新年度が始まりました。この時期、新入生や新入社員になった方も多いかと思います。新しい環境に期待していることもあれば、人間関係で不安なことも誰しもあると思います。大丈夫、そう思っているのは貴方だけではありません。貴方を迎える側の先輩も貴方と仲良くやれるかが不安で、だけれど貴方に期待もしています。そこで今回は新しい環境で挑戦する作品、社会を変えてゆく作品を選んでみました。貴方が社会と関わることで世の中が動く。貴方の意思で世界は変わる。世界が変われば貴方も変われる。貴方の夢はここから始まる。これから夢に挑む貴方にエールを贈ります。入学入社おめでとうございます!

ピックアップ

異世界で物流革命! すべては大好きなパパのため!

  • ★★★ Excellent!!!

 貿易会社の事務OLが異世界へ転生した。商人の娘アリアとして転生した彼女は、物流が未発達な世界で貿易路を開拓し、貿易契約という概念を持ち込み、物流革命を起こしていくのだった。

 社会の物流の仕組みがわかる作品です。

 馬を飼いならして乗り物としたり、一度にたくさん運べるように荷車を発明したり、同じ場所への配達は荷物をまとめたり、長距離の輸送は価格を上げたり、貿易には契約書を作ったりと、アリアの提案するアイデアは、現代に暮らしている私たちにとっては当たり前と思える輸送の仕組みですが、そうでなければどれだけ大変で、重大な問題を引き起こすのかという事例が描かれています。

 賢いようにみえるアリアですが、いつも忙しくしているパパが早く家に帰ってくるようにと手助けしたのに、もっと仕事が増えて逆に忙しくなってしまう失敗がかわいいところ。

 年頃の乙女に成長してからは貿易王の娘としてバリバリ働きつつ、イケメンたちと関係も発展して、仕事も恋も全力な女性像が素敵です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

ようこそドラゴン動物園へ! 今日から学ぶドラゴンの飼い方

  • ★★★ Excellent!!!

 安定した職を求めて地方の市役所の公務員になった青年・河合悠斗。しかし彼が配属されたのは、ドラゴンを飼育する動物園ドラゴンパークだった。知識ゼロからドラゴンの飼育員になってしまった主人公が、現代に生きるドラゴンの生態を学んでいく物語が好奇心をかきたてます。

 空を飛ぶワイバーン種、芋虫のようなワーム種、水辺を好むナッカー種、お宝収集癖のあるピスヘント種など、種類ごとに姿形や生態はさまざま。

 初日からウンコをぶつけられたり、乾草の山を運んで筋肉痛になったり、清掃作業でウンコまみれになったりと、生き物相手の仕事は苦労が多い。しかし世話を焼くほど愛着も湧いてくる。

 ドラゴンにも感情や性格がある。相手が誰であろうといい加減な気持ちで接していれば、それ相応の扱いを受けて当然だ。ドラゴンに教えられて自分の仕事に真剣に向き合って社会人として成長していく姿が微笑ましい。

 「なぜこんなことをしているのか」。この春、河合のような悩みを持つ新社会人も多かろう。しかし仕事のやり甲斐や働く意味は、他人から与えられるものではなく、自分で見つけるものだ。

 それにどんな職場でも、このドラゴンパークよりはマシだから……。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

異能VS才能! 異能者と一般人の格差社会をぶっとばせ!

  • ★★★ Excellent!!!

 異能を持つ人類が生まれはじめた社会。生まれつき特殊能力を持つ"ギフト"は優遇され、反対に能力を持たない一般人"アザー"は冷遇されていた。

 一般人の女子高生・深海頼は、一般人でも異能者に勝てることを証明するため、才能を持つ仲間を集めて、政府主催のイベント『城取ゲーム』で異能者に挑む!

 『城取ゲーム』は廃校を舞台に一般人チームと異能者チームに分かれ、異能者は能力を駆使してゴールを目指し、一般人は知識や技術を用いてそれを阻止する、いわば異能者と一般人の高校生の知恵比べだ。

 本来なら異能者が勝って当然の出来レースだが、深海は仲間たちと策を練り、油断していた異能者は仕掛けた罠に次々とハマっていく。異能者チームの高校生たちも慢心を捨てて次第にヒートアップしていく真剣勝負が面白い!

 ネット中継されている配信サイトでは、予想外の展開に観客は大盛り上がり! しかし突然のトラブルで、ゲームは思わぬ方向へと転がっていく……。

 一般人と異能者が共存する社会とはなんなのか。高校生たちが社会に問いかける異能バトルものです。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)

空想科学が現実に! SFの世界はひとりの少年から始まった!

  • ★★★ Excellent!!!

 江南大学物理学科の若き准教授・牧村正樹に届いた一通のメール。それは水素の核融合に関する画期的な論文であり、それを独学で書き上げた吉川順平は、10歳の男子小学生だった! ひとりの天才少年の登場で急速に発展していく日本の光景にSFロマンを感じます。

 順平君が打ち立てた理論によって、無限のエネルギーを生み出す核融合発電が可能に! 夢のクリーンエネルギーを実現させるため、彼を見出した牧村や学部長の大戸教授、さらには政府関係者、重工業メーカー、産官学を巻き込んだビックプロジェクトに挑む大人たちの群像劇がわくわくさせます。

 大学に順平君を迎えたことで、ほかの研究者の刺激になり、異なる分野でも新技術や発明が生まれる。それらを用いたシステムや製品の大量生産で経済も一気に上向き、日本を悩ます災害や国際問題も解決して、ついには新型の重力エンジンを用いた宇宙戦艦で宇宙へ!と、世の中が激変していく疾走感がたまりません。

 科学の進歩が人類の未来を切り開く、SF小説の入門書としておすすめしたい作品です。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)