「ようやく10万文字達成を果たせました。条件達成で王冠が黄色になるかと期待してましたが、それは無かったです(^^; ここまでくるのに思った以上に時間がかかりましたが――」
「ちょっと」
「えっ?」
「しれっと、いったい何を報告しているの? まさかとは思うけど……」
「そのまさか! 小説コンテストにノミネートされる条件を見事達成致しました。ヤター!\(^O^)/ やった、やった、やった、やった……」
「誰も知らない葉っぱ隊の物まねを即座に止めなさい。それとあなた、どうゆう基準で大賞が選ばれるか理解しているの?」
「そんなのは関係ない」
「あるに決まってるでしょう!? ノミネートは最低条件だけど、読者選――」
「ノミネートしてしまえば、あとはどうにでもなる。要は宝くじみたいなものさ。そして、だからこそ俺にも可能性が残されて――」
「残されてない! 残されてるわけがない! もし1%でもそこに可能性があるのなら、私はKADOKAWAの未来に不安しか感じない」
「……いや、冗談だよ。俺も大賞がとれると勘違いするほどバカじゃない」
「…………」
「せいぜい、佳作か特別賞か、悪くて努力賞ぐらいにおさまると思ってる」
「……見てくれてる? 私の閉じなくなった口を見てくれてる?」
「でも、俺はそれでいいと思ってる。ドラフト外で入団したって、第一線まで上り詰めた選手はいくらでもいる。それは、その後の努力で引き寄せたものだし、俺だってここからが重要なのは分かってる。ようやくスタート地点に立てた。今はまだ、そんな状況なんだから――」
「戻って来てっ! 今すぐに!」
「……え?」
「はあ~。いったいどこまで行ってしまうの? その想像力というか妄想力が、小説家に適してないとは言わない。でも、自分の置かれてる状況を直視せず、わき目を振らずに猛進するスタイルが、今の現状を招いてることに気づいてるの? あなたがすべきことは賞を目指したりプロと呼ばれることじゃない。先ずは世間との接点を見出だし、そこに歩み寄る方法を考えることよ。その観点から言えば、あなたはスタート地点にすら立ててないんだから」
「……そんなものは見つからないよ。物語全体に染み渡った俺のエッセンスを取り除けば、物語自体が崩壊する。歩み寄る方法なんて最初からないんだ」
「確かにそれは一理あるけど――」
「そして、誰にも読んでもらえず賞ももらえないんだとすれば、俺はいったい何のために小説を書いてるんだろうね……」
(何なのかしら? ようやく現実を受け入れたかと思いきや、これみよがしに憐憫を撒き散らかす、この鬱陶しさはいったい? もしかして次回予告? ネタ振りなの?)