まれると同性愛者になってしまうバンパイア」という設定そのものがアウトだという意見もあるのですが、僕はそうは思いません。まず同性愛者云々を抜きにして「噛まれると吸血鬼になる吸血鬼」自体はメジャーですよね。そしてその設定を入れつつ「吸血鬼の苦悩」や「吸血鬼と人間の共存」を描いた作品も珍しくない。珍しくないというか、むしろ現代の異種族ものはそちらをメインストリームとしている印象です。作品によってはゾンビとすら共存しようとするし。

 なので同様に扱えば、この設定でも「観られる」ものになる可能性は十分にあると思います。例えば主役格の中に素の同性愛者を配置して、パンデミックを傷ついているその人物の視点から見せるといったことをすれば、スタートはコメディなのに終わった頃には考えさせられる挑戦的な作品に仕上げることも可能でしょう。よって設定そのものを問題とする気にはなれません。

 しかし設定を肯定的に生かす術があるという話と、設定を肯定的に生かしているかどうかという話は、全くの別物です。吸血鬼ものには「噛まれると感染するバンパイアは怖いからやっつけよう」から一歩も出ていない作品だって無数にあります。現実に存在しない(少なくとも確認はされていない)吸血鬼ならともかく、それを同性愛者でやったら大変なことになりますよね。ではこの『バイバイ、ヴァンプ!』はどうかというと、全編公開されているわけではないので断言は出来ませんが、今のところはその「大変なこと」になっている側に入るのではないかと想像しています。

 2020年2月8日時点で映画.COMに記載されているコンセプトは「噛まれると同性愛者になってしまうバンパイアによって巻き起された騒動に立ち向かう高校生たちの姿を描いた青春ホラー」です。この「同性愛者になって"しまう"」と「青春"ホラー"」という露骨にネガティブな言語選択がすさまじく不安。外部媒体が宣伝で書くならまだいいんですよ。いや、よくはないけれど、実態が反映されていない可能性は十分にある。でも公式が紹介として用いる文章がこれなら、作品もそうなのだろうと思わざるを得ないです。(なお公式サイトも確認しましたが「なってしまう」も「ホラー」も存在しました)

 とはいえ僕は「クソゲーのいいところを探すのが好き」みたいな一風変わった嗜好を持っており、それでもまだ同性愛をきちんと描けれていれば……という一縷の望みに賭けたくなるわけです。しかしそのわずかな望みも次の文章がゴリゴリに削ってきます。

 >無類の女好きであるはずの吾郎が女装し、同性愛者となってしまい

 5億回見た。

 あらすじの段階で「ゲイ=女性っぽい」というド直球の偏見が登場しました。これは今の時代でも至るところで見るので本当に辟易しますね。いや、知ってますよ。インパクトのある画が欲しいんですよね。知ってます。BL的に女装はそこまで人気のあるジャンルではないですし、画を重視するにしても失敗だと思いますが。

 とはいえ、話に女性っぽいゲイが出て来るだけなら『きのう何食べた』レベルの作品でもやっています。実際にそういうゲイがいないわけではないし、要は全体の書き方が良ければいいのです。ひとまずあらすじを離れ、予告編ムービーを観てみましょう。

 まずはアバンで女子高生が吸血鬼に噛まれるシーンが入ってタイトルコール。そして『そのヴァンプに噛まれると、ヴァンプになって同性愛に目覚めるらしいよ』という女声のナレーションをバックに、教室の様子が映し出されます。その教室にいる「同性愛に目覚めた」らしき五組のカップルの描写がこちら。

 ①キスをする女子生徒二人
 ②同上
 ③男子生徒に覆いかぶさりベルトを外して放り投げる男子生徒
 ④女子生徒の肩に頭を寄せる女子生徒
 ⑤シャツの前がはだけた男子生徒とその胸を弄る女装した男子生徒

 AVかな?

 繰り返しますが、教室です。乱交パーティー会場ではありません(本編を観てイメクラ形式の乱交パーティー会場だったら謝罪します)。この光景を主役格と思わしき男子生徒たちが唖然とした表情で眺めています。そりゃそうだ。同じ立場だったら自分もそうなる。ホモだけど。

 今日びここまで「同性愛者は性欲を我慢できない」を剥き出しにしてくるとは思っていなかったので逆に新鮮でした。ここにツッコミ入れたくてこの文章を書いている節がある。設定のAVっぽさと作りの安っぽさが相まって本当にAVっぽいんですよ。ついでに女子生徒は誰も男装していないのに男子生徒はちゃっかり女装しているのも見逃せません。何も考えていないというのがよく伝わる非対称。

 この後も「先生は男らしい男が好きなんだな」とか言いながら公衆浴場らしき場所で勃起する男とか(そんな簡単に勃起するなら公衆浴場では勃起してる男を日常的に見ないとおかしいよね)、「同性愛の街になっちまう」「俺は欲に溺れたヴァンプなんかにならない」「個人的な趣味なだけじゃん」みたいな限りなく危なそうな台詞とか(文脈が分からないのでアウトと断言はしません。特に最後はミスリードの可能性が高いと思う)、1分30秒にも満たない予告映像によくもまあと感心したくなるほど不安要素がぎっしり詰め込まれています。ポリアンナもよかった探しを諦めるレベル。そして予告映像を一通り観た後、自分は何よりまず、こう思いました。

