04-22M09 キョウスケ隊激闘
龍神教がキョウスケ砦の掃討に全力をあげた状況
ベーグム師団は分断点隘路での防衛を放棄し、西側に戦線を下げたことで、戦線を安定させました。
南北から敵の挟撃を受けていたのを、東から北への方向に限定することができ、包囲を脱することもできました。
龍神教が旧川床を乗り越えてきた場合は挟み撃ちになりますので、完全にキョウスケ砦の防御力を当てにした戦線ではあります。
第一魔導大隊の残余は、二個中隊規模になりましたが、再編を完了し、前線に投入されています。
龍神教側はベーグム師団に対する攻勢を継続していますが、攻勢の主目標を完全にキョウスケ砦に絞っています。
最初の攻撃に投入した二個大隊が、特に指揮官クラスに甚大なる損害が出た事で引けなくなっている面もあります。
キョウスケが腹をぶち抜いたプレートメールの士官は大隊長でした。
キョウスケ隊に投入された部隊ですが龍神教最精鋭の第一歩兵連隊に所属する三個大隊と魔導大隊の合計四個大隊になります。
第一歩兵連隊に所属する三個大隊は、最初にベーグム師団に突撃し、その後偽装退却して敵を誘引し、しかる後に反転して攻撃に出た部隊です。
朝から継続して戦闘しているため、それなりに損耗していますが、直前にベーグム第一歩兵大隊を殲滅したことで士気は高揚しています。
ちなみに、東と南からの攻撃を連隊長が指揮し、旧川床上の魔導大隊と一個歩兵大隊は魔導部隊の指揮官が指揮しています。
龍神教側はキョウスケ砦を速やかに鎮圧した後に、その部隊を川床上からベーグム師団の戦線後方に降ろして包囲攻撃の予定でした。
レトコウ伯爵軍ですが、ベーグム家からの督促により東方に前進しています。
しかしながら、最高指揮官から末端兵士まで戦意は乏しく、水のない北白龍川を空堀に見立てて、そこで前進を停止しています。
そこから、龍神教に対して、戦闘を止めて撤退するように呼び掛けています。
しかしながら、龍神教側はこれを完全に無視しています。
クロスハウゼン・バフラヴィーですが、騎兵部隊による情報でキョウスケ達が、砦に立てこもっていることを知ります。
これの救援に乗り出すのですが、考慮の末、クロスハウゼン本隊と諸侯軍最精鋭の一個大隊で、白龍川旧川床上を突進することとしました。
砦の救援のためにはどの道、どこかで旧川床上に上らなければならないため、それであれば、最初から高地上を突進した方が良いと考えました。
旧川床上は幅が狭く、一個大隊ちょっとの兵力でも十分な事や、バフラヴィーが自身の攻撃・指揮能力に自信を持っていたことなどもあります。
また、何かあった場合は、旧川床上を降りて北方に退避することも可能です。
こうして、始まったバフラヴィー隊の突進ですが、敵兵力が不明で、所々に簡易とはいえ砦もあったため、そう素早くは突進できませんでした。
現実には、旧川床上に龍神教の兵士はほとんどいなかったのですが、ゼロではありませんし、砦などの防御施設があれば、偵察だけでもそれなりに時間がかかりました。
バフラヴィーが残した諸侯軍三個大隊ですが、白龍川分断点の前面で龍神教の二個大隊とにらみ合うことになりました。
バフラヴィーは龍神教を刺激することなく、対峙して拘束するように命じています。
これは、諸侯軍にとって、そして対峙する龍神教軍にとっても、大変ありがたい命令でした。