「とりあえず、一旦アップしてたところを全部修正し終えました」
「それを知らない全ての人にとって必要のない報告だけれど、ここからが大きな問題ね。もともと需要が皆無の現状を後押しするように、しばらく女っ気のない展開が続く。仮に興味を持ってくれる人が現れたとしても、その暑苦しさを果たして我慢できるかどうか……」
「我慢が長いほど解放された時の報酬は大きい。何といっても、炎天下で汗水垂らして働いたあとの冷えた麦茶は最高なんだから」
「そこでビールをチョイスしないところが、一般の感覚とずれている」
「だって、俺はお酒が飲めないし読者には十代もいる。一概にずれているとは――」
「あなたが十代に擦り寄ろうとしても、気持ちワルがられるのがオチ。そこに理解を示してくれるのは、ごくごく限られた嗜好を有する者たちだけよ。そして、ターゲティングを誤るあなたは、その人たちからも見放される。必然あなたは、ネット環境という世界に繋がる手段を用いながら、そこで1人孤独と向き合い続けるのよ」
「なっ!?……え~この先の展開を急きょ変更して、ムチムチでプリンプリンの女子たちが、裸同然で痴態を繰り広げる――」
「嘘はダメよ、嘘は。薄っぺらな人間ではあるけれど、あなたは自分の正直な思いを言葉にのせ、小説という形で世間に訴えようとしている。それが唯一の取り柄と呼べるものなんだから。たとえ誰にも伝わらなくても、誰にも振り向いてもらえなくても、そこを偽ってしまえば全てが嘘になる。あなたに世相を読み取って適切にそれに応える能力はない。だったら、ただ自分の感じた思いを正直に、真摯に訴え続ける以外にない」
「…………」
「伝わりにくい小説ではあるけれど、ブレずに思いを示していれば、いつか必ずそれは伝わる。その前提にある、読んでもらえないという事実を度外視すればだけど……」
「やっぱり、今からでもボインちゃん路線に――」
「それはダメだと言ってるでしょう? この小説にだってヒロインはちゃんと登場する。それまで待ちなさい。ただ、それぞれにクセの強いキャラたちが受け入れられるかは分からない。最も支持を得られそうなエミリアの出番が、終盤という最悪の構成になってるし……」
「どうやら手詰まりみたいだね」
「……もう1つ見つけたあなたの取り柄。気弱で落ち込むことも多いのに、立ち直りが早く時折意外な図太さも見せる。それが失われない限り、この小説に光が当たる可能性は残されている……」