三年前、カクヨムがオープンするというニュースはプレスリリースの段階で目にはしていました。
ただその時は「カドカワが運営するのかぁ。きっと大勢の才能ある書き手が集まって、自分の作品などあっという間に埋もれてしまうのだろう」などと、あまり興味を惹かれてはいませんでした。

そして迎えた一般向けサービス開始の、ほんの数日前。
「いやいや、やれるだけのことはやってみればいいじゃないか」
そのように思い直して「剣侠李白」の既存公開分を予約投稿したのでした。

あれからもう三年が経過していたということにちょっと驚きです。私も歳を取るわけだ。
オープン以降も細々と「剣侠李白」の連載を続け、たまには短編も書いてみたりしつつ、気づけば一人二人と読者様が増え、今ではSNSでも盛んに交流する仲間が大勢できました。今ではすっかりメインの活動場所。あの時やっぱり投稿して正解だったと思います。

さて、三周年記念ということで運営主催の企画が進行中なのはすでに皆さんご存知の通り。
数日ごとに発表されるお題に関する短編を短い期間内に書き上げて投稿するというもの。筆が遅めの私にはちょっとキツイかなと見送るつもりだったのですが、皆勤賞もあるということで「それなら、やるだけやってみようか」と参加してみることにしたのです。

既に六つのお題が提示され、先の五つについては(お題を正しく守っているかどうかはさておき)いずれも期間内に投稿できています。

今回はその裏話をしようと思います。ここまで前置きです。

■「梟の嘴」:お題「切り札はフクロウ」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888760643

「フクロウ」と言われて私が真っ先に思い浮かんだのは、「フクロウは中国で親不孝の鳥と言われている」というもの。
則天武后のWikiを読むとそのような話がちらりと書いてあります。

そして次に思いついたのは「梟雄」「梟首」といった物騒な単語。これらを組み合わせてみた結果、「乱世を生きる中で親不孝な真似をしなければならなくなった主人公」を書いてみようと思ったのです。

フクロウカフェだとか知恵の象徴だとか、そういった発想はむしろ欠片も思いつきはしなかったのでした。

主人公の名前「烏賀陽」はカラスの字が入っていますが、カラスは逆に親孝行の鳥だそうです。従者の「鷹木」「雲雀」には特に深い意味はなく、単に鳥の名前を入れたかっただけ。そしてうっかりそれを忘れた「田七」。

最後の伍子胥の故事は「梟首」の話を入れ込もうとした結果、登場することとなりました。この部分に「古月らしさ」を感じた方も居られたようでw

■「貢院の怪」:お題「二番目」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888800861

「二番目じゃダメなんですか」と発言した政治家がその昔おられましたね。
二番目は二番目でも十分すごい位置なのでしょうが、結局誰も気に掛けないんですよね。世界一の山はエベレストだけど、世界二位の山を知っている人は少ないはず。

そんなわけで、一番を目指したい二番目、そして私の得意分野たる中国モノで順位を競うものは何かといえば、思いついたのが科挙でした。
……崋山論剣? いやさすがにネタがマニアックすぎるので。

まったく解説なしで書いてしまいましたが、科挙には大きく二つの試験、地方試験の「郷試」と、全国試験の「会試」があります。年代を経るに従って予備試験やら追試やら面接試験やらが増えて試験地獄が誕生するわけですが、ここではそこまで詳細には背景を語りませんでした。不要な情報ですし。

試験場は「貢院」と呼ばれます。この貢院、試験期間中は完全に外界と切り離され、また精神的な緊張もあってか、発狂する受験者の話は多く残されているようです。ただ、そういった人間は大抵が郷試で脱落するので、会試ではむしろ少なかったとか。

それでも舞台を会試としたのは、単に主人公が「郷試で二番目だった」という設定を与えるためでした。

ストーリーは三つ用意していました。
一つは前作が暗い話だったため、逆に明るくしようとコメディ的にしたもの。現れる怪は魔物ではなくドジっ子幽霊の予定でした。
もう一つは因果応報を突き詰めたような話で、魔物に唆された主人公がライバルを殺し、試験に合格したと思ったら、翌朝発見された死体は自分のものだったという話。
最終的に選んだのが、嫉妬心さえも向上の糧とする内容の公開版です。

■「求愛求敗」:お題「シチュエーションラブコメ」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888828205

