https://kakuyomu.jp/works/16817330650757697792 本作にはさまざまな祝詞や呪文が登場します。ざっと見て雰囲気を感じてもらえればいいな~というぐらいのものなのですが、現代語訳を載せておきます。
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■三話:ついぐなの儀の口上
「かけまくも畏き翠良龗神社の大前に裏巽信多郎恐み恐みも白さく、此の大宮を静宮の常宮と鎭まり坐す大神の高く尊き大御恵を仰奉りて、今日の生日の足日に一年一度の御祭仕奉るとは斎まはり清まはりて献奉る……」
>『心に思うのも恐れ多いみすらおがみ神社の神前に、宮司・裏巽信多郎、恐れ謹んで申し上げることは、このお宮をお鎮まりになる宮・永久の宮としてお鎮まりになる神さまの高く尊いみ恵みを仰ぎ慕いし、たくさんの日がある中で、今日の生き生きとした日の満ち足りた日に、一年に一度の御祭をお仕えしようと、潔斎も充分にお供えをする……』
「大神の御前に、人魚の果て実を返し入れ奉れ!」
>『大神のもとへ、人魚実を返しなさい』
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■十話:祠開帳の儀
「かけまくも畏き翠良龗神社の大前に裏巽信多郎恐み恐みも白さく、大神の見霽かし坐す咎人に、翠良尾瀬村饗庭の裏巽信多郎・裏巽すずめ両名、八王子市楢葉町の宇生方鴉紋を始めとする四人はしも、罪咎の贖ひに、今度入紐の同じ心に思ひ定めて、大神の高き尊き神徳を戴き奉り給ひ、祓い給ひ清め給へ、乞い祈み奉らくを、御心も穏ひに聞こし食せと恐み恐みも白さく」
>『心に思うのも恐れ多いみすらおがみ神社の神前に、宮司・裏巽信多郎、恐れ謹んで申し上げることは、大神がご覧になる罪人、翠良尾瀬村饗庭の裏巽信多郎・裏巽すずめ両名、八王子市楢葉町の宇生方鴉紋を始めとする四人は、罪咎のあがないに、このたび心を合わせて大神の高く尊きご神徳を敬い頂戴して、祓いなさり清めなさりませと、平安にお聞き届けになり、御心も穏やかにお聞き届けなされと恐れ謹んで申し上げます』
※八王子の「楢葉町」は架空の地名です。
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■がんかじについて
「衆生無辺誓願度、一切衆生悉有仏性、草木国土悉皆成仏、故にがんかじ勤行す。苦不異楽、楽不異苦、苦即是楽、楽即是苦。満願成就聞き届けたり」
>『たくさんの人が幸せになれるよう精進します、すべて生あるものは仏となりうる、ゆえに私はがんかじ行を務めます。満願成就をお聞き届けください』
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■三十九話:みすらに満願成就を訴える信多郎
「掛けまくも畏きみすらおがみの大神の大前に裏巽信多郎、恐み恐みも白さく。大神の広く厚き神徳を辱み礼び奉り、高き尊き神教のまにまに、大神の見霽かし坐す御氏子より、礼代の幣帛及御饌に垂田穂のすくへみ、生口のこどばえ、棗ヶ岡のぞるつげ、梲鳩のごうやふとり、齢のさかたまけやう、願施崎のがんかじ、来足ののとさま、もって七柱の人魚實、もって三十三名献奉りて!」
>『心に思うのも恐れ多いみすらおがみの神の神前に、恐れ謹んで申し上げますことは、大神の広く厚いご神徳を蒙(こうむ)ろうと、恐縮・感謝申し、高く尊いみ教えに従い、大神がご覧になる御氏子から感謝の幣帛また御饌・(略)七柱の人魚實と三十三名をお供えし』
「事の由告げ奉り拝み奉らくを、平らけく安らけく聞こし食し給ひ。言久は悲しき裏巽すずめ童女命の御前に、裏巽信多郎慎み敬ひて白さく。姫命や二〇一八年二月四日、今年八歳を一世の限りと身罷りましぬ。惜しくとも惜しく、哀しとも哀しき事の極みにぞ有りける。斯く幽りませる御上を嘆き悲しみ惜しむも、対面もありがたければ、慕ふ事も限りなければ。天翔りましし霊魂の再び帰り来まさむ事を祈奉り、言は巻くも由々しき裏巽すずめ姫命に逢わさしめ給ひと恐み恐みも白す!」
>『次第をご報告し拝礼する様子を平安にお聞き届けになりませ。口に出して言うのも悲しいことですが、(略)の御前で裏巽信多郎が慎み敬って申し上げます。あなたは二〇一八年二月四日、今年八歳を人生の仕切りとしてお亡くなりになりました。惜しくも惜しく、悲しくも悲しみの極みであります。今はこのようにお亡くなりになられたことを嘆き悲しみ、会って話すのもむずかしいので、恋しく思うことも限り有りません。天空を飛んでおいでになった霊魂が、再び戻られるであろうことを祈念して、どうか彼女に会わせてくださるよう、恐れ謹んで申し上げます』