第7話 『力の兆し』
あれから数日が経ち、世界はさらに不安定さを増していた。
朝から天気雨が一日中降り続き、街の消滅は日本でも現実となる。
テレビでは好奇心を煽る報道が過熱し、一般人が面白半分で危険な地域に侵入し、行方不明になる事件まで発生していた。
そんな中、明日香は次第に眠る時間が増え、朝もアラームの繰り返しが欠かせなくなっていた。
日常の中で、力の片鱗が少しずつ現れてきているようである。
今日は家で宿題をしていると、シャーペンが急に使えなくなったと大騒ぎする。
確認すると、シャーペンはすでに朽ちていた。
加奈子はハッとする。
「コントロールする装置を急がなければ……」
その日の明日香は眠そうにあくびをしながら、玄関で
「お母さん、いってきまぁ〜す、ふぁ〜」
と学校へ向かっていく。時間は容赦なく過ぎ、眠気に反比例して力が発動する瞬間が近づいていた。
加奈子は会社にリモートワークを申請し、自宅で作業を開始する。
クロノスエコーの改造に取り掛かってから1週間が経過した。
赤いボタンで破壊の力、青いボタンで再生の力を制御できるようになっている。
ただし、制御とは抑えるだけではなく、ボタンを押すことで明日香の身体を壊さずに最大出力を出せる仕組みになっていた。
残る黄色のボタンには、装置を操作するAIが必要だった。
当初、アイラを入れる案もあったが、緊急時に明日香を物理的にサポートする存在がいなくなるため断念。
そこで、アイラのサポートAIとして成長していたリリィを用いることに決めた。
しかし、リリィはまだ未完成で課題が山積している。
リモートで研究員と会議を行い、最終的にアイラとリリィを分離させることを決定する。
深夜、自室で資料と改造中の装置を前に、加奈子は静かに頷いた。
「……よし、これで進める」
窓の外では雨がまだ止まず、街を濡らす。だが加奈子の胸には、未来への小さな光が灯っていた。
明日香の力を正しく導くため、母であり研究者としての道は、すでに動き始めていた。
『母と3人の娘たち 第二章 』クロノスリリィ外伝 猫田笑吉 @nekotasyokiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます