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『ついぐなの人魚は血を泳ぐ』後書き

ついぐなの人魚は血を泳ぐ
https://kakuyomu.jp/works/16817330650757697792

 カクヨムコン8に参加したざっと26万と5千文字長編ホラー、完結!
 楽屋裏タイムです。

【ついぐなが出来るまで】
 最初の案では信多郎が主人公でした。
 目を奪われた彼の一人称で進み、両手を奪われた佐強(この時は19歳設定)、両足を奪われたすずめと共に探索し、怪異に立ち向かって体を取り戻すお話。
 この時から三つの神具も設定にあり、かなりゲーム的なイメージをしていました。
 しかし「長編で視覚情報ゼロはきつすぎる」という問題から難航。
 佐強くんには家出少年の設定があったので、「パパが三人!」というアイデアがひらめいたことで、みるみる現在の形へとなっていったのです。

【キャラクター】
 本作に限った話ではないのですが、ある程度作者の手を離れた部分を取り入れたいので、ネーミングや家族構成にはランダムチャートや自動生成ツールなどを使っています。

●小田島佐強(おだじま・さきょう)
 本作の主人公、17歳。カクヨムコンに出すんだから、若者の方が良いよね~と初期案から年齢を下げました。でももう1、2歳低くしても良かったかもしれない。
 主人公やっていたのが序盤とボーナストラックだけで、後はパパたちに守られるヒロインポジションと化してしまったのですが、このへんは私の構成力の限界を感じます。でも複数パパと一人息子ネタはまたやりたいですね。
 鴉紋が出すもの以外のコーヒーに無頓着だったが、本編後は同じ味になかなか巡り会えず。コーヒーハラスメントを懐かしみながら、良い店を探しているもよう。
 師匠の所で働く以外にも、バイトを掛け持ちしています。
 親世代の業と報いを一身に受けた運命の子。それでも「父たち」は子供を守ろうと動き、すべては精算された。ここから先は、彼の物語。

●右京:うきょう
 猫です。よろしくお願いします。
 そのうち尻尾が二つに分かれたり、蛇になっちゃうかもしれません。

■佐強ファーザーズについて
 最初は韓国ノワール映画『ファイ 悪魔に育てられた少年』にならい、〝赤観音〟は犯罪強盗集団やマフィア的なイメージでいました。
 しかし、犯罪者が怪異によって全滅するホラーというのもあるのですが、それだと当初予定していた作品イメージと違う……と悩み、必殺仕事人路線へ変更。
 ので初期設定のパパたちはかなりヤバい人たちでした。作中では仲良しの父同士も、「何かあったらコイツを殺す」と腹の探り合いをしていたりする感じ。

●宇生方鴉紋:うぶかた・あもん
 私の作品を追っている方なら終わりかでしょうが、作者の一推しです。
 名前の由来は両親がハマっていたロックミュージックから。鴉紋、愛夢でどっちも悪魔由来である。正直、自分の名前は恥ずかしくて嫌。でも妹の名前は可愛い。
 ガキ大将や親分気質を持つので面倒見が良く、懐に入れた相手には愛着を持つ。警察官なので経済的信用度もピカイチ。
 美形の自覚もあり、自己肯定がカンストしている。とはいえ、愛した女を守れなかった後悔や、善を知りながら悪を選んだことに葛藤はあるのだが。
 ちなみに警察官は守秘義務上のリスク回避のため、基本SNSなどはやらない。ので鴉紋さんはインターネットに理解がなく、なんならSNS=LINEと思っている。
 初期設定はまさに暴力の化身。陶芸が趣味で山に小屋を持ち……は最初彼の設定だったが、「警察官やりながら窯で死体焼きつくすの無理じゃない?」と八津次に適用された。死体を消すのは大変ネー。

