でいだら山
二ノ前はじめ@ninomaehajime
でいだら山
遠方に
独立峰で、左右に突き出た山頂が岩の
国造りをしたという巨人がその身を岩とし、今も大空を支えているのだと言い伝えられている。信仰の対象で、その山が崩れることがあれば天が落ちてくる。
語り継がれる神話から、でいだら山と呼ばれて村民の
馬鹿馬鹿しい。確かにあの岩山は
何にせよ、自然の産物だろう。自分たちの生活には関係ない。岩山を背景に、娘は枝に
驚いて木の葉を散らしながら落下する。したたかに腰を打ち、痛みに涙が
一緒に落ちてきた林檎が、
家に帰ると、母が床に
「いつも苦労をかけちまって、ごめんねえ」
母はそう言って謝った。娘に世話を任せているのが心苦しいのだろう。彼女を不安にさせないために、家の中では明るく振る舞った。布団から半身を起こして林檎を口にする母親を見守る。
生活に追われる中で、奇妙な噂が届いた。井戸水を汲んでいると、村の女性から教えてもらった。旅人が立ち寄り、こう警告したという。
曰く、
月を
騒ぎを聞きつけた娘も集団に加わった。
痩せ細った男だった。
その異様な
白い蓬髪の男は意に介した様子もなく、途方もない長物を引きずって村の中へと入っていく。明らかに尋常ではない。どう追い返したらいいかわからず、村人たちは遠巻きにしていた。放心していた娘が、やがて我に返る。
あの男が向かった先には、自分たちの家がある。
寝たきりになったままの母の姿が脳裏に浮かんだ。
骨が浮かんだ背中へと追いすがる。遠くに母が居る家が見えていた。襤褸を
「あの家には、おっかあがいるんだ」
決死の思いで叫んだ。緩慢に歩みを進めていた
異人だろうか。覗いた瞳は薄茶色をしており、存外に澄んだ目の中に娘を映し出す。しわがれた唇は何かを告げることもなく、わずかに足の向きを変えた。たったそれだけの動きで、巨大な刃が土を抉り取る。地響きにも似ていた。
娘の脇をすり抜け、また歩き出す。彼女は振り返った。痩せた男が歩む先は、母が寝ている家からは
日を跨いで夜明けを迎えた。地鳴りが止み、娘は恐る恐る外へ出た。
不意に刀身が地面の下から浮かび上がる。大量の土煙を巻き上げる刃は、幅だけで娘の背丈を遥かに超えていた。やがて果てしない大空へと突き立てられた鋼は陽光を遮り、陰が被さった少女は呆然と仰いだ。
ああ、天が落ちる。
遥か彼方の切っ先が振り下ろされる。突風が押し寄せてきて、娘は顔を庇った。裏庭に生えた木の枝葉が揺さぶられて、
でいだら山の頂上に刀身が振り下ろされ、真っ二つに切り裂いた。その衝撃が大地を震わせる。信じがたいことに、岩山の裂け目から大量の
頭部に見えていた巨岩から、大きな
でいだら山と呼ばれた岩山は崩落し、砕けた岩々が跡に残った。その
その死に顔は安らかだったそうだ。
でいだら山 二ノ前はじめ@ninomaehajime @ninomaehajime
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