最近、就活生にアドバイスする機会があり、スーツについて解説しました。例えばボタンダウンのYシャツは、発祥が競技のポロで、スポーツウェア由来であるから営業ならともかく内勤には向かないだとか、紳士服はシンプルなものほどフォーマルなので柄物や装飾があるものは金融機関や保険会社など信用商売な職場の面接には着ていかないように等、スーツの常識や着こなしについて助言しました。電車内で見慣れたサラリーマンのスーツ姿も、細部を見てみると身なりの良し悪しや職種の傾向がハッキリと見て取れるものです。そういう小さな要素から評価するのが面接官や、私のようなスコッパーの腕の見せどころ。大量生産のリクルートスーツでも身体にフィットしていれば精悍に見えますし、王道テーマでもキャラや背景がしっかり描けていれば読み応えがあります。自分が無頓着でいるものにこそ、他人は注目しているかもしれない。他人の評価が欲しい人は、ちょっと視点を変えてみてはいかがでしょうか。

ピックアップ

中世のイタリア貴族に転生した少年がアメリカ大陸目指します

  • ★★★ Excellent!!!

 現代から中世の北イタリアのトリノ辺境伯の四男ジャン=ステラに転生した主人公が、美味しいピザを食べるために新大陸を目指す歴史改変ストーリーです。

 生まれた日に星が輝き、神の言葉を代弁する預言者の誕生として聖職者たちを騒がせたジャン=ステラですが、中身は普通の現代人。

 まだ発見されていないアメリカ大陸を目指す理由が、トマトやトウモロコシ、ジャガイモが食べたいからという食い意地のはった理由なのが可笑しいです。

 大型帆船を建造する資金を得るため、現代知識を活かして金儲けのアイデアを捻り出す息子に父のオッドーネと、母のアデライデは戸惑いつつも、トリノ辺境伯家の発展のために彼の知識に頼るようになり……。図らずも歴史の針を早回しするジャン=ステラの行動は思わぬところに波紋を広げていきます。

 言語や宗教、民族、文化、そして国際情勢、当時の時代観が描かれていて、歴史の解説本を読んでいるかのようです。

 幼くして即位したハインリッヒ4世によって揺れる神聖ローマ帝国の中でジャン=ステラが如何に立ち回るのか、今後の躍進に期待です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

やっぱり俺らはゲームが好き 落ちこぼれたちの熱血eスポーツ奮闘記

  • ★★★ Excellent!!!

 過去にヴィクターという名前でeスポーツの大会で好成績を残しながらも引退し、平凡なサラリーマン生活のかたわらストレス解消にゲーム配信者をしていた主人公が、かつての自分を知る少年と出会い、再びプロゲーマーを目指し始める人生再建物語です。

 一度は挫折して表舞台から姿を消しながらも、ゲームを通じて出会った仲間たちの信頼と友情に応えるため、ヴィクターとして再びeスポーツの大会に出る決意をする。

 他のチームメンバーもヴィクターと同様に何かしらで挫折した引きこもりたちで、イジメから不登校になった高校生タイガ、砲丸投げの選手だったが故障で引退した大学生テツ、将棋の奨励会に入りながらプロ試験に落ちた青年ニシ。それぞれの人物背景にある苦い人生経験がキャラに深みを与えます。

 テクニックだけでなく奇抜な作戦で意表を突く戦略性あるゲーム展開と、アマチュアチームが強豪プロチームひしめく大会を勝ち抜いていく様が痛快です。

 誰しも子供の頃はゲームに熱中するもの。しかし成長していくにつれて現実を知ってゲームから去っていく、それでもゲームを愛して現実の壁を打ち破れる者だけがプロに到れる。

 ゲームに全身全霊をかける落ちこぼれたちの本気の勇姿、是非ご覧あれ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

愛情は最高のスパイス まかない飯が結ぶ恋人たちのひととき

  • ★★★ Excellent!!!

 とあるホテルで宴会スタッフとしてアルバイトをしている眞島怜は、20歳になったばかりの女子大生。ひとつ年上の彼氏の小森裕司は社員食堂で働く調理師見習い。今日も今日とて、美味しいまかない飯を通じた二人の時間が始まります。

 明るく元気で食べることが大好きな怜は裕司の作るまかない飯にハートと胃袋を掴まれていて、裕司もいつも料理を美味しく食べる怜の笑顔にベタ惚れ。お互いにゾッコンで周囲が呆れるほどの惚気けっぷりが微笑ましいです。

 調理師の専門学校に通う裕司の腕前は、元名店の厨房にいた料理長・山越源二が太鼓判を押すほど。和食に洋食、中華、スイーツまで、登場する絶品料理の数々が食欲をかき立てます。

 お互いの家で寝泊まりする仲だけれど、キス以上の関係はまだまだ。二人とも食事の時間を大切にしていて、夏にはプールサイドのフードコートで飲み食いしたり、秋には栗拾い体験に出掛けたり、デートでも色気よりも食い気な二人のマイペースな交際がのんびりと癒やされます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)

これが私と愛馬の生きる道 引退競走馬の幸せな一生とは?

  • ★★★ Excellent!!!

 引退競走馬を引き取って世話する女性が綴るエッセイです。

 若い頃から馬に憧れ、乗馬に馴れ親しんできたわたなべさん。しかし乗馬クラブの空気や競馬界の常識に馴染めず、劣等感を抱えながらも引退競走馬が幸せに生きる道を模索し続けています。

 乗馬を虐待と批判されないためにどうするか、産業として持続していくためにどうするか、馬にストレスとなる調教もときには必要になる。インストラクターも、ライダーも、オーナーも、馬に関わる人々はそれぞれ一家言を持っている。自分とは相容れない主義主張ではあっても、立場や環境によっては正しくなることを「魂の色が違う」と表現しているのが印象的です。

 「乗馬が苦手だった」と昔を振り返る彼女も、いまでは魂の波長が合う運命の馬と出会い幸せな日々を送っている。

 馬にも個性があり、人との相性もある。引退馬を支援する人々がもっと増えれば、馬と魂の波長が合う人が見つかり、処分される馬も減るのだろうか。彼女の活動はYouTubeでも配信しているので興味のある方は検索してみてはいかでしょうか。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲 優詩)