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トレモロ 1巻 3章 7話

ブラストを囲んで、みな話を聞いた。
「エサをまいて、どこに持ち帰るか後をつける。アジトがあるとすれば、見つけられるかなって。」

「危険だし、顔がわかったとてどこにいるか。観光客も多いからなー。」キティが顔を傾けた。

「大丈夫。写真があればフレイヤで探せる事は、ウォウォラエさんの時にわかったし、ほったらかすと負の連鎖が起きる。」ブラストは切実に言った。

ウォウォラエは迷っていた。
「うーん、やっぱり危険よ。数も多いのよ。証拠品も探さなくちゃいけないし。私たちに捜査は任せて。何か情報がわかったら、また教えてちょうだい。さ、私は家に帰るわね。みんなもせっかくカピラリイに来たなら素敵な所もたくさん見てって。」

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ブラストも納得して、みなwolを出た。
ウォウォラエはジョギングしながら帰って行った。
「素敵な所、見に行かない?」クラウンが誘った。
ブラストとスノーはうなずいた。

あったりなかったり通りは賑わっていた。
赤い壁のお菓子屋の前につくと臨時休業の看板が出ていた。
クラウンは落胆した。
3人は買い物を楽しみ、通り沿いのオープンカフェで一息ついた。
「シシッ!オレはブラストの案、いけると思ったけどなー。」
「僕もー。」

「チャオ!クラウンさん。」
通りをルイージが歩いていた。
「妹のルイーズです。」
「初めまして。ルイーズです。」
白い毛色で黒目が大きく、ピンク色の耳をしたジージョがあいさつした。

「クラウンです。友達のブラストとスノーです。」
2人とも手を上げた。
「ごめんなさい。お誘いしましたがお店閉めたんです。」ルイージが申し訳なさそうに言った。
「どうしたんですか?」クラウンがたずねると「ドロボーに入られたんです。」目を細めてルイージが言った。

「え?またドロボーがでたの?」クラウンが驚くとルイーズはうなずき言った。「なくならないキャンディー瓶を取られちゃったの。これで12回目よ。お店を続けるのが怖くなってしまって。」

「えー?!僕、それ買おうと思ってたやつー!」クラウンは行きたかったお菓子屋さんがルイーズのお店だったとわかり、なおさら悔しくなった。

「みなさんウチに来ませんか?」ルイージが誘った。

「行きます!みんなも行こう。」クラウンは2人を立たせて、ルイージについていった。

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赤い壁のルイーズのお菓子屋さんは入ると甘い良い香りがした。
キャンディーも種類別に並んで、ウォウォラエの好きなレモンキャンディーもあった。2階の住居スペースに上がると棚にチーズが積まれ、ナッツの瓶やクッキーの瓶がたくさん並んだダイニングキッチンがあった。

カラフルなソファーに座ると、お菓子がたくさんテーブルに並んだ。
「お、お招きありがとうございます。お話を聞きたいです。」クラウンはそわそわした。

「シシッ!緊張してんのか?」ソファーではしゃぐスノー。

「ルイーズ、この方たちはすごいんだよ。誰も入ろうとしない洞窟からwolを見つけ出したり、ナイトメアを助けたり、お話してみなさい。」ルイージがうながした。

お菓子を食べながらルイーズの話を聞いた。まさにウォウォラエたちが捜査しているスワイプ窃盗団の手口だった。

「この顔見ましたか?」ブラストはディスプレイに指名手配犯の写真を出した。

「あ、この人とこの人が来ました。」ルイーズはニコラとメリッサの写真を指差した。

「すごい!もうそこまでわかったんですか?」ルイージが拍手した。

「はい。仲間の1人はもう捕まえました。」ブラストがオリビアを指差した。

「なんと!」ルイージが驚いた。

「やっぱりブラストの作戦やんない?」クラウンが2人に聞くと、2人は立ち上がった。

「ルイーズさん、荷物預かっててもらっていい?また後で取りに来ます。」
クラウンはお願いした。
ルイージとルイーズに見送られ、出発した。

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「ここから2つ目の通りにギルドあったよね?」クラウンはやる気だ。

「よしっ!行こう!」スノーもやる気に満ちていた。

ブラストは頼もしい2人を見て微笑んだ。

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カピラリイ・ギルド

「あ、狭い。」クラウンが装飾の壁をなでた。

「オシャレじゃね?」ブラストは白と黒の市松の床が気に入った。

「じゃあ後でな。」スノーはポッドに一番乗りで入った。

クラウンもポッドに入り、ポケットから銀の蹄鉄を取り出し、置いた。

ーカピラリイでの人探し、生還の特別報酬。盗品の返却。ナイトメアが追加されました。全ての報酬を受け取り、全身が金色に2連続光った。クラウンはレベル12になった。

モニターにナイトメアのモーションがループする。
ー呼び出すと騎乗できます。出現できない場所もあります。対象1体に悪夢を見せます。
保健所に登録しました。チョコの影響はありませんー

クラウンは退室を押した。
先にポッドから出ていたスノーとブラストはカウンターでギルド専用の捕獲道具の申請をしていた。

「僕も見たい!」クラウンは駆け寄った。

「もうレンタルしたよ。これクラウンの分ね。スリープスタンプっつって相手に押し当てると、しばらくの間、眠るやつね。レベルが上がったらスーツのカスタマイズで装備できるって。」

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3人はカピラリイ観測所に向かった。フレイヤが望遠鏡の周りを舞うと、ニコラ、メリッサ、モニカの居場所がしっかり光った。

ニコラとメリッサは普通の服装で市場をうろついていた。片方が観光客に話しかけると、片方がその隙にスリをしたり、鞄を盗んだ。スノーとゴーストは離れた所で追跡した。

モニカは男の相棒と店の裏から作業着で入り、堂々と荷物を盗んでワゴン車に乗せていた。クラウンとブラスト、チョコで追跡した。

日も暮れようやく街を離れたスワイプ窃盗団は山手の古いアパートに集結した。

山道は細く急で、アパートの手前に見張りがいた。

ゴーストとチョコが、分岐した道の草むらから出てきて尻尾をふった。合流した3人は犬達をなでた。

「シシッ!チョコのイカロスで見てくれ。」

「うん。チョコ、イカロスを使え。」

マップに19個のマーキングポイントがついた。

「うわー結構いるじゃん。」ブラストがマップの上下も見ながら言った。

「夜中まで待ってから入ろう。」スノーが見張りから離れた所に岩の窪みを見つけた。

夜になると土砂降りの雨が降った。
スリープスタンプを構えた振りをして、クラウンとブラストはエアーでスタンプを押し合っていた。

「しゅっ!」「しゅしゅ!はい、眠ったー。」「ついてないもん。」

静かにディスプレイを眺めていたスノーが犬達を起こした。

「見張りの交代が終わったぞ。行くぞ。」スノーが立ち上がった。

「ひどい雨だね。」ブラストは洞窟から顔を出した。

「雨季って言ってたもんね。」クラウンは支度した。

「シシッ!好都合じゃねーか。」スノーは少し笑った。

3人はワッペンを合わせて祈った。

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真夜中、クラウンは1人ナイトメアにまたがり、ゆっくり見張りに近づいた。

「お、おおい。止まれ。」監視台から長身で髭面の盗賊が椅子から立ち上がり走ってきた。片手にサバイバルナイフを持っていた。

クラウンは馬を止めた。「届け物を持ってきた。」

「ああー?!聞こえねーよ!馬から降りろー!」土砂降りの中で盗賊は叫んだ。

クラウンが馬から降りると、盗賊はクラウン目掛けてナイフを振り上げてきた。ナイトメアが前足で足踏みすると、クラウンが気づいてスリープスタンプを構えた。盗賊は苦しみ出し、うなされながら膝をついて倒れた。

「もう意味がないけど、一応。」クラウンはスリープスタンプを押して監視台の椅子に座らせ、ディスプレイで合図を出した。アパート裏の馬小屋の裏まで、みな走った。

アパートの裏の地下に入る扉を開け、スワイプ窃盗団のアジトに静かに入った。

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階段を下り、馬用の藁をよけると、廊下が見えた。
左に部屋が2つ並んでいる。
スノーが手前の扉を開けて、ゴーストとブラストにGOサインを出した。
部屋のベッドでモニカは寝ていた。
ブラストはそっとスタンプを押した。

ブラストが笑顔で部屋から顔を出し合図すると、次の部屋の扉をスノーが開け、クラウンとチョコが入った。寝ている盗賊にスタンプを押して合図した。昼間、モニカとペアの男だった。

