君の物語(ストーリー)で世界(ネット)を救え!
265 作品
本コンテストは、セキュリティに関連するコンテンツを目にする機会の増加を通して「セキュリティ意識とリテラシーの向上」、「正しいセキュリティ知識の普及」、「ハッカーへの興味とイメージアップ」を狙い、カクヨムとJNSA(特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会)が組み、開催したコンテストでした。
ジャンルは問わないものの、「読めばサイバーセキュリティに興味が湧くような小説」という、コンセプトとしては狭い分野でしたが、想定を大きく上回る応募があり、多くの方が創作意欲を持って関わって下さったと言う、喜ばしい結果を得る事ができました。
最終選考作品は、ライトノベルの体裁がしっかりとし、技術要素の説明が難し過ぎず・くど過ぎず、読み手が読みやすく・分かりやすく、いずれもレベルが高い作品が並びました。
「サイバーセキュリティ」を意識しつつ、何でもありという完全フィクションではなく、技術的にあり得る延長で分かりやすく。これは書き手の皆さまにとって難しいお題であったと思います。
より現実味のある内容となるよう、本コンテストでは、セキュリティを感じる事のできる「説明会」「見学会」の開催や、Twitterでの「セキュリティ質問受付箱」を常設しておりました。
多くの書き手の皆さまにこういった機会を活用頂け、見て聞いて学んだ事が文章に反映されている事が読み取れました。企画意図が通じた事が大変うれしく、意義を感じた次第です。
「サイバーセキュリティ」について、書き手の方に興味を持って頂け、意図を汲み取った作品が多く集まった事に喜びを感じつつ、この沢山の応募作品や書籍化された大賞作品を手に取った読み手の方にも興味の輪が広がっていく事に期待しております。
教室の清掃用具入れに隠れていた目つきの悪い女は眼鏡をかけたら美少女ハッカーだった――。
<第1話>
ある日、校内に試験問題が漏洩したという噂が流れる。すべての状況がアイドル志望のクラスメイト西村理乃が犯人だと示す中、鷹野祐は美少女ハッカー衣川マトと自分の信じた真実を証明するため調査を始めた。
<第2話>
夏休み。ひょんなことから台風の夜に学校に集まった祐、マト、それにコンピュータ部の部員たちは学校のネットワークからサイバー攻撃を仕掛けている謎のマシンの存在に気づく。
<第3話>
新学期が始まっても学校にマトの姿はなかった。マトが学校を中退して渡米することを聞いた祐は――。
サイバー探偵、雛野つばめ。しょっぱい犯罪者はHACK YOU、です。
ある日突然、理由も分からず一文無しになった少年は、オンラインゲームのフレンドに薦められるまま、『ひなのサイバー探偵事務所』を訪ねる。
「お客さん、です?」
そこにいたのはどう見ても年下の少女だったが、彼女は自分こそが探偵だと言い張る。
依頼を請けて欲しいなら仕事を手伝えと言われた少年は少女に同行するが、「探偵の見せ場」にこだわる少女の無鉄砲な行動に振り回される。
無事に依頼を請けてもらえることになったのだが……待っていたのは、双方にとって思いもよらぬ事実だった。
交錯する少年と少女の過去。
変人揃いのサイバー犯罪捜査官たち。
密やかに進行するサイバーテロの陰謀。
これは、少年が世界に色彩を取り戻す物語。
完成度が非常に高い作品。会話を織り交ぜながらサイバーセキュリティを説明するなど、書き手がわかりやすい解説を意識していた点が高い評価につながりました。キャラクターものとしてしっかり読ませる力があり、さらにストーリーのおもしろさを推す声も多数。ライトノベルとサイバーセキュリティが高次元で調和していました。
VR世界に迷い込んだ江戸の女剣客が紡ぐサイバー和パンク剣戟アクション!
江戸時代、文化三年――剣の道を極めるべく剣客となった少女は達人たる翁と相対し、そして敗れた。
道半ばで命尽きたと思われた彼女は再び目覚めるが、その先で目にしたのは元の江戸とはかけ離れた町――和パンクVRMMO世界『サイバーシティ・BIG EDO』だった。
一方、BIG EDOのセキュリティ『奉行所』は町で発生している「辻斬り」の噂を耳にし、その調査に動き出す。
VR世界に迷い込んだ江戸時代の女剣客とサイバーセキュリティが出会う時、VR世界全土を巻き込む大事件が起きる!
