「と思ったら、馴染みの店が閉まってた」
「つぶれたの?」
「いや、つぶれてはないと思う。店の奥から戦車がどうとか言ってる声が聞こえるし……」
「そのお店って、確か変わった本を扱ってるのよね?」
「変わってるというか、あそこで扱ってる本は無類だ。あの独特の感性に触れた時、俺は人の持つ多様性の新たな側面を知って、感動すら覚えたんだから」
「だけど、それを目にする機会は失われてしまった。そして、この先ここであなたのような人が増えることは、もうない」
「もし、そうなんだとしたら、残念としか言いようがない。本を引き上げたことを俺がとやかく言う資格なんてないけど、願わくば、またそれが読める日が――!?」
「どうかした?」
「コメントをどう書こうか迷ってるうちに、店が跡形もなくなってるうぅぅぅっ!」
「閉まっていたのは、その準備だったということね。既に目的を達して店を続ける理由がなくなったのか。或いは、ここではそれが果たせないと判断したのか」
「そんなあぁぁ……」
「真相は推し量ることしかできないけれど、1つだけ言えるのは、人には前に進む以外に道は無いということ。そのためにここを去ろうと決断したのだとしたら、本人が後悔を抱かないためにも、あなたは笑って送り出してあげるべきじゃないかしら」
「…………」
「縁があったら、またどこかで人生が交わることもある。今日は思い出に浸りながら、飲めないお酒でも飲んでみちゃう?」
「そうだね。苦みと炭酸のきいた酒を、浴びるほど飲んで寝るよ」
「……と思ったけど、アレはどうやら水道水のことみたいよ?」
「ええっっっ!?」
PS.長らくお疲れ様でした。気が向いたら、またいつでも戻ってきてくださいね! ヽ(*^^*)ノ