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「利刀を以て斬れぬもの」第一章の裏話

今朝の更新で第一章の全エピソードが公開されました。
フォロー、応援、ありがとうございます。

別作「剣侠李白」はエピソード公開毎に裏話的記事を上げていますが、今作では各章毎に掲載しようと思います。

それでは参りましょう。以下、第一章のネタバレを含みます。





























■まさかのネタ被り

そもそもなぜ、倭寇と戚継光なのか?

そして一部の方はこうも思ったでしょう。
「なんでわざわざネタ被りを」と。

私のレビュー履歴をご覧になるとわかるのですが、カクヨムにはすでに「倭寇と日本剣術」を題材とした素晴らしい作品が存在します。
ここでまた倭寇を題材にした作品など投稿すれば、一体何の酔狂かと思われるでしょう。

……いや、あの、一つ弁明させてください。
あの作品を私が拝読したとき既に、本作の初稿はすでに七、八割がた書き上がっていたのです!
嘘みたいな話ですけれど! 本当なんです!
決して意図してネタ被りさせたわけではありません!

ではどうしてこんなニッチなネタを選んだのかと理由を問われれば、それは今は言えません。勿体ぶっているのではなく、先々のネタバレになってしまうので……。

本編が完結したら、その問いに答えるとしましょう。

■戚継光の人気

一章は序章の六年後、茶三なる男の自慢話から。

戚継光がこの年に北方の守りに移されたのは史実です。対倭寇の功績を認められての栄転、手勢の軍も三千ほど引き連れて行ったそうな。戚継光四十歳のころ。

戚継光と同時期に活躍した将軍に、兪大猷(ゆたいゆう)という将軍もいました。老将ながらこちらも倭寇と善戦し、人徳も優れていました。
しかし戚継光はその電光石火の働きぶり、かついくつもの戦果を挙げたことから世間での名声はより高かったようです。

なので、戚継光が浙江省を離れるとなれば当時の人々は大層惜しんだでしょうし、茶三らのように賞賛で以て見送ったに違いありません(勝手な妄想です)。

■さしもの英雄も妻には勝てない

さてそんな戚継光ですが、本編にもあったように妻の汪氏には頭が上がらなかったようです。
二人の妾と子供を殺すように迫り、戚継光が汪氏の弟を脅迫して事を治めたことも伝承に残っています。

……悪いのは浮気した自分だろうに、義弟にすべてをぶん投げるとか非道が過ぎませんかね?w
その義弟も戚継光の部下だったようで、つまり義兄であり上官からパワハラまがいな無理難題を押し付けられたわけで。いやはやその苦労を思うと涙が出そうです。しかし彼の活躍がなければ弥華は生きていません。
ある意味ではこの義弟君こそが弥華の最初の命の恩人なのかも知れません。

戚継光の恐妻家エピソードはもう一つあります。
本編にて茶三が「手前の女房が怖くなければそのまま立っていろ」と問いかけ、ただ一人立ったままだった相手の言葉に皆が爆笑する――これがそうです。

戚継光はあるとき、部下たちを集めて同じように問いかけました。
すると部下たちは即座に座り込んだのですが、一人だけがぽつんと立っている。
戚継光が「女房が怖くないとは、お前は勇敢だな」と讃えると、その部下は身を震わせて「将軍の言葉が聞こえなくて、そんなときは大人しくそのままでいろとかかぁに言われて」と答えたそうな。
本編とまったく同じですね。

ところで……これを読んでいらっしゃる方で、奥方が怖くない方はいらっしゃいますか?

■「天地合すれば、即ち敢えて君と断たん」

完全に脱線しますが、茶三がさらっと引用したこれは「上邪(かみや)」という漢詩の一節です。
簡単に訳すと「天と地とが合わさる日が来たならば、その時はあなたともお別れしましょう(=それまでは決して離れません)」という、愛を誓う詩です。
かなり古い詩なのでどの時代を舞台にしても使えるのが便利(←おい)。

……しかし茶三よ、お前、それを一体何度口にしたのだい?(笑)

■主人公(ヒーロー)は遅れて登場する

一章ももう終わり、ぎりぎりのところで登場した長刀の男。
彼こそが本作の主人公、余義です。

登場するのが遅いのじゃないか、って?
大丈夫ですよ、世の中には主人公が第三章に入ってからようやく登場した作品もあります(「笑傲江湖」金庸・著)。
……いや実際かなり引っ張ったみたいで申し訳ない。

主人公は余義、そして弥華の二人です。
ここからは弥華から見た余義の活躍風景、となるでしょう。しかし弥華もただ守られるだけでなく、自分で動きます。
守られてばかりでは江湖は生きていけません。男も女も強くなくては。

あと個人的に強い女性が好きなので(←)。
いや、それにしても弥華を虐めすぎじゃないかとコメントへ返信しながら気づきましたけども(←おいこら)。

■第二章予告

ともに弥華の母親探しをすることにした二人。
しかしその背後ではまた別の思惑が蠢いていたのでした……。

第二章「尋ね人」、乞うご期待!

コメント

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