ムーンサルトダンク！

　バスケットボールという競技に多少なりとも魅力を感じた事のある人は、何に魅力を感じたかと聞かれれば、多くの人は空中戦でありダンクシュートであると答えるのではないでしょうか。
　人並み外れた長身と跳躍力を併せ持つ、アスリートの中でも一握りの選ばれた者たちによって行われる、豪快にして華麗な、空中の高みでのぶつかり合い。それこそがバスケの大きな醍醐味だと言えます。

　では、人がより高く跳べる環境で、より高い空中でぶつかり合えば、その豪快さはさらに高まるのではないか？
　本作は、月面という舞台を利用した、そんな思考実験に基づく一作であると言えます。

　SF×スポーツという組み合わせで読まず嫌いし…続きを読む

ツイッターで偶然見かけて読んだのですが、とても面白かった。
まず『月』という、誰もが一度は学びきっと忘れないであろう科学や宇宙学をテーマにしたことで読者に大きな親しみと歓迎感を与えてくれている。

そんな重力の小さい世界でメジャーなスポーツが行われたら？ そんなのワクワクするしかない。既存のルールに身近な科学が加わるだけで、作品の魅力と可能性、それがあらすじだけで脳内に一気に広がった。

少年時代の経験や成長から始まる冒頭も、王道ながら物語にすぐに感情移入させてくれた。そんな描写に少し照れ臭さを感じたのは、読者である自分がどこかあの頃を思い出したからだろうか？

読者層、ターゲットとしては万…続きを読む

月面――月でバスケットをやる！　それだけのこの物語の面白さは伝わるはずだ。地球の六分の一しかない重力で、地球の六倍飛び跳ねるバスケットが――ルナバスケだ。

主人公は、地球から月に上がってきた双子の少年ヤマトとミコト。二人がルナバスケを観戦するシーンから、この物語は始まる。地球最高のプレイヤー『キング』ことブライアンと、月の長身プレイヤー『ビッゲスト』のマッチアップは圧巻で、その試合シーンの様子はまさに白熱。文章を読むだけでアクロバティックな試合の様子が目に浮かぶ。

そんなプロのルナバスケの試合を見た二人が、ルナバスケを始めることを決意し――ルナリアンの少女マルカに出会う。三人は少しずつ親…続きを読む