部屋を出て、廊下を右に曲がると、右に部屋、そのまま進むと階段が上に続いている。

部屋の扉に手をかけようとした時、上から誰か下りてくる気配がした。
急いで盗賊が眠っている部屋に戻り、身を潜めた。

ギー、バン。「交代だ。」
「このアメうめー。無限に出てくるな。」
「勝手に使ったらバレるぞ。」
「無限だからバレやしねーよ。ヘン。」
「私たちも食べよう。」
マップには地下に2つマーキングポイントが残った。
盗賊は扉を閉めずアメに夢中になって言った。
「もう1っことって〜。」

静かにスノーとブラストが近づいて後ろからスリープスタンプを押した。
男女の盗賊は眠った。

スノーに手招きされて、クラウンは部屋に入ると、盗品の山だった。
大きな木のヘラや瓶詰めのアメ、酒、宝飾品、装備品、武器、動物の置物、何に使うのかわからない代物、何かの部品がたくさん積まれていた。
ブラストはディスプレイを出してログに残した。

スノーを先頭にマップを確認して1階の廊下をのぞくと、玄関ホールで男が2人カードゲームをしている。土砂降りの雨音に、強風が扉や窓を揺らしている。

「オリビア、雨季の集会あるのに帰ってこねーな。よし、カード2枚くれ。」
「忽然と姿を消したらしいぜ。逃げたって行くとこねーだろ。よし、オレは後1枚で勝負だ。」

廊下の電気をチョコが消し、闇に乗じてクラウンはスタンプを押した。電気をつけると盗賊はカードの上に顔を乗せて眠っていた。内側から1階の玄関の扉の鍵を開けた。
「この先は危なくなったら逃げろ。いいな?」スノーが顔を近づけて真剣な眼差しで言った。2人はうなずいた。

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スノーは1階ホールの扉を蹴破った。大きなダイニングテーブルを囲んで盗賊達は酒盛りをしていた。
ニコラとメリッサはベロベロでテーブルに肘をつき、うなだれている。
テーブルに足を上げて寝ている盗賊が数人。
数人がビックリして酒瓶を握り、うめきながら立ち上がった。
「ここをどこだとー、」酒で潰れた声で盗賊が話し終わる前に、スノーはシェルを使った。

スノーは岩肌になり、両手を広げて回ると、酒瓶を振り上げ向かってくる盗賊2人を弾き飛ばし、盗賊は転がった。ニコラとメリッサはテーブルに登り、スノー目掛けてナイフを突き刺したが、はじかれナイフは飛んで行った。スノーはテーブルに手をついて、中央で回りながら蹴った。ニコラとメリッサは部屋の壁まで飛んでいった。スノーはテーブルの上でブレイクダンスを踊っている様だった。3人の盗賊も順にテーブルで回るスノーを引きずり下ろそうとするが、蹴りや尻尾で飛ばされた。ゴーストが部屋に静かに入ってきて机の下に潜り、くうん。と鳴いた。スノーはフリーズを使った。

動けなくなった盗賊7人にスリープスタンプを押し、部屋の床に転がした。

ブラストが先頭になって2階に上がり、姿勢を低くしてマップを見た。階段ホールは広く、そのまま部屋になっていた。階段を上がって右側に大きな棚があった。
棚にもたれた酔っ払いの盗賊が1人、テーブルを挟んでもう1人、外のベランダの方を向いて悪態をついている。

2階のマーキングポイントは全部で5つだ。

ブラストが低い姿勢のまま棚のそばまでいき、クラウン、チョコも続いた時。正面のベランダから見張りが帰ってきて、見つかった。
「ボスー!侵入者です!」

棚のそばにいた盗賊が、棚をバンバンと2回叩いた。
棚の奥から野太いダミ声で「殺せー。」と部屋に響いた。

ブラストは棚の前で構えた。
「ショックウェーブ!」棚が吹き飛んで、棚の裏に穴が空いた。髭面の大男が驚いて目を見開いていた。スワイプ窃盗団の盗賊長だった。

2階にいた3人の盗賊は衝撃波で気絶し、すかさずクラウンとスノーがスリープスタンプを押した。ブラスト達を見た盗賊長は「ギルドか。」と、つぶやいて、ベッド脇から火炎放射器を取り、ブラストに向けて火を放った。
ブラストが下がると、盗賊長の後ろの扉が開き、火の勢いが増した。
棚や家具に燃え移り、クラウンが棚の穴に入ろうとした時。
盗賊長が命令した。「柵を閉めろ!」

