つい先日始まった『「金のたまご」を探せ!「カクヨムロイヤルティプログラム」でリワード獲得キャンペーン!』。埋もれていた「金のたまご」を探し、より多くの投稿作品をユーザーの皆さんに読んでもらおうという企画です。この企画に対して「そんな面白い作品が簡単に見つかるのか」などと思われるかもしれませんが、この『カクヨム 金のたまご』で新作を3年ぐらい紹介している僕に言わせてもらうと面白い作品は……次々見つかります! 紹介数が限られているのでどの作品を優先するかで悩むことはあれど、紹介したい作品がないという形で悩んだことは一度もありません! というわけで明日からの連休では、この企画はもとより、自分の好きなジャンルや趣味のワードで検索してオススメの作品を探してみるというのもいかがでしょうか。人気作品をブレイクする前から読んでいたってのは自慢できますしね。あっ、それと今回自分が紹介した作品も是非読んでくださいね!

ピックアップ

百合、すなわち巨大な感情の衝突(物理)

  • ★★★ Excellent!!!

「そもさん!」「せっぱ!」「百合とは何か?」「巨大な感情のぶつかり合いである」「巨大な感情とは何か?」「それは言葉では表せないものである」

こんな問答が実際にあったかどうかは知りませんが(多分ない)、百合という概念は言葉で表すのはなかなか難しかったりします。そういう意味では本作は百合というジャンルにもっともふさわしい内容と言えるでしょう。なぜならこの作品の登場人物二人は互いの言葉が通じないのだから……。

物語となるのは文明が滅んだ未来。獣人の少女シーシェは成人の儀式を迎え、かつて『ヒト』が遺した『遺物』が多く眠る灰の森を訪れます。しかし、そこで彼女が見つけたのは遺物ではなく大昔に滅んだはずの『ヒト』でした。なぜヒトがここにいるのか、ヒトは何を目的に行動しているのか、言葉の通じぬシーシェにはそれがわからないわけですが、とっても暴力的なファーストコンタクトを経て、二人の異文化交流が始まります。

ポストアポカリプス世界で描かれるガール・ミーツ・ウーマン。最初は互いを警戒していた二人が徐々に互いを理解していき、最終的に待ち受けるのは巨大な感情の衝突(物理)!

わずか7話で互いの感情の高まっていく過程を丁寧に描写し、獣人であるシーシャの視点から見慣れぬものとして「ヒト」を描写する手つきも巧みで、百合好きもSF好きも読んで損はしない内容になっていますよ!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

3名の少女が織りなすSF×ラブコメ×ミステリー!

  • ★★★ Excellent!!!

高校二年生に進学した白杉巴は新しい教室に入った直後に、クラスメイトの笹篠明華に付き合ってほしいと告白される。笹篠曰く、二人は近い未来に恋人関係になるのだが、巴は付き合って間もなくトラックに轢かれて死ぬというのだ。それだけならまだいいのだが、さらにバイト先の喫茶店で新しくバイトに入った迅堂春からも、私と先輩は未来で恋人関係になるのだが、巴はすぐに死んでしまうと予言されてしまう。その上、親戚である松瀬海空まで自分が未来からやってきたと言い出して……。

かくして三人の未来人に振り回されるラブコメが開幕するのだが、本作で面白いのは未来人たちは互いが未来人だと知ってしまうと、記憶や人格が吹き飛んでしまうというところ。おかげで三人をうかつに近づけるわけにはいかないのだが、巴の命を心配する三人は自然と巴の周辺にやってくるわけで、巴は彼女たちを正体が互いにばれないように四苦八苦することに。

さらに彼女たちが語る未来は微妙に食い違っていることや、巴に訪れる死の運命の秘密など、作品全体に多くの謎を散りばめられてミステリー要素が強い作品なのだが、その一方で、喫茶店で誰が一番上手くラテアートを作れるかを競ったり、球技大会にテニスのペアで出場したりとラブコメ要素もしっかり押さえており、全方面に隙のない作品になっている。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

最強×最強な夫婦生活、ここに始まり!

  • ★★★ Excellent!!!

魔道士を志すも魔法学校を卒業する段階になっても魔法を一つも使うことができず、周囲から見下されてきたリリナ・ローズリット。そうして失意の中で迎えた卒業式、リリナの前に現れたのは、若きイケメンの国家級魔道士ヴィル・グリフォールだった。かつて彼女に命を助けられたというヴィルは突然彼女に結婚を申し込んできたのだった……!

落ちこぼれ少女が最強魔道士に嫁ぎ、夫の威を借りたセレブ生活で一気に人生大逆転……かと思いきや、そう話は転ばない。リリナは自分が魔道士になることが何より大事で結婚に興味はないし、そして夫の威を借りる必要とかはなく彼女はメチャクチャ強いのである! 魔法が使えないだけで単純な暴力という点では並の魔法を簡単に蹴散らしてしまうのだ。

そんな最強物理少女リリナと最強魔法使いヴィルという変わり者の二人が始める奇妙な結婚生活。地位とか名誉とかを一切気にせず自分の目標のために真っ直ぐ進むリリナとそんな彼女にベタ惚れしてあらゆる手段で彼女を振り向かせようとするヴィルの関係が非常に楽しくて、ファンタジー要素や恋愛要素、主人公最強要素などが絶妙なバランスで混ざり合ったこれから先が楽しみな一作だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

ウザくて粗暴で面倒見の良い優しいおっさんの話

  • ★★★ Excellent!!!

異世界転生ものでは決して欠かせない登場人物、それは主人公たちが初めてギルドを訪れた時に絡んでくるおっさん……!

牛丼でたとえると肉でも米でもなく紅ショウガのような存在だが、物語を彩るという意味では欠かせない存在だ(※好みには個人差があります)。本作はそうやって若き冒険者たちに絡んでくるおっさん、【ウザ絡みのルイード】が主人公。

さっそく冒頭から若き【稀人】の冒険者にウザったく絡んではあっさり撃退されるのだが、実はこのおっさん、かつて魔王を討伐したものすごい冒険者。魔王討伐後、出世や栄達を望まず、さりとて隠居もしたくないので、暇を持て余して新人の育成や実力調査という名目で日夜若者に絡んでいるのだ! いろんな意味でめんどくせえおっさんだな!

しかも根が良い奴だし演技が下手なので、ところどころで棒読みになったり色々不自然になるわけだが、そういう不器用なところが逆に良い味を出しているのだ。

おかげで邪険に扱っているようでもルイードの下には自然と人が集まるのだが、天然でルイード以上にウザい絡み方をするノームの少女とか元アイドル冒険者とかいずれもくせのある者ばかり。そんな変わった若者に慕われ振り回されながらもギルドで起きる色んなトラブルを解決するおっさんの日常が楽しい一作だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)