安崎依代

執事には三分以内にやらなければならないことがあった。 グッチャグチャにされたお茶の席を完璧に整え直し、ボロボロにされてしまった屋敷を完璧とは言わずともある程度取り繕い、突如お屋…

長い昼寝から目覚めた心地で目を開くと、いつも傍にいてくれたはずである相棒がいた。 それは見慣れた『いつもの光景』であるはずなのに、なぜこんなにも胸が締め付けられるのだろうか。 …

紅殷は市中の人間に『昼行灯』と目されている暇人だが、その正体は芙颯国きっての巫覡にして現皇帝第三皇子・金簪仙君その人。 自分の元に届けられる前に握り潰されていく民草の声を自ら拾…

【希死念慮】 生きたくないと考えたり、死ぬことを想像したりすること

『掃除人』　それは、国家の名の下に人を殺す、命の片付け屋。 人が増えすぎた世界で、彼らは国から不要とされた人間……『片付けモノリスト』に載せられた人間を殺すことを『存在理由』と…

小さな町の修繕屋『九十九堂』 そこには今日も、修繕を待つ品物と、そこに込められた想いが届けられる。 「物は大切に扱ってあげてくださいね。想いを込めて使ってあげれば、器物は主に…

幻想小説家・朝霧暮人。 世の中では『ホラー』や『ファンタジー』と呼ばれているジャンルを得意とし、飛び抜けて売れるわけではないが、「一度ハマったら抜け出せない」と言われているほ…

『紅の邪仙女』紅麗麗は、その邪術を以て王を誑かし、政を操り、ついには一国を手中に納め、己の欲を満たさんがために非道の限りを尽くした。 しかしその残虐非道な行いに決起した民と術師…

鷹羽侯爵家次男にして大日本帝国陸軍中尉の孝明と、猫屋敷子爵家令嬢の貴美子が結婚して半年。 鷹羽家としては孝明の女癖を叩き直すために、猫屋敷家としては貴美子を厄介払いするために強…

※本作を大改稿・大幅加筆した商業書籍版が2025/1/31角川ビーンズ文庫様より発売しました！　書籍版もよろしくお願いいたします！ 紅珠(こうじゅ)は宮廷呪術師組織・明仙連に…

第三十四回文学フリマ東京にて、会場限定シークレット本として配布した短編詰め合わせセットです。 商業著書『宮廷書庫長の御意見帳(著：硯朱華)』の番外編になります。 【宮廷書庫…

『錬力』という異能力を振るえる人間が、科学的に識別できるようになった世界。 　杏奈は錬力を一切持たない非素質者でありながら、そのずば抜けた洞察力から『見ただけで錬力の全てを解体…

「言い訳なんて、しませんわ。最初から、するつもりもありませんもの」

「ふぇぇぇ〜っ！　ついてない〜！　今日、本っ当についてない〜！」 殺し屋集団に拉致された先で、少年は泣き叫ぶ。 彼に付けられた二つ名は『アンラッキーセブン』　この街最凶の壊し…

筋肉が体に備わった天然の鎧であるならば、衣服は鎧の性能を隠すための防具である。 『押しかけ執事と無言姫』よりセダとルーシェの番外編です。 本編はこちら↓↓ https://k…

時々、意味もなく、深夜に散歩に出掛けることがある。 特に、酷く降った雨が上がった後には。 繁華街の鮮烈な電光。鏡のような水溜まり。何もかもが朧気な『彼女』。 ……私が出会っ…

ブッコローと合コンには行きたくないけど、撮影現場には馳せ参じたい(本音) 擬似的に作品を書店に置かなくてもすでに作品は置かれているはずだが(一応仮にも商業作品を世に出したことが…

今まで背中を預け合ってきた私達は、今夜この部屋から出てしまえば、皇帝の妃と宰相という立場に分かれる。 倫理も、道徳も、己の責務も立場も理性も全部グッチャグチャに溶かして、私達は…

私は目の前にいる彼女に向かって、腕に抱きしめていた黒猫のぬいぐるみを差し出した。 「だってこの子、涼華に似てない？」 ぬいぐるみが苦手だった私が、今日、わざわざこの場にぬいぐ…

今日も閑古鳥が鳴く本屋、禅慈堂(ぜんじどう) 常連の立ち読み客しかいない三畳間のレジで、今日もハルセはバイト時間に読書に勤しむ。 しかし本日の禅慈堂には新顔のお客さんがやってき…

不死鳥はずっと、死を求めていた。 華仙教において崇拝の対象とされた少女は、期限付きの命の中で安寧な『死』を求めて聖都を駆ける。 華仙教(かせんきょう)が聖都、月天(げってん…

時は明治。子爵家令嬢の女学生・永久子(とわこ)は、職業婦人を夢見て、学業の傍らとある小さなお屋敷で女中奉公をしている。 そよ風のように穏やかな青年家主『そよ風さん』と穏やかな日…

貿易業界を二分する大家、柏木と藤堂は、長年対立してきた歴史がある。 しかし自分達の周囲に見え隠れする黒い影の存在を危惧した両家は、この度三男の高人と四子の果琳の結婚を以って一時…

時を遡ること数年前、安崎依代は悩んでいた。 己の遺書代わりに書いた作品で(安崎依代名義での)商業デビューが決まってしまったことに。 「嘘やん……！」 今だから言える、安崎依代…

読者諸君は気になったことがないだろうか。 バトル漫画で派手に破壊された建物(背景)。あれを一体誰が次の描写までに完璧に、迅速に修復しているのだろうかと。 羅野辺市役所景観保護課…