●世直郎:せい・ちょくろう
「ヨナオシ先生」のあだ名は皮肉もあったでの、すずめちゃんあたりに呼ばせたりしたかった。クリスチャンの小児科医で、穏やかな物腰の男性。
 でも殺人鬼。優しい、つまり「人が嫌がることを理解できる」という本人の性格と、医療知識の合わせ技から三人の中で最も拷問が上手い。
 現実なら決してお会いしたくない人物である。いくら穏やかそうに見えても、裏の顔とのギャップで余計に嫌だわ! しかし本作の根幹に関わるキーキャラクター。
 那智子との関係性は初期から決まっていました。
 というかその設定から先にできていて、さあどうしようとなった所に「信仰」を軸にしたことで、作品自体の方向性ごと決定づけられた存在。
 初期設定のころから一番変わっていないキャラクター。当時は無免許医だとか、柔術の達人なんで怒ると人の関節すべて外して説教魔と化すとかいう設定があった。

●松羅八津次:まつら・はつじ
 みんな大好き問題児。その突飛な行動は作者の私の予想すらも超え、ガンガン話を動かす存在になった。読者の声でも一番人気で、すべてが予想外の男。
 実家との関係は冷たいように思えるが、単に他人レベルで互いに関心がないというだけ。八津次も真面目に連絡を取っていない。亡くなった祖父には懐いていた。
 彼の陶芸工房と山はおじいちゃんが遺言状で遺してくれたもの。地下室はその後普工事して作った。業者的には部屋作っただけで、用途なんかは知らない。
 工房は現実世界でも焼け落ちており、地下室はなかったことになっている。
 実はコイツだけ、物語以前に何度か怪異に遭遇した経験があるが、「そんなこともあるんだ」で流していました。
 初期設定はアル中でヤク中で、人を斬り殺すのが大好きな人間のクズだった。どんなにラリっていても刃物を握ると正気に戻る殺人マシーンで、周囲からはクズ呼ばわりされる始末。そこから毒抜きして、超直感エキセントリックマンに。

●小田島那智子:おだじま・なちこ
 佐強の母。鴉紋、直郎、八津次と三股かけていたやべー女。
 ある惨劇によって心を病み、翠良尾瀬で亡くなった。しかし実の所、直郎との間に起きた一件は彼女にもたらした衝撃は、決して小さな物ではない。
 その時から、彼女の心は軋んでいたのだろう。

●裏巽信多郎:うらたつみ・しんたろう
 家出した佐強くんを、教育者の立場から放っておけない、とおうちに居候させてくれる優しい人。小学校教諭で神社の神主で、姪のすずめと二人暮らし。
 いいひとだよ。

●裏巽すずめ:うらたつみ・-
 信多郎の姪、八歳。笑顔輝く天真爛漫。
 彼女は何も悪いことをしていないし、誰にも悪いことをされていない。でもああなってしまった。受け止めるのは遺された側次第。

●裏巽和泉子:うらたつみ・いずみこ
 信多郎の姉、つまりすずめのママ。彼女からすると何も分からないまま事態が破局を迎えたので、かなり気の毒な方。しかし彼女のその後を語る場は、今はまだない。

●願施崎志馬:がぜざき・しま
 完全にとばっちりで家族を失った被害者。親戚の元では別に虐げられてはいないが、肩身が狭い程度には居心地が良くなかった。
 それはそうと「人魚」の存在は受け容れているあたりが翠良尾瀬出身者。

■龍神(みすらおがみの神)
 邪悪クソドラゴン。クリスチャンの直郎から見ると、まごうことなき悪魔。
 前作『ねぶらまの棺』に登場した神格「ねねさま」は人間のような情緒や人格を持ち合わせていないが、こちらは人の世界に近く、人間らしく振る舞う。
 この神の「性格」は自らの神性に合わせて定義した人格なのだが、それが余計にタチが悪い。「みんな」と仲良く「いっしょ」に暮らすのが大好き。

■舞台

●翠良尾瀬:みすらおぜ

 滋賀県某所の村(市町村合併で村としては消滅)をそのまんまモデルにした因習村。滋賀の地理に知識があって、作中の情報を統合していくと該当地域を当てられるかもしれません。地理もそのままなので、マップはなしで。
 オヤカタサマとかついぐなの儀とかは完全に創作で、現地とは一切関係ございません。地酒の名前とか、検索するとモロに地域がヒットするので変えた。
 CMなどで滋賀ローカルネタをこすったが、他にも「ピアノ売ってちょ~だい♪」とか、丁稚ようかんとか出したかったです。

■本編既読必須! ネタバレ後書き
https://fusetter.com/tw/oQOQo7bc#all

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