気軽にお外に出られないこともあってほぼ毎日自宅に引き籠っているわけですが、前々から時間が出来たらやろうと思っていたことをろくにできておらず、暇があってもやらないんだから普段から「忙しい」を言い訳にしちゃいけないなと反省する今日この頃。皆さんはこんな大人になっちゃいけませんよ。
というわけで、皆新作を書いていて偉い! 新作紹介「金のたまご」のお時間です。軽く読める短中編から、完結しているSFミステリや触手が主人公なのに予想以上に重厚なファンタジーと長さもジャンルも様々な4作品をピックアップです!

ピックアップ

魔法を失ったとしても人生は続いていく。

  • ★★★ Excellent!!!

田舎を出て魔法学校に入学したもののその才能が芽吹くことはなく、結局実家に出戻りすることになった月見里ユリ。しかし帰りのバスの中で彼女はバスジャックに巻き込まれてしまう。しかもユリにはその犯人に見覚えがあって……。

魔法使いの地位向上を訴えるテロ組織や魔法犯罪捜査官など独特の設定を用いて、魔法少女という浮世離れした存在を上手く現実に落とし込んだのが本作の大きな特徴で、主人公であるユリも特別な人間というわけではなく、あくまで挫折した等身大の少女として描かれている。

そんな夢破れた少女と彼女とは別の理由で人生を投げ捨てたバスジャック犯との対話が本作のメイン。全く正反対の道を歩いてきたはずなのに、思わぬ形で交わってしまった二人の人生。この出会いは二人にどのような変化をもたらすのか。

魔法少女という特殊な題材ながらも、過去に何かを諦めたことのある人にはきっと共感できるはずだし、憂鬱な感じに始まりつつも読後感はすっきりとしている爽やかな内容に仕上がっている。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

ソロ冒険者とストーカー女騎士の愉快な冒険譚

  • ★★★ Excellent!!!

単騎で数々の逸話を残した伝説の冒険者ヴァンに憧れて、パーティーも組まずに常にソロで冒険するグレン。しかし、仲間のいない一人での冒険はあらゆる危険が自己責任。たびたび命を落としそうになるグレンだが、そのたびに助太刀してくれたりポーションを投げてくれたりと謎の女騎士が助けに来てくれる。これは大変ありがたい……はずなのだがどうも毎回タイミングが良すぎる。まるでこちらのことを監視してるかのように……。

そんなソロ冒険者と怪しいストーカー女騎士によるコメディ色強めな冒険譚。
一見、周りから浮いた行動を取っている登場人物たちだが彼らの行動原理がきちんと説明されており、キャラもしっかり立っていて非常に読みやすい。

ストーリーもギャグを交えて軽やかに進み、ストーキング疑惑の真相が判明したところでさらにひと波乱起こったりと物語に起伏をつけつつエピローグまで描ききっている。

ダンジョン探索を扱っていて、あまり長すぎない作品を読みたいというときにはピッタリな中編だ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

残酷な神が支配する世界で触手は少女と運命に挑む!

  • ★★★ Excellent!!!

人間ではなくモンスターが主人公になる作品は数多いが本作の主人公はその中でもかなり異例の触手!

村人のクリスはある日モンスター退治に駆り出され、哀れオークに殺されてしまう。これだけでも最悪なのにさらにオークの背中に生えている無数の触手の一本に転生してしまう。しかも一本一本の触手には意志があり、全員がクリス同様に元人間。
そんな触手仲間と触手ライフを送っていたクリスだが、ある日オークの身体から切り離され、そのままどんぶらこと川を流れて、行き着いた先は何やら訳ありなお嬢様を抱える貴族の家。かくしてお嬢様のペットとして彼の第二の触手生が始まる。

触手に転生するという設定はギャグっぽいし、本体から切り離されたクリスは自分一人ではろくに動けないナマコのような存在。こんなんで物語が成立するのかと思いきや、わりとシリアスな物語が展開されるから予想外に面白い。

人類に大きな災害をもたらす、まるで怪獣のような神が何柱も地上を跋扈していたり、何もできない軟弱な存在の主人公が思わぬ力を発揮したり、ヒロインのお嬢様を能力と存在を巡って複数の勢力の思惑が入り乱れたりと、タイトルからは想像できないぐらい重厚で非常に読み応えのある作品だ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

超能力者だらけの孤島でミステリーは成立するのか!?

  • ★★★ Excellent!!!

超能力を扱ったSFミステリーは数々あるが、本作はその中でもかなり異例な登場人物の大半が超能力者!

超能力研究家の実験に付き合うために、孤島に招待された超能力者たち。しかしその内の一人である主人公の佐藤来太郎は、超能力者のふりをしているただのペテン師。
他のメンバーの超能力も疑っていた彼だが、参加者の一人が島内で起きる殺人事件を予知してしまい、さらに招待されたメンバーの一人が彼の正体を知っていることもあって、超能力者たちが島で起こす騒動に巻き込まれてしまう。

島に集まった超能力者たちは、予知能力、サイコメトリー、透視能力、テレパシー、霊能力など皆それぞれ独自の能力を持っており、さらに性格も一筋縄ではいかない者ばかり。おかげでペテン師を自称する来太郎が、実は招待者の中で一番人がいいというおかしな事態に。

しかし、これだけの能力者が集まれば殺人事件など簡単に解決しそうなものだが、はたしてこの状況でミステリーは成立するのか? そこは作者の腕をご覧あれ。超能力者たちだらけの事件ならではのトリックを使った推理劇を見事に描ききっているぞ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)