作者さまの作品、いつもうっとりと拝見させて頂いています。今回あらためて読み返したくなり、こちらのお話を開きました。 文章そのものは抑制された落ち着きとしずけさ、そして花びらのようなたおやかさに満ちているのに、その裏にひそむ恋は苛烈。淡いヴェールの陰からちらりとほの見えるこのあざやかさに、ぐっと心惹かれます。 「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」。個人的に、この歌がぴったりだなあ、と感じられる、たいへんうるわしいお話でした。
とても美しい情景描写です。さくらの子を身篭った少女の内面が静かに綴られていて、切なく感じる中に彼女の意志の強さを感じました。とても切なく、儚い。心の奥に、ジン……と来ます。
とうめいな言葉で綴られる物語。恋、というものの。あるいは、そういった言葉で呼ばれる気持ちの、なにかの。 うつくしい、という言葉では届かないほどの。激しい雨が降った次の日の朝の、しんと静まり返った空気の、濾されきった言葉で紡がれていく物語。 息を止めるような、それでいて、息を吸うような。 とてもとても、好きなお話です。