北野かほり

それは真夏の夜のこと。ママンのクローゼットの奥から引っ張りだされて、窓から放り捨てられたあたしは、おかしな男に拾われた。 若いピアノ弾きのアマデウスはあたしを連れて、フランス中を…

揺籃司祭、卒去。 大聖堂より弔鐘が響いたのは、揺籃司祭の双子の弟であるエディアールと、彼の花嫁シュエラの結婚式の、まさにさなかのことだった。花婿は動揺し、花嫁は涙し、誰も彼もが年…

君は、神を信じるだろうか 奇跡を、信じるだろうか 夢を叶えるのは善だろうか 欲望を満たすのは悪だろうか 人間に心はあるだろうか 道具に心はあるだろうか 未だに奇跡が根付く、…

おばあちゃんになることの幸せ。

　自主企画、同題異話「薔薇香る憂鬱」のために書いた作品です。他の自主企画に書いた作品「私の好きなモノ」を別の角度から掘りさげてみました。

咲かないさくらの子どもを身籠もった少女と、彼女に恋をし続けた樹木の、およそ十五年に渡ってはなひらく、架空現代の異類婚姻譚。 ‪前日譚にあたる、「小指をからめて息をする」 （ht…

スポーツに縁のない街で生まれ育った「私」が引っ越してきたのは、スポーツが盛んな広島市。話題についていけない私のために、クラスメートが連れ出してくれたのは、真っ赤な球場だった。

汚い水たまりは踏みたくないけれどロマンチックです。

港町二丁目にある喫茶店の店主洋は、閉店間際にやって来た客にピアノを教えてほしいと頼まれる。 できないと断りをいれた洋に向かって、彼女が口にしたのは、ずっと昔、洋が幼かった頃に前店…

不慮の事故によって地上に落下した神の眷属マリーメイアは魔術師の男ディアルタに救われた。無事に神の御許に戻ったのち、死したディアルタと再会する。 ――君にまた会えて、本当に、うれ…