家族ものの波が来ている。ラノベでは定期的に流行のサイクルが回るのだけれど、親子関係や子育てを題材にした作品のアニメが放送されたりして再び家族ものが来ていると感じます。ファンタジーでも現代ものでもSFでも、ジャンル問わず合わせられる題材なので取り入れやすい。誰にも身近な話なので描きやすいのもあるでしょう。そこで今回は「義父と義娘の物語」をピックアップしてみました。理想の娘像というのはいくつかのタイプが決まっているものですが、理想の父親像というのはパターン化されてないのではないでしょうか。たまには自分も親孝行もしないとなぁと今回の仕事をしていて思いました。

ピックアップ

この父親が過保護すぎる! 最強の子持ちドラゴン、魔法学校の教師になる

  • ★★★ Excellent!!!

 霊峰に棲まう世界最強にして最古の竜・ディルクルムが人間の赤子を拾った。イブキと名付けられた少女は、竜を父親に活発な少女へと成長する。そんな二人が王都にある魔術学校へ生徒と教師として入学することになり、そこから始まる規格外の父娘の学園生活が愉快でした。

 人間には使えない魔法を使いこなし、学者も知らない古代の知識を持っていたりと、優秀すぎて周囲からみれば非常識な父娘だが、山奥から出てきて世間知らずな二人は、常識的な人間らしい生活を過ごしているつもりのギャップが可笑しい。

 授業中は貴族よりも偉い態度と怖い顔で生徒に恐れられるディルなのに、いつも娘のイブキの動向を魔法で監視して、出掛けるときはこっそりと後をついていく過保護っぷりが、余計に笑ってしまう。

 いろいろと特別な境遇のイブキだけど、裏表ない闊達な性格でクラスメイトの王子様や側付き、お嬢様たちと打ち解けて友情を深めていく年相応の姿が微笑ましいです。

 日常の陰で王国の平和を乱す謎の組織の陰謀が渦巻き、ディルの過去とイブキの出生の謎も絡まる今後の展開に注目です。

(「養父と娘の物語」4選/文=愛咲優詩)

お菓子と快適な生活のために! 転生幼女、超絶美人パパと領地開拓

  • ★★★ Excellent!!!

 ある日、幼女の姿になって異世界に転移したトウカは、辺境に派遣された魔術師クラヴィス・ユーティカに拾われて養女となる。領主の不正を暴き、新領主となった養父と養女が貧しい辺境の改革に乗り出す内政ファンタジーです。

 トウカの転移した異世界は、中世ヨーロッパに酷似しながらも魔法が発達した世界。けれど基礎的な科学知識が欠けており、風呂や水道はあるのに石鹸や洗濯機がないなど、どこかチグハグな世界でまだまだ改善の余地を感じさせる。

 絶世の美貌の持ち主で何事にも優秀な養父クラヴィスは、トウカの現代知識を引き出して辺境の開拓に有効活用しようと試みるのだけれど、その関係は親子というよりも上司と部下?

 能天気なトウカはあまり深く考えず、甘いお菓子と快適な生活のために砂糖を作ったり、生活雑貨を作ってもらい満足しているだけなのだけれど、そうした彼女の思いつきが領地の発展に繋がって人々の暮らしを変えていく光景がワクワクしました。

 仕事中毒な養父と私生活優先な養女の凸凹親子が辺境から世界を変えていくのが痛快な作品です。

(「養父と娘の物語」4選/文=愛咲優詩)

本の世界を旅する冒険者。持ち帰ったのは世界を揺るがす女の子でした

  • ★★★ Excellent!!!

 ロストブックと呼ばれる本の世界を冒険し、異能の源モジュールを持ち帰ることを生業とするのがブックダイバーだ。

 熟練のブックダイバーであるアレックスと、パートナーのチヅルは、最高難易度のロストブックの探索に挑戦し、一人の女の子を現実世界に連れ帰ってしまう。

 ロストブックから連れ帰った少女スーヤは、一日で数年分も成長したり、あっという間に知識を学習したりと、人のようで人ではない正体不明の存在。

 当初はスーヤに戸惑っていたアレックスとチヅルだが、天真爛漫な美少女に育っていくスーヤに次第に愛着が湧いて本当の親子のようになっていく三人の関係に心が温まる。

 しかし、スーヤはロストブックの中の住人が仕掛けた罠だった。お互いを想い合う三人を無視して、ロストブックから現実世界への侵略が始まってしまう。

 本に入り込んで、その世界を冒険するという世界観が夢とロマンを感じます。本の世界から持ち帰った秘宝を使って作り出す、さまざまなアイテムも好奇心を掻き立てました。

 親子の愛が世界を滅ぼすのか、それとも世界を救うのか。二つの世界を巡る冒険と戦争と家族愛を描く壮大なファンタジーです。

(「養父と娘の物語」4選/文=愛咲優詩)

年の差なんて関係ない。家出娘が恋したのは、父親そっくりのパパ?

  • ★★★ Excellent!!!

 家庭内の虐待から家出した少女キララは、スーパーで万引きをして捕まったところを売れない小説家の東雲司に助けられる。写真でしか知らない実の父親に瓜二つの司にキララは一目惚れしてしまい……。仲の良い父娘のような、年の差の恋人のような二人の疑似家族ラブストーリー。

 キララを保護した司の通報で駆けつけた警察により、数々の余罪で彼女の母親は逮捕され、キララは自由の身に。身寄りのないキララの後見人を引き受けた司は、キララを家族に迎え入れるが、彼女は一人の男性として司を見ていて、積極的に誘惑してくる彼女に戸惑いながら始まる親子関係が初々しい。

 生まれたときに出生届けを出されなかった無国籍児で、学校にも通ったことがないキララの暮らしは問題ずくめで、社会復帰を目指す彼女を手助けする司や、さまざまな人々の努力も見どころだ。

 温かい家族と安らぐ自宅、同年代の子との交流や学校生活。子供が当たり前に得られる愛情や環境を、14歳にしてようやく与えられた少女の姿に思わず涙がこみ上がってくる。

 悲惨な境遇でも前を向き、一途な想いを抱いて歩くヒロインの成長が胸を打つ人間ドラマだ。

(「養父と娘の物語」4選/文=愛咲優詩)