わたくしの手番が月終わりなのであれですが、明けましておめでとうございます! 今年も端っこのほうでがんばっていきますので、何卒よろしくお願いいたしまーすー!
 さて、年明けのご挨拶が元気に終わりましたということで。夜にアニメを見ながらお酒を飲むため昼間は働く。わたくし典型的なおたくのおじさんなわけですが……なんでしょうね、歳を取れば歳相応になっていくものだと思い込んでいたのに、実際歳を取ってみると老けていくのは体だけ。心は小僧のままなのですよねぇ。15歳くらいの頃と言ってることがまるで変わってません。ちなみに今期アニメは14本視聴(前期比3本↓)、声優さんの声の聞き分けも完璧です。
 と。おじさんの赤裸々な話は遠くのほうへ放り出しまして、今月は新作のご紹介です。4本すべてに「この作品でなければ!」がぎゅっと詰まっていて、私も読ませていただきながら大盛り上がりでしたよー! このときめきをあなたにも感じていただきたい! さあさあ、どうぞご一読をばー。

ピックアップ

かくて少女は“なぎなた”と出会った。

  • ★★★ Excellent!!!

 部活動が義務な中学校への進学を控えた藤野祐希(ふじのゆうき)。ぽやっとしていて運動にも自信がない彼女だったが、幼なじみの勧誘をきっかけになぎなた競技を試してみることに。必要に迫られただけの選択だった、そのはずが……彼女は薙刀道へ強く惹かれ、選手となることを決める。

 見どころはなんといっても祐希さん。そう、主人公なのですよ。

 まず、この作品は九州弁使いのおっとりボクっ娘たる彼女の一人称で進みます。初めてなぎなた競技を目にしたときめき、防具をつけての練習で味わった痛み、うまくできなかったもやもや感、その瞬間でなければ感じられない心情が、彼女の人柄を映したやわらかくて素直な言葉で綴られていく様も味わい深い、のですが!

 これまで知らなかった競技と自分の熱い気持ちを知って、強くなりたいと踏み出す祐希さん――おっとりから凜然へと進化するその様、本当に瑞々しくてかっこいいのです。

 なぎなた競技の魅力も満載な少女成長劇、本当におもしろいですよ!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)

今夜もおいしくお酒を飲むために――!

  • ★★★ Excellent!!!

 31歳になった頼子は実家から会社へ通っている独身女性。ちゃんと動いてはいるものの男性とのご縁はなかなか結べず、結局は仲の良い友人と過ごすことになってしまっていて。でも、そんな彼女が飲む酒はいつだって最高においしく楽しいものなのだ。

 主人公の頼子さんは愛酒家ですが、仕事でイラッとしたり、他人発の難題に巻き込まれたりと、しがらみから逃げられないストレスフルな日々を送っています。このあたり、実にリアルで身につまされますねぇ。それこそお酒で発散したい夜もありますよ。

 でも、彼女はそれだけで終わらせないんです。人生の酸いも甘いも肴に変えて、おいしい1杯で心身を満たす。この姿勢、恰好いいですよね。

 それだけではありません。こうした物語はなにを飲食するか、どうおいしいかで止まってしまうことが多いのですが、この作品は飲食へ至るまでの物語がしっかりとおもしろくて、だからこそお酒というカタルシスが一層際立つのです。

 キャラよし、ストーリーよし、お酒よし。三方よしの赤裸々独女物語です。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)

伯爵家令嬢と侯爵家令息、その波瀾万丈な恋物語は酷い誤解から始まった

  • ★★★ Excellent!!!

 まったく面識のないルヴェシウス侯爵家令息フェヴァンから突然婚約解消を迫られ、なぜなら同性愛者だからと告げられてしまったカンブリーヴ伯爵令嬢アドリーヌ。すぐに諸々が誤解であったことを報される彼女だったが。人々は彼女を男に負けた伯爵令嬢と噂し、しかも元凶であるフェヴァンが今度は彼女へプロポーズをしにきて……

 冒頭からもうこのインパクト! 酷い勘違いで暴走した令息に人生を壊されたアドリーヌさん、彼女はけろりとしていますが、ご家族はもう大変ですよねぇ。

 でも、家と結婚する貴族社会においては絶対にありえない最悪の出逢いから始まるからこそ、フェヴァンさんのさらなるやらかしが予想外な展開への道標となって、こちらも普通のご令嬢ではありえないアドリーヌさんもいろいろやってしまうからこそ関係性は転じていって――ちょっとおかしな感じで始まったはずの物語が、まっすぐで甘やかな恋愛譚の本性を顕すことになるのですよ。ひと言で感想を述べるなら「すごい」。

 女性だけでなく、恋愛物好きな男性にも激・おすすめします!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)

消しゴムに刻まれた恋のおまじない、僕がかならずかなえてみせる!

  • ★★★ Excellent!!!

 中学2年生の男子、阿笠紫(あがさ むらさき)は、昼休みの教室で消しゴムを拾う。それも彼の名前が刻まれた――恋を成就させるおまじないを施された代物をだ。果たして彼は決意した。おまじないは誰かにバレた瞬間効力を失う。速やかに持ち主を特定し、彼女が紛失に気づかない内にこっそりこれを返すのだ!

 なにを見ていただきたいかって、それはもう紫くんが発揮する妄想力込みの推理力ですよ。鋭いというか恐い! でも、「彼女ができるかもしれない!」を鼻先にぶらさげられた思春期男子はすごい力を発揮しますからね。ディフォルメされているはずなのにこの生々しさ、キャラクターとしての完成度の高さが本当に半端ありません。

 そうして彼は目星をつけた“容疑者”へ当たっていくわけですが、「ときどき天才になる」と友人間で評判な紫くんのロジック、その冴えは推理物の醍醐味そのものと言えましょう。たとえ原動力が女子に告白されたい欲だとしても!

 あなたもぜひ紫くんといっしょに推理してみてくださいねー!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋剛)