第四章 軍事知識補足
第四章において、軍事的情報について説明不足の所があり、色々と質問を頂きましたので、ここで説明させて頂きます。
主人公キョウスケが使用する『肩掛け三七ミリ』ですが、第二次大戦初期の三七ミリ対戦車砲の台座を取っ払ってかわ紐で肩から吊るしたような代物です。
重いうえに、装薬代わりにファイアーボールを使用しますので、身体魔法と投射魔法の両方が使用できる人材でなければ使用不可能です。
第二次大戦時の対戦車砲が、対人には使用されなかったように、この砲も命中率はあまり良くはありません。
この時点の設定では、砲身のライフルもほとんどないため、一メートル以内に弾着すればマシな方、となっています。
徹甲弾で人を狙うのは困難です。
キョウスケが対人では至近距離で使用しているのはこのためです。
カゲシンでの訓練の時のように重装歩兵が戦列を組んで突進してきてくれれば多少ずれても使えますが、遠距離弓兵にはキョウスケでも当てるのは極めて困難です。
「反動も大きい。バズーカのような成形炸薬弾じゃないからな。」
との発言ですが、かなり簡略化した説明です。
対戦車砲ですが、大きく分けると、物理運動エネルギー、つまり硬い弾丸を高速度でぶつけて貫通する徹甲弾系と、弾頭に詰まった炸薬の爆発、所謂、モンロー効果で目標を撃破する成形炸薬弾系があります。
バズーカに代表される多くの携帯型対戦車兵器は、ほぼ『成形炸薬弾』を使用しています。
では携帯型対戦車兵器で、何故に徹甲弾系が使用されないのかと言えば、反動が大きすぎるためです。
携帯型対戦車兵器は人間が使用する者ですから、発射時の反動が大きすぎると、射手が吹っ飛ばされることになります。
このため、携帯型対戦車兵器は可能な限り低反動砲、可能であれば無反動砲にする必要があります。
徹甲弾系は、弾丸の初速がなければ威力もありませんので、必然的に反動が大きくなります。
一方、成形炸薬弾は初速を必要としません。
目標までまっすぐ飛ぶ程度の速度があれば十分ですので、初速は徹甲弾系よりも遅くて良く、つまり反動も小さくできます。
ただ、現実問題としては成形炸薬弾の発射でも普通の人間には耐えられない程度の反動がありますが。
さて、無反動砲の原理ですが、大砲の発射の反動を何らかの方法で打ち消すことでなされます。
同じ威力の弾丸を正反対の方向に同時に打ち出せば、理論的に反動はゼロに出来ます。
しかし、反対方向にも弾丸を撃ち出すのは危険なので、現在の無反動砲の大半は、弾丸の反動を打ち消すのに爆発ガスを使用しています。
お分かりだと思いますが、大砲の反動が大きければ大きいほど、必要となるガスの量も多くなります。
そして初速の遅い成形炸薬弾の弾丸発射時の反動を打ち消すガスの量でもかなりの物になります。
現代の有名な携帯型対戦車兵器RPG7は別名『自殺兵器』と呼ばれるそうです。
これは後方ガスがあまりにも多く、よって、トーチカや建物内からは発射できず、外に出て発射する必要があること、しかも平地で発射するとすぐに敵に見つかってハチの巣にされることから来ています。
RPG7の射手は撃ったら直ぐに逃げる、逃げる算段をしてから発射するそうです。
徹甲弾型の携帯型対戦車兵器も理論的には作れるのですが、現実には後方ガスがとんでもない量になり、更には後方ガスを発生させる火薬の量も多くなって弾丸が重くなりすぎるため、現実的ではないようです。
そのようなことで、キョウスケの言葉は、成形炸薬弾ではないから、無反動化するためには極めて多くのガスが必要であり、そもそも、その火薬すらない、という辺りを簡略化したものになります。
MREは、アメリカ軍の前線用戦闘糧食で正式名称は勿論、Meal,Ready to Eatの略です。
味の点で難があるとされ、色々と誹謗中傷略語が出回っています。
知らない人には、分からないですね。すいません。
個人的には、それなりに食べられると思います。
我が家には緊急食糧として常時十個以上あります。
ちなみに、私でもMCW Meal Cold Weatherはちょっときついです。
イギリス軍の24hrレーションはもっときついです。
以上、説明の説明ですが、くどくてすいません。