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概要
外しか見ん人間は、適当にあしらえば良い心まで見る人間を大事にするんじゃ
~口は恋煩いの元~
笹岡笑美(ささおか えみ)、三十歳。
朝の満員電車。
車内はいつも通り、湿った空気と無言の疲労で満ちている。
その中で、笑美はマスクの下で必死に口を閉じていた。
(……今の、言いたい)
(絶対ツッコんだ方がええやろ、それ)
目の前では、サラリーマンがイヤホンをつけたまま、盛大に鼻をすすっている。
ズズッ、ズズズッ。
(ハンカチ使えや!)
(いや、それ以前にイヤホン外せ!)
喉まで出かかった言葉を、笑美はぐっと飲み込む。
代わりに、マスクの内側で唇を噛んだ。
──喋ったらあかん。
──喋ったら、また嫌われる。
そう自分に言い聞かせる。
笑美は、昔から喋りすぎる女だった。
小さい頃は
「口から生まれてきたんちゃう?」
「芸人より喋るやん」
そんなことを
笹岡笑美(ささおか えみ)、三十歳。
朝の満員電車。
車内はいつも通り、湿った空気と無言の疲労で満ちている。
その中で、笑美はマスクの下で必死に口を閉じていた。
(……今の、言いたい)
(絶対ツッコんだ方がええやろ、それ)
目の前では、サラリーマンがイヤホンをつけたまま、盛大に鼻をすすっている。
ズズッ、ズズズッ。
(ハンカチ使えや!)
(いや、それ以前にイヤホン外せ!)
喉まで出かかった言葉を、笑美はぐっと飲み込む。
代わりに、マスクの内側で唇を噛んだ。
──喋ったらあかん。
──喋ったら、また嫌われる。
そう自分に言い聞かせる。
笑美は、昔から喋りすぎる女だった。
小さい頃は
「口から生まれてきたんちゃう?」
「芸人より喋るやん」
そんなことを
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