『百物語』 怪談を100話語ると、本物の『怪』が現れるという、古くから伝わる怪談話。 ──『妖怪』なんて、現代科学の名の下に全て解明されたはず、だって？ ──『怪談』なんて…

『RUSH』　それは近頃巷を騒がせている盗賊集団。 『走り屋』Rabbitは、今日も走る、走る、走る。

『私』は目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドの中にいた。 どうやら『私』は、記憶喪失らしい。この町には時折、『私』のような人間が現れるのだという。 マテリアスタと呼ばれる職業がある…

【ノーカット版本編始めました！　こちらは「戦うイケメン」中編コンテスト用に文字数を削ったものになります】 ※2023年11月追記： 本編第１部の書籍化が決定しました！ 角川ビー…

「こんなこと、眠っていても簡単に分かることだ」 僕のクラスには、僕の幼馴染がいる。 朝霧暁子(あさぎり・きょうこ)。人呼んで『ホームルーム探偵』 遅刻常習犯にして居眠常習…

「お前、結婚しろ」 ある日、唐突に降ってきた父王からの言葉に、姫は一言こう答えた。 「お断りさせていただきます」 一方、王子は知らない間に兄の代理で結婚を押し付けられ、つい…

お姉ちゃんが死んだ。 遺品整理のために亡き姉の部屋に入った『私』は、机の上に残された姉の日記を手に取る。 そこに綴られていた、姉の言葉とは……

『真夜中』にはいつだって『秘密』が隠されている。 真夜中に目が覚めた私は、キッチンでお母さんに遭遇した。 何気ない会話と景色の中に隠された『秘密』に、あなたは気付けますか？

小説投稿サイト経由の新人賞で商業デビューを飾ったはいいものの、続きは書かせてもらえず、結局サイト版も諸事情あって更新できなくなった私。全てに絶望した私はサイトに残した同人版を削除…

破天荒皇子・時臣(ときおみ)が宮中での宴に呼ばれた。時臣付の陰陽師である敦時(あつとき)は、自分が同行できない宴での警護のために白猫姿の妖に代理を頼むが…… 『占破物語−占破り…

ヒーロー様。貴方様はみんなのもの。わたくしだけが専有することなんて許されない。 それがつらくて、苦しかった。 でもそれも今日でおしまい。 幸せ。わたくし、幸せだわ……

「いざという時は、水玻の代わりに、お前が死ね」 それが俺に与えられた存在理由。 君を生かすために俺は君に出会って、君を生かすために俺は君と別れる。 上古を舞台に紡がれる、と…

「我らが主よ、罪深き我らをお赦しください」 「……いや、これは許されないのでは？」 人間界へ降臨して仕事をこなした後、相方に連れて行かれたのはまさかの焼き鳥屋でした。 天使二…

「88歳の誕生日、おめでとう！」 瞼を開くと、君がいた。僕と同じ白い髪を翻した、君が。 とある夫婦の、88歳の誕生日。 ──願わくば、君と共白髪を成したかった。

パン派筆頭の私は、新学期の朝、トーストを口にくわえて走っていたら、運命の王子様と出会いました。 彼の名前は米田君。どんぶりにモリモリに盛った白米が誰よりも似合う人…… 思考回路…

カズサと私は、数多の死戦をともに掻い潜ってきた組織のバディ。 それが今日終わるって、私だけが知っていた。 未来の断片を聞く『私』とその相方の、最後の一瞬を描く短編小説。

「すっ……好(しゅ)きです！　サインしてくださいっ!!」 数年ぶりにイベントに出たら、私のブースに推しが来ました。　 これは推しの『推し作家』だった私が、推しの推し活によって…

東洋には『矛盾』という言葉があるらしい。何でも貫く最強の矛と、どんな攻撃でも防ぐ最強の盾が同時に存在したら、どっちかは嘘っぱちでそんな状況は存在し得ない、ということを言う言葉らし…

宮廷文化が花開く平安の世。 雅やかな世界に似つかわしくない怒号と足音が、今日も敦時(あつとき)の屋敷に響き渡る。 「妖退治に行くぞっ!!　敦時、ついてこいっ!!」 「いや、その…

ふと気付くと私は、『食堂』という文字に足を止めていた。 無表情な少女に呼び込まれ店内に入った私は、「お客さんが望んだ料理は何だって作ります」という店主にうながされ、ひとつオーダ…

第21回角川ビーンズ小説大賞【優秀賞＆〈一般部門〉審査員特別賞 三川みり先生選】受賞作品 ※こちらの作品を全面改稿した書籍版【押しかけ執事と無言姫 忠誠の始まりは裏切りから】が…

未榻甜珪(みとう・てんけい)は、宮廷書庫室に勤務する新米官吏である。 ただしただの新米官吏ではない。『仕官して半年で宮廷書庫室の存在意義を変えた』と言わしめる、大変優秀な官吏であ…

かつての私は、ブラック企業に勤めていた。 でも、当時の私は『自分がブラック企業にいる』という自覚がなかった。 自分が置かれた環境が『普通』であると洗脳されていたから。 ブラック…

昔から私は、要領が悪くて、どんくさい人間だった。 だから、華やかな同僚を家に上げてから、こんな事態になったことを焦っている。 華やかさんと、地味で黒子(くろこ)な私。 不意に私…

今宵は王子の妃候補を見つけるための舞踏会。しかし主役であるカイト王子の気は乗らない。彼の心にはずっと、10年前に事故で亡くした許嫁が住んでいるから。 しかし、ダンスホールでカイ…