 本編がどれだけ酷いか気になる。

 というわけで、公開中止にならなければ観に行くかもしれません。ただ、個人的には中身を観る前に潰すのはあまり健全でない気がするのですが、中身以前に宣伝による荒れの方が大きそうとか(例えばTVで予告映像が流れたりしたら悲惨なことになる)、中身も最悪だった上にヒットしてしまった時の懸念とかあるので、公開中止の声が高まってそれが実現する可能性も結構ある気はします。あと小説や漫画に比べて映像メディアはステークホルダーがめちゃくちゃ多いので、キャリアに残るのがイヤという理由で引っ込められる可能性もあるんですよね。監督は作品に責任を負うのが当然なので仕方ないとしてもそれ以外、特に役者サイドは残したくない人もいるでしょう。間違いなく燃えるし。

 ちなみに公開された本編を観た後は余裕があればレビューをしますが、たぶん余裕は無いと思うので期待しないで下さい。遅れている仕事があるのです。すいません。じゃあこんなものを書くな? その通りすぎて何も言えない。

-----(「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」へのレビュ返)-----

 曇 かずなり 様
 胸張って生きたいですね。たぶんそれが一番大事なこと。

 小粋一栞 様
 衝撃的名作との言葉、ありがとうございます。読みやすくて刺さると評して頂けるのはすごく嬉しいです。目指していたところなので。

 @araiki 様
 胸張って生きたいですね。たぶんそれが一番大事なこと。あれ、これつい数行前に言ったような。まあいいか。

 @ttchi___ 様
 このタイトルはいわゆる「出落ち」になる可能性もあるのですが、それを越える中身を提供出来たようで良かったです。タイトルだけ面白いって最悪パターンだから……

 深海 悠 様
 続編も気に入って頂いたようで何よりです。続きを楽しみにしていて下さい。ところで、そこ本編のレビュー欄なんですけど……

 青い星 様
 ファンタジーはファンタジーでいいものだと思いますけどね。たぶん求めていたものと微妙に違ったと思うのですが、それでも最後まで引っ張れたことを光栄に思います。

 ひこまろ 様
 ありがとうございます。構成は気を使っています。気を使い過ぎて綺麗にまとまりすぎちゃうのが最近の悩み事。

-----(「続・彼女が好きなものはホモであって僕ではない」へのレビュ返)-----

 @sa10mimi 様
 そうですね。だいぶ気楽にしつつ、青春風味を増しました。っていうかもう一回あの流れやりたくないし。うっかり一気読みして頂いてありがとうございます。続きをお楽しみに。

 @merinikoniko 様
 こっそり始めてました。気づいて頂いて何よりです。莉緒ちゃんってみたいな子はやっぱり結構いるみたいですね……ツイッターの方でもトラウマ刺激された人いたし。とりあえず続きをお楽しみに。

-----(「曇り空のZOO」へのレビュ返)-----
 
 刈田狼藉 様
 深く心に突き刺さったようで嬉しいです。ありがとうございます。なんで曇天の動物園が出て来たのかは自分でもよく分からないです。僕の思う「家族」のイメージにぴったりだったんですよね。上手く言えないんですけど。

 イマ猫|作品紹介エッセイ 様
 感謝の言葉についてはツイッターとかでも語っているので、作品を紹介して頂いたリンク貼っておきますね。ありがとうございました。
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886094152/episodes/1177354054892530142

3件のコメント

  • >葱畑 りか さん

    たぶん真面目に考える方がバカっていう文脈の作品だと思うんですよね。その枠組みでそのテーマを扱うなという話で、個々のツッコミどころ以前の問題なんだろうとは思います。ぶっちゃけあまり金を落としたくない気持ちもあるので観ない可能性もある。
  • お久しぶりにコメントします。
    批判気味の文章ですが、それでも楽しく読ませるところに浅原さんの技量を感じました。

    それにしても、予告を見ましたがすごい映画ですね。
    もし仮に、噛まれたら肌が黒くなって縮れ毛になってやたら陽気なおしゃべりになってしまうバンパイアが現れた!そんなの嫌だ戦わないと!とかやったらば、ネット用語とかではない炎上が起きるでしょうに、なぜそれと同じ様なことをやっていると理解できないのでしょうか。しばしば言われる、いじり(戯画化する)といじめ(馬鹿にする)が理解できない方がまだ業界いて、さらにそこそこ有名な役者を起用できるという事実に驚きます。
    しかし、実はこれは見せかけで、ラストは観客を裏切る視点があるのかもしれない、というくらいの心構えは観る前なのだからしておいても良いかもしれないですね。
    時給出ても見ないけど。

    久しぶりのコメントがこういう事への反応で申し訳ありません。
  • >鳥海勇嗣 さん

    お久しぶりです。コメントしたくなる気持ちは分かります。本当に「なにこれすごい」ってなるんで。まあでも「なにこれすごい」って思えること自体はいいことですけどね。昭和ならこれ普通に通ったと思うんで。

    上映館数(めちゃくちゃ少ない)と全く金かかってなさそうな演出から見るに、ヒット狙ってる作品ではないと思うんですよね。金のかかったファン向けムービー。ノリとしては学園祭で淫夢喫茶やっちゃう感じで出て来たんだろうなと思います。まあ学園祭でも「教師が止めろ」と思うぐらいのものを、大人数の大人が結構な金かけて作り上げている点には強い残念感を覚えますが。

    書いたものに反応があるのは嬉しいのでコメントは全く問題ないですよ。ありがとうございました
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