• エッセイ・ノンフィクション
  • 歴史・時代・伝奇

『光る君へ』で近況ノート(11)「君を置きて」より

 一条天皇の辞世、気になりませんか?微かな息の下から聞こえる声…「りに…君を置きて 塵をいでぬること…」
どう詠んだのか、さっぱりわかりませんでした。字幕すら出ず。
歴史に遺っているのは二通りあります。

『御堂関白記』 露の身の草の宿りに君をおきて 塵をいでぬることをこそ思へ
『権記』    露の身の風の宿りに君を置きて 塵を出でぬることぞ悲しき

 どちらとも取れるよう、違う部分を見事に避けてあったわけですね~。
病床にて口頭で詠まれ道長に傍に居てほしいと一条天皇は頼んだというので『御堂関白記』の方が正しいのだとすると、こんな風に解釈できないでしょうか。
「草の露となってあなたが宿るところに、俗世を捨てた私は参ろうと思います」

そうすると定子の辞世
        煙とも雲ともならぬ身なりとも 青葉の露をそれと眺めよ
に呼応し、行成が、これは定子を思って詠んだ歌だとする推測を『権記』に書いた通りです。
でもそうだと彰子が可哀そうなのですが、道長は鈍くて彰子への歌だと信じ込んでいたのでしょう。一条天皇は彰子への愛情もあったし表されていたでしょうから。

『千年草子』で定子の辞世三首のこの歌だけを入れず、この解釈も入れなかったのは私が同じ女性として彰子を一人ぽっちにしたくなかったからでした。

一条天皇は、彰子のことは後の心配が必要ないので安心していたと思います。
ですが、亡くなった定子には敦康親王を東宮にできず申し訳ないという愛惜の念が募ったことでしょう。

次回、道長の「土葬にするようにという遺言を忘れてて火葬にして、一条天皇ごめんねー」という場面があるでしょうか。無いでしょうね~。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する