赤い傷口

ふみその礼

第1話  赤い傷口


何事もなく

誰にも見せることのなかった傷口

そこに残る

甘い思い出が


内ポケットにいつも

何か忍ばせているようで

まともに目を上げて

未来を見れなかった


でも隠せない足音の中にも

後悔はついてくる

これは時のつくる痛みだ


誰も

すこしずつ死んでいくことを

とめられない


それなら

このへんで

靴を脱いでみようか

わたしを語り続けてきた

童話のような大きな靴


それですべての勇気と夢が

くだけてしまったら……と

いつもそれにおびえていた


でもちがうよ きっと

そこに現れたわたしの足が

どんなに白く頼りなく見えても

それが本当のわたしなんだ


いつも隠されていた

そこにある傷口は

なにか

咲きかけて咲かなかった

赤い

花のつぼみみたいだ


もう

けして治ることなく

そこにある


きっと死ぬまでそこにいる


赤い傷口


ここまでわたしを支えてきた


誇りを胸に

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 赤い傷口 ふみその礼 @kazefuki7ketu

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