SFはロマンに満ちあふれています。宇宙戦艦やロボット、メカメカしいガジェットの数々は読者の誰しもを童心に返らせて胸をワクワクさせてくれます。そうでなくとも宇宙は、まだまだ私たち人類にとって多くの未知に溢れたフロンティアです。宇宙人は実在するのか、ブラックホールの向こうには何があるのか、月や火星ってどんなところなのか。それを解明するために今も多くの研究者や技術者が夢を抱いて夜空の彼方を目指しています。今回はそんな宇宙や惑星を題材にした作品を選んでみました。未知は何より私たちの好奇心をかき立てます。みなさんも想像力のロケットに乗って宇宙の旅を楽しんでみてください。どの作品にも、きっと新しい発見や感動が待っていると思います。

ピックアップ

火星基地崩壊! 地下に閉じ込められた子供たちを救助せよ!

  • ★★★ Excellent!!!

 深刻化する地球温暖化と宇宙資源の獲得のため火星へと進出した未来。地球から火星へ物資を運ぶ惑星間輸送船〝昭和〟の謎の墜落と爆発により、アズプール基地は多数の死傷者と壊滅的な被害を受ける。未曾有の大惨事のなか、地下に閉じ込められた子供たちの決死の救出劇が始まる。

 宇宙空間でのアクシデントを描くコズミックサスペンスです。主人公の技官・辻本雅樹は、元来なまけ者でプレッシャーに弱い、ごく普通の青年です。一方、ヒロインで医師の李美香は真面目で責任感が強く、なによりも命を大切にする女性です。

 運良く生き残った二人だが、水も食料もなく、酸素も残り数時間しかない。さらに救助を求める子供たちがいる。雅樹は事態の重さから自力での解決を諦めてしまうが、美香はそんな弱気な彼の背中を押し、尻を叩き、怪我を手当し、救助のための行動とアイデアをひねり出させます。

 逆境のときにこそ人の真価が問われる。最初は雅樹の投げやりな態度にイライラするかもしれませんが、逆境が次第に彼を磨きます。物語が進むごとに彼を見る目が変わることでしょう。絶体絶命の窮地で可能性を見出す人々たちの成長に注目です。

(「未知の惑星へ」4選/文=愛咲優詩)

サラリーマン提督就任! 宇宙戦争に活かす現代ビジネス術

  • ★★★ Excellent!!!

 涼井晴康は、現代日本で商社に勤める35歳の営業課長。そんな彼が、目を覚ますと宇宙艦隊を率いる司令官スズハラ提督になっていた。突然、共和国と帝国の戦争に放り込まれた彼が、現代で培ったビジネススキルと営業テクニックで勝利を掴んでいく姿が面白く、社会人として学びを得られます。

 主人公のスズハラが属する共和国軍は、部下は職務に忠実だが自分の判断で動けない指示待ち人間だらけだったり、上層部はやる気と根性だけで実現性の低い作戦を決定してしまったりと、日本の企業でもありがちな問題を抱えて帝国軍との戦争で劣勢に陥っています。

 業務を改善するべく、まずは曖昧な憶測を抜きに数字ベースで分析する。周囲の理解を得るために前もって上役に話を通す。作戦行動は優先順位を決め、しっかりとプレゼンを行う。作業効率化のために軍を再編成するなど、共和国軍のさまざまな問題を現代のビジネス術に落とし込んでいく手腕が考えさせます。

 どんなに自分が努力して成果を出しても、一人だけ功績を上げれば周囲の嫉妬を買って疎まれる。ときには味方に手柄を譲ったり、相手の面子を立てたり、そうした処世術が如何にも日本人らしく、どんなに出世しても謙虚で低姿勢なサラリーマン仕草が変わらないのが可笑しい。

 一人のサラリーマンが銀河を二分する宇宙戦争の鍵を握る。この春、新社会人になる方にもオススメしたい作品です。

(「未知の惑星へ」4選/文=愛咲優詩)

飛球世界へ国土転移! 微笑み外交で異星人のこころを掴め!

  • ★★★ Excellent!!!

 地球に迫る巨大隕石の衝突により、人類は全滅した……かに思えたが、隕石落下の瞬間、日本は本土ごと見知らぬ惑星に転移していた。異星フィリアに転移した日本人たちと、現地の異星国家イルリハランの双方の視点から描かれる、日本国憲法や国際法などが絡み合う外交シーンが興味深いです。

 生身で空を飛ぶ異星人リーアンと歴史的ファーストコンタクトをした言語学者の羽熊洋一。彼とリーアンの女兵士ルィルの二人がまったくのゼロからお互いの言葉を学んで、お互いの文化や習慣に触れていく光景に好奇心をくすぐられます。

 そして個人レベルの交流から、次第に国家レベルの交渉へと舞台が移る。地面を本能的に忌避する異星人リーアンたちは地下資源が欲しい。一方、日本人たちは貿易を開始しなければ食糧問題で危機に陥る。お互いに交渉カードを隠しながら、無用な戦争を避けるために歩み寄っていく過程にリアリティがあります。

 人種の違いはあれど国民性が似ている日本とイルリハランは急速に信頼を深めていくが、隣国レーゲンが日本の地下資源を狙い侵略を開始し、否応なく戦争に巻き込まれてしまう。

 一刻も早く異星社会で国家として認められるため、自衛隊、政治家、そして通訳に抜擢された羽熊たち、多く人々が日本の命運を賭けた外交交渉に挑む姿に胸が熱くなりました。

(「未知の惑星へ」4選/文=愛咲優詩)

惑星の平和はとある家族に託された! ロボットバトルは一家団欒の後で

  • ★★★ Excellent!!!

 14歳の少年・渡瀬ハルカたち、若者に大流行しているロボット対戦ゲーム『CosMOS』は、異星人フェアリスが優秀なパイロットを集めるための選別装置だった。ゲームの舞台となる惑星オービスに家族とともに転移したハルカが、宿敵ケイオスやライバルたちと戦いながら未知なる惑星を旅する情景に胸がワクワクしました。

 精神生命体フェアリス、その宿敵である無精神生命体ケイオス。物理法則を超越し万物を再構築する力を持つフェアリスだが、戦う肉体を持たない彼らが、ケイオスに対抗するため銀河の彼方を越えて地球人たちを呼び寄せた。

 フェアリスに導かれたプレイヤーたちは三つの勢力に分かれて、互いに戦績を競いながらケイオスを駆逐していくのだが、人類と関わった一部のフェアリスに感情や欲望が芽生え始め、権威欲や支配欲を満たすために本来の目的から離れて戦闘そのものを楽しむようになっていく。

 ハルカは泥沼化したプレイヤーたちの争いを止め、すべてのケイオスを駆逐して地球に戻るために立ち上がる。

 ロボット対戦ゲームを実物化したような熱いバトルシーンが見どころなのはもちろんですが、世界観は殺伐としすぎず、どこか無邪気で憎めないフェアリスたちや、ハルカを信頼する家族たちの愛情がほのぼのとして心が温まりました。

(「未知の惑星へ」4選/文=愛咲優詩)