新っ! 作っ! 紹っ! 介ーっ! ……勢いつけてかないと乗り切れないくらい、わたくし夏が苦手です。理由はもちろん暑いから。ちなみに冬は寒いから嫌いです。
というのはさておきまして。今月も選ばせていただきましたよ! みなさまがご投稿くださいましたきら星のごとき新作より、悩み悩んで4編を! そして例のごとくに意識していたわけではないのですが、今回はざっくり「着目」が光る作品がそろった感はありますねぇ。無意識の私、意外に考えながら仕事をしているようです。
そんなわけでして、みなさまにぜひ出逢っていただきたい着目のしかたがすごい4作、行ってみましょうー!

ピックアップ

人間椅子――これこそが唯一無二の正解

  • ★★★ Excellent!!!

いわゆる醜男の佐藤。彼は同じ大学に通う醜男の友人――齋藤と鈴木と3人で、どうすれば女性と知り合い、触れ合えるかと話し合う。当然のごとく「不可能」で終わりかけた話だったが――ふと鈴木が切り出したのだ。江戸川乱歩の作、『人間椅子』の主人公の話を。

つまり、女性と交流したい醜男が捻り出した奇策が、椅子の中に収まって「女性に座ってもらう」ことなわけですけど、これが実にすごいんですよ!

ストーリーラインにねっとり絡みつく醜男3人の感情と感傷と感慨の重さ、それを噴くのではなく垂れ流すことで演出された切迫感が、読者の背筋をぞくぞく震わせるのです。このキャラの完成度、すごいです。

キャラだけでも一読の価値アリアリなのに、オチがまた絶妙ですごい! それまで繋いできた展開を覆す――と見せて本当のところは? と最後まで「におわせる」感じ、悔しいですけどやられました。

読めばかならずゾクリとできる現代版怪奇小説、ずいっと推させていただきます。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

あの子がいつもちがう車両に乗る理由は――

  • ★★★ Excellent!!!

つまらない毎日をそれなりに生きている高校生・杉内竜馬。そんな彼の楽しみのひとつは、同じ通学電車で転校生の神崎渚を見ることだった。なぜか毎日、ちがう車両に乗り込む彼女の姿を。

気になる女子だからこそ引っかかってしまうささいな違和感。実に青春ものの主人公らしい心情ですし、なんでもない日常の謎の開幕にふさわしいきっかけですよね。

そう、この物語は高校生男子のなんでもない王道の青春ものなんですよ。一枚だけふせられたカードがあって、それが渚さんの“理由”の真実を露わにし、一気に物語の形を変えてさえしまわなければ。

どんでんを返すという手法は小説において不変の切り札ですが、それをここまで綺麗に切れている作品はなかなかないものです。たった数百文字で、同じものなはずの毎日が希望から絶望へ塗り替えられてしまう様、なんとも言えない怖さがありますねぇ。

このすさまじいとしか言い様のないどんでん返し、ぜひみなさまにも味わっていただきたく思います!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

内容はすべて嘘! エッセイの皮を被った大喜利小説ロマン!

  • ★★★ Excellent!!!

著者さんがほかの人からお題をもらい、それを用いた嘘エッセイを書く!

というわけでこちら、言ってみればエッセイ風大喜利小説となりましょうか。お題がばらばらというか基本的に無茶振りなので、内容も実にバラエティなのですが……それがまた、いい感じに苦し紛れなんですよね。

人間、追い詰められたときにひねり出したものがやけにおもしろかったりするじゃないですか。本作に収録された各話すべてがそれなんですよ? かといってただのトンデモじゃなく、著者さんのノリよき文章運びと感性、その端っこどころかど真ん中に見える「いただいた無茶振りをどんなふうにおかしくでっちあげてやろうか!?」という意気と威勢、実に気持ちいいのです。

丁々発止などという言葉がありますが、これはまさに発案者さんと著者さんの真剣勝負! いや、実際あのお題をこうねじ曲げて返しちゃうのかと、感心するよりありません。

心地よい緊張感に彩られた(ような気が多分する)虚構エッセイ、絶賛連載中です!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)

名作ミステリーを解き、説く!

  • ★★★ Excellent!!!

江戸川乱歩が編集した『世界推理短編傑作集(創元推理文庫)』全5巻を完読し、ミステリーについて再学習、その魅力についてを再確認していこうという著者さんの記録。

いちばん興味深く思ったのは、なんといっても著者さんが魅せる書き手としての着眼点ですね。作品の見どころやキャラクターの魅力、関係性などに焦点を当てるのが通常のレビューですが、こちらの場合、作品の構成や作者の思考、時代性や小説形式の推移まで織り込んで、作品の構造そのものを語っておられるのですよ!

それによって読者である私たちは、名作ミステリーに用いられた技術や工夫を知ることができるのです。結果的に、読み物としてだけじゃなく、入門書としても成立しているのはなんともおもしろいじゃありませんか。

書き手だからこその角度から切り込んで深掘りした、名作ミステリー考察記。ミステリー好きな方、そしてこちらのジャンルへ踏み込もうかとお悩み中の方、ぜひご一読くださいませ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)