四谷鮫ヶ橋の湿った空気、夜鷹のお初の荒んだ日々。その描写が色鮮やかで、読み始めてすぐに江戸の夜の底へ引き込まれました。触れない男が運んでくる静かな温度。寄り添うだけの時間が、お初の心に少しずつ灯りをともし、その過程がとても丁寧で、美しくて、切ない。そして、襦袢のほつれ糸を結びつける場面。そのさきをぜひ見届けてください。余韻の残る、とても美しい恋物語でした。
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