ザン!棚の穴に柵が降りた。

裏口を開けに来た盗賊の仲間に火炎放射器を渡し「こいつら焼き殺せ!」と、盗賊長は言い残し、後ろの扉から外に逃げていった。

「クラウン!外に出て追いかけるんだ!」ブラストがラグを引き抜き、寝ている盗賊に燃え移らないようにラグで火消ししながら言った。

盗賊は狂気の顔で柵越しに火炎放射器で燃やしまくる。

スノーは外のベランダから回り込んで火炎放射器を持った盗賊に後ろから近づき、ドン!スリープスタンプで眠らせた。

「ブラスト、一旦外に出ろ!」柵の向こうからスノーが叫んだ。

「オレは火を消してから追いかける!」

スノーはゴーストとクラウンを追いかけた。

燃え広がる部屋の中で、ブラストは眠った盗賊が焼けないように、カーペットを引き抜いて盗賊にかけた。パワー発動まで後10秒。
ブラストはヘルメットを装着し、燃え盛る炎を見ながら、ゆっくり息を吐いて静かに待った。

「ショックウェーブ!」

炎は一瞬で吹き飛び、壁や屋根がボロボロと崩れ、そこから大雨が吹き込んだ。

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クラウンは来た道を素早く戻り、チョコと1階正面から外にでた。
左から盗賊長が馬に乗り、駆け出した。
「ロージー!」盗賊長の背中に当たったが、鎧で防がれ、大雨で火もすぐに消えてしまった。盗賊長が振り返ってクラウンに石鎚を投げた。
水飛沫を上げて飛んできた石鎚がクラウンの腕に当たった。クラウンは痛みをこらえて呼んだ。
「ナイトメアー!」
腕を押さえながら追いかけるクラウン。
盗賊長はあっというまに監視小屋の手前まで馬で駆けて行く。
監視小屋の正面からナイトメアが現れた。
盗賊長は馬を急に止め、馬から降りた。
ナイトメアの手綱を無理やり力で引いて行こうとした。
クラウンは追いかけながら必死に叫んだ。
「乗っちゃだめだー!」
盗賊長はクラウンを笑った。盗賊長は強引にまたがると、ナイトメアは前足を上げていなないた。
「ゔわーーー!!」
落馬した盗賊長は坂道を転がりながらうなされ叫んだ。

スノーとゴーストがクラウンに追いついた。
「ナイトメアか?」
クラウンはうなずいた。
ブラストも追いつき、スリープスタンプを押したが、盗賊長はうなされ続けていた。

スノーはwolとギルドに連絡した。

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数十分でウォウォラエとキティが駆けつけ、ギルドの捜査員、犯罪専門家、wolの保安警備員、警察ロボが続々と到着した。

会う人会う人に「無茶をするな。」と、ありがたい説教を頂き、3人は反省した。しかしキティは違った。キティは打撲ですんだクラウンに傷パッドを貼って、喜んだ。「やったぞ!本当にやったんだな!スワイプ窃盗団を一網打尽だ!地下の盗品も丸焼けにされず大手柄だ!」3人は笑顔になり、犬達は尻尾を振った。

救護車にウォウォラエが来た。
「キティ、落ち着いて。みんな無事でよかった。危険を冒してまで捕まえてくれてありがとう。街のみんなを代表してお礼を言わせて。明日wolでね。」

煙の上がったアパートにウォウォラエは戻っていった。
ギルドの犯罪専門家が雨宿りに来た。
「今、スリープスタンプ、回収しましょうか?」
みなスリープスタンプを渡した。
ディスプレイを見ながらギルドの専門家はうなずいた。
「このパーティのバランスはすごく良いですよ。クラウン氏、この世の全てにエレメントがあります。大雨の日は力に気をつけて。これからもご活躍を期待しています。」
専門家はアドバイスを残しアパートに入っていった。
クラウンは嬉しくなった。

キティがテスを運転してホテルまで送ってくれた。

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続く。

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