三条天皇は、『光る君へ』では、道長になかなか激しく対抗心を燃やしているように描かれていますね。25年間も皇太子でようやく天皇となったのだから、そうなるよね、と視聴者にも思われそうですが、本当はどうだったのでしょう?
『大鏡』に書かれた三条天皇は「お気だてがたいへん親しみぶかく、おっとりしていらっしゃって、世の人たちが非常にお慕い申し上げているふうでした」(『大鏡』全現代語訳 保坂浩司)とだいぶ印象が違っています。
藤原実資は『小右記』で、三条天皇への同情ともとれる思い、ひいては道長への批判を記しています。
私はドラマを見ながら、御簾の中で微動だにしない皇后娍子と三条天皇の失望する姿が、皇后定子と一条天皇の姿に重なりました。
心にも あらでうき世にながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
五年間の在位だったので深くは知り得ない三条天皇の輪郭は、やはりこの歌が一番もの語っているように思えます。