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「天衣無縫」の解説と裏話

「剣侠李白」の第八話、「天衣無縫」が完結しました。
そんなわけで、今回はこのお話の解説・裏話など書きたいと思います。

なお、ネタバレ注意です。




















■元ネタは織姫様の不倫話?

「天衣無縫」の語の由来は、「太平広記」および「霊怪集」なる古書に記録されています。
そしてその内容が、簡単に言えば「織姫(織女)の不倫話」なのです。要約すると、

唐の時代、郭翰という男の前に天女が降り立った。
天女は自らを織女と名乗り、郭翰に身を任せると言う。
二人は結ばれ、しばらく共に過ごす。
ある日、織女の衣を手に取ってみると一切の縫い目がない。
織女が言うには「天界では針と糸を使いませんので」。
やがて天帝が与えた期限がやって来たので、織女は天に帰った。

詳細はググれば出てくるのでそちらをご参照ください。
今回はその説話を取り入れつつ、まったくオリジナルな「天衣無縫」を書かせていただきました。

この話、もともとは「東巌子の衣装チェンジ回」でした。
「剣侠李白」には私の友人が好意で毎回扉絵と挿絵を描いてくれるのですが、「幽人対酌」で描写された東巌子の衣装を絵に描き起こした際、「もっといい服を着させてあげて」と言っていたのです。もっとも、それは友人の推しキャラが東巌子であったのも大きな要因だったでしょう。

私としても、確かにちょっと派手さがないな、しかしどんな理由をつけて服装を変えるか……と考え思いついたのが「動けなくなった東巌子が変態の手に落ちて着せ替え人形のごとく扱われる」というものでした。
郭翰の言動や作る衣装の構造が「ちょっとアレ」だったのはその名残です。

さすがに一つ屋根の下で身動き取れない女が男と二人となるとアレがアレしてアレなので、程瑛というブレーキ役が置かれたのでした。
彼女は元の説話でも郭翰が娶った「程家の娘」として登場していますが、そちらでは破局しています。
こちらの物語ではきっと穏やかに結ばれたことでしょう。

■「壱に是れ身を脩むるを以て本と為す」

作中に登場した引用文です。出典は四書五経にも数えられる「大学」。
「(天子から庶民に至るまで)まずわが身を正しく修めることを根本とする」の意です。
どれだけ高い地位にある人でも、まず自分自身を律し、正しくあることができなければ、下位の者たちを正しく治めることはできません。
自分自身のことすらだらしがないのに大きなことを成し遂げる、そんな人物はいないのです。

しかし自分を律するのはそう簡単ではありません。そこで同じ場面では次の言葉も登場しました。

「人は着る服に見合った人間になる」

作中で郭翰が衣装づくりに情熱をささげる理由として挙げていた言葉です。
これはナポレオンの「人はまとった制服のしもべとなる」が元になっています。人間は制服を着ることにより、その服に相応しい人間になろうとするのだと。
仕事はスーツで、平日は私服でという服装による気持ちのスイッチもこれにあたるかもしれませんね。

そんな偉そうなことを作中で書いた私ですが、私は服など着られれば良いのだなどと思っています。いつも適当です。
なので、まったく身を修められておりません。

■ちょくちょく挟まれたサービスシーン

そもそも女性キャラが少ない「剣侠李白」、そのため東巌子は貴重なお色気担当でもありました。
初対面の相手に胸を揉みしだかれたり、野外で素っ裸になったり、下着一枚で過ごしたり、服が弾け飛んだり……。

ちょっと今回はやりすぎたかな、なんて思っていたりします(苦笑)。
まあ、さすがに「性的描写」のレーティングが付かない程度にはしています。そもそも作者がそんなものは書けませんので。

■時系列

「剣侠李白」は連作短編形式で、時系列もバラバラです。

今回の話は「幽人対酌」の後、「戴天道士」と同時並行で起こった出来事となります。
「戴天道士」の末で登場した辛悟と東巌子は、この「天衣無縫」で再会した後に李白を探しに来たのです。

■次回予告

次回タイトルは「比肩相如」。登場するのは李白、辛悟、東巌子の三名。
また、少しだけ更新頻度を上げてお送りする予定です。

乞うご期待!

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