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【古語・用語】大織冠伝

藤原鎌足の伝は《藤氏家伝》に収められていて、大織冠伝とも呼ばれる。大織冠とは大化三年以後の冠位制の第一位で、鎌足にはその最晩年に授けられた。

この伝記は藤原仲麿の撰かというから、八世紀半ば頃の成立ということになる。仲麿は鎌足の曾孫であり、藤原氏による藤原氏のための"自己申告"の書だから、その内容を真に受けてはいけない。

内容は藤原氏の権威付けのために、鎌足を不世出の英傑として描き、その行動を全て正当化するもので、空虚な賛辞やありきたりの美辞麗句も多く、史料としては余りにも一面的に過ぎるものだ。

鎌足の史実らしい人物像を取り出すには、まずここから虚飾を洗い落とすことが必要なのだ。

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