この話では李白の家族関係について色々と明かされました。父親・李客については以前にも登場していましたが、今回は妹・月圓が初登場。
twitterでの発言を見ておられる方はご存じかも知れませんが、私がこの月圓の存在を知ったのはほんのつい最近のことでした。
何しろ、李白の足跡を辿ろうと様々な文献に当たっても、李白の実家家族についての話はどこにも見つからないのです。父親の李客でさえ、本編ではいかにも本名のように扱っていますが、これは「よそ者の李」の意味しかありません。いわんや兄弟をや。
そんな中、中国旅行の折に見繕ってきた「道教的诗人李白及之痛苦」という書籍につらつらと目を通していたところ、こんな記載を発見したのです。
P158「李白的故乡他的少年生活」より
> 这地方还留下了一件和李白有关的古迹,那就是传统是李白的妹妹月圆的坟。
訳:この地における李白ゆかりの古跡の一つとして、李白の妹と伝わる月圓の墓がある。
――李白お前、妹がいたのかッ!
その時の私の驚愕は筆舌に尽くしがたいものです。ここまで話を進めておいて、突如妹が現れたのですから当然です。
「さすがに妹の存在を知った以上、登場させぬ訳にもいくまい。特に今の話の舞台は彼の故郷周辺なのだから、現れないことの方が不自然だ」
そうして何とか話に組み込もうとした結果、今回の登場と相成ったわけです。なおこの書籍にはこれ以上の月圓についての言及はなく、もっぱらキャラ造形には百度(中国でのYahoo!とかGoogle的なもの)の記事を参考にしたのでした。本編中に出てきた「李白が対聯に月圓の名前を入れたらむくれてしまった」の話もそこに記載があったものです。
……あ、のちの話のネタにしようと思っている内容も書いてあるので、ネタバレが嫌な方は検索しちゃだめですよ?
そんなもの好きはそうそういらっしゃらないと思いますが。
そして今回は月圓の他にも初登場のキャラクターが数名。
まず壬烈華と壬克秀。彼ら親子が営む壬龍鏢局については、「幽人対酌」にて名前だけは登場しました。ちなみに壬烈華が有する「白龍杖」の名前も「岷山隠棲」でちらりと登場しています。
最初に「幽人対酌」を書いた時にはここで再登場する予定などない、一回限りの登場のはずでした。しかしながら今後の話の展開には「李白と李家とを仇と見る相手」が必要だったので、彼らにその役割を演じてもらうことになったのでした。
そしてもう一人、袁夫人。巨猿の肩に乗り、鉾を振り回す惨殺魔。その武芸はなぜか李家のものに似ている。彼女の暴挙を止めるのは果たして……。
と、一目瞭然な敵役です。これからどのように李白らの前に立ちはだかるのか、ご期待ください。
次回からは「無悪餓鬼」をお届けします。桃蘭香と元林宗が魔境の噂に挑みます。乞うご期待!