正直書くのを諦めようかと思いましたw
恋愛モノはすこぶる苦手な私が、さらにシチュエーションを作ってコメディをやらなければならないとは。

そして案の定というべきか、私が設定したシチュエーションはかなり物騒なものになってしまいました。
なんだよ「殺したい女と殺されたい男」って(←
さすがにこれは世間が求める「シチュエーション」ではないだろうと、そう思っていました。

ところがこれが意外にも好評を博し、今のところ最も多くの評価を得ております。何がどうなるかはやってみないとわからないものです。

先の二題もそうだったのですが、一度文字数をオーバーした原稿から少しずつ内容を削って最終稿としたため、ちょっと説明不足な点があるかなと思っています。

例えばヒロインが主人公を追い回す理由。作中では「父の仇」「焼餅を譲ったために死んだ」などと意味不明のことを言っていますが、本当はそれなりに理屈の通った背景を準備していました。
ヒロインの一団は実は鏢局(護衛運送業)で、碧眼貪狼に襲われた際には一切歯が立たず、主人公がいたから何とか九死に一生を得た。しかし父親は主人公の協力によって難を逃れたことを恥と思い、鏢局を引退=江湖の人間としての死んだも同然――というもの。

ただでさえ「点穴」だとか「江湖」だとかの武侠用語を説明なしで使っているのに、ここでまた妙な語や思想を書いても仕方ないと真っ先に削ってしまいました。

ところで私が描くギャグ系ヒロイン、なんだかちょっと似通った性格をしているような?
潜在的にこのようなタイプの女性が好きなのでしょうか、私(知らんがな)。

■「机上の空論」:お題「紙とペンと○○」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888859101

「○○の○○」構文のタイトルが連続していたので避けようと思っていたのに、またもそれを踏襲してしまうという。
書き上がりが深夜だったのがいけないのです。

今作のネタはタグにもある通り「半分実話」です。私が中国武術研究会のメンバーだった頃の苦悩をそのまま書いたような内容になっています。

募集要項に明示されていなかったので、お題の「○○」部分は明示していませんでしたが、あえて言うなら「熱意」あたりかと。

看板を立て、ポスターを貼り、ビラを配り……当時の私もいろいろやりました。いろいろやって、結果は出ず、ああどうすればいいのだろうかと頭を抱えていました。

最後のシーンは虚構です。あんな奇跡は現実には起きません(血涙)。
まあ、私も「廃部になるならそれも仕方ない」程度に軽く構えていましたし。
結局、修士課程一年目で二人ほど入部してくれたので、廃部は免れました。ただその後も厳しい状況は続いているようです。

恵美子に相当する同期はいましたが、実際の彼女とは無関係であることをここに弁明しておきます。あんな物騒な暴言は吐きません。無言で肘頂(肘鉄)を下部肋骨に叩き込んできます。痛いです。

■「この世界のルールはおかしい」:お題「ルール」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888886685

最初はもっと別の、シリアスな内容で書こうとしていました。
ルールは絶対守るマンな主人公、ルールを守ることこそ正義、ルールに従っていれば人生は順風満帆が信念。そんなある日、困っている人を「遅刻するわけにはいかない」と見捨てる。しかし後になってどうにも気になってしまい……という話。
冒頭を書いた段階で「うん、盛り上げられる気がしない」とボツに。

その後、イラスト担当と話している中で「ゲームを作るって、そのゲーム世界のルールを作ることなんだよな」との発言が。
そこから着想を得たのが今作でした。完全にギャグに振った一作です。

レベルデザインを主題としてはいますが、実のところ「これはレベルデザイン関係ないただのバグだよな」と反省もしていたり。
適当なレベルデザインってもっとこう、摩擦係数がおかしいので床が氷みたいに滑るとか、レベルに見合わない敵が出てくるとか、現実的に共存しえないオブジェクトが同じ場面にあるとか、アイテムの見た目と威力が一致していないとか、敵の攻撃に安全地帯があるとか、そういうことになるような。
まあ、あれです。勢いで書いたんだから仕方がないよね!(開き直り)

まったくの余談ですが、私は小説の他にもゲーム作成をやっていまして。
……かれこれ数年が経つというのに未だに完成しそうにありません。

■「???」:お題「最後の3分間」

これから書きますです。はい。
3分といえば、やっぱり試合時間? ちょっとありきたりかな?
「3分間」という表現もまた難しいんですよね。60進法が一般に使われ始めたのはいつから? 明や清の時代には使われていた? そんなことを考え始めると得意分野の「武侠」で書きづらくなってしまう。

明日は祝日ですし、ゆっくり考えましょう。
それでは後半戦もどうぞよろしく。