ラノベとして読ませようという勢いを感じました。ネタはちりばめられているものの、全体的にサイバーセキュリティ要素は少なく、もう少し入れ込んでほしいという声も。一方でSF的な和の世界観が混ぜ込まれている点は魅力的。読みやすくもあり、エンターテインメントとしておもしろい作品という評価が集まりました。
高校生ハッカー&高機能AIによるバディ・ハッキング・アクションノベル!
二〇二九年。
世界的に見ても情報化社会先進国、IT大国へと成長した日本。
東京都台東区・秋葉原に住む九十九零(つくも・れい)は、普段は高校二年生として生活を送りつつ、裏ではウィザード級のハッカー『GR455_Hopper(グラスホッパー)』として活動していた。
ある日の夜、暇つぶしとばかりに国内最大手のIT企業『ライフ・コミュニケーション・エンターテインメント社(L.C.E.社)』の社内サーバに侵入し「散歩」を行っていた零は、同社が進めていた極秘プロジェクトによって作り出された人工知能プログラムを見つける。
興味本位でそのプログラムを自身のローカル・マシンにコピーしインストールを行った零だったが、それによって彼はIT社会の深い闇と対峙していくことになる。
現役高校生ハッカーと少女を模した高機能AIとが織り成す、バディ・ハッキング・アクションノベル!
読みやすいという声が最も多かったのが本作。安易に使いやすい違法サイトにアクセスすると事件が起こってしまうという「ピンと来る」展開と、AIを軸にしたサイバーセキュリティのコアな部分がよく描かれていました。ストーリーの受け入れやすさから、サイバーセキュリティに関心を持ってもらう作品としては最も良い、という評価もありました
あらゆるものがリサイクルされる町。
紙屑も、パンも、人間でさえも。
全てが町の栄養となり生活を潤す、完成された循環。
究極のエコシステム「リサイクルネット」。
リサイクルネットは町と調和し、そこに住む人々はシステムを意識する事なく循環の恩恵を受けていた。まるで自然現象の一部かのように。
しかし、完成された循環は、安全な循環とは成りえなかった。
不可解な事件を追い求める先に待つ、システムの真相と、こじ開けられた穴の正体は――。
設定や舞台の世界観で読ませる「これぞハードSF」といえる作品でした。サイエンスフィクションとしてよくできており、読み進めていくうちに没入できるストーリーの上手さもあります。作品のおもしろさは高い評価でしたが、惜しむべくはサイバーセキュリティ要素の弱さ。「もう少し触れていたら」という声が多く出ました。
拡張現実に支えられた平穏の裏側――本物の世界を知る覚悟はあるか?
世界規模のAR(拡張現実)システムネットワーク「ケルムシステム」。
世界に34台設置されたケルムシステム支部のうち、日本には33番目に建造された「ケルム33」が国内のARを支えていた。
高度情報化社会は、旧大戦で大幅に減少した人口と喪われた生活圏の弊害を補いつつ、復興の道を歩いている。
ケルム33のある首都東京。
その片隅で暮らすフリーター八垣拓磨。
拓磨をバイトとして雇い探偵業を営む鳴神。
鳴神の所属する探偵事務所の所長、川崎南。
人類の新たな脅威、殺人コンピュータウイルス「ヴィム」を屠る鳴神と共に過ごすことで拓磨が知ってしまった本当の世界の形は……--
現実と非現実が重なる、プログラムと人間の絆のカタチ。
サイバーセキュリティのネタがまとまりきっていない点はもう一歩ではあるものの、キャラクターをどうやって可愛く、そして感傷的に見せるかという意図はうまく伝わりました。女性の探偵と男性の助手という、昔から愛されるタイプの設定や、トロイの木馬などのわかりやすい用語から、雰囲気が楽しめる作品に仕上がっています。
「サイバーセキュリティ小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
学園ラブコメとしてはベタでありながら、詳しくない人でもサイバーセキュリティの世界に連れて行ってくれる作品に仕上がっていたことが、大きなポイントでした。ヒロインの可愛さや、ストーリー展開の良さも高評価。今回のコンテストの趣旨を理解した上でサイバーセキュリティに関わる事象やキーワードを正しく使っており、さらに深い世界観が書けるのではという期待感も込めて、大賞となりました。