第7話 宣戦布告

 さっきの切り札は、こうして作った。


「【生成AI】Pythonでこのプログラムを書け。計測の魔法陣で部屋の大きさを調べ、次に全員の頭の中心座標を取得。害意判断の結界を部屋全体に張り、先ほどの座標を使って害意を判定。害意がある者を浸透物理攻撃魔法陣で攻撃。ファイル名は“浸透物理攻撃の自動攻撃.py”」


――――浸透物理攻撃の自動攻撃.py――――――――

# ポートに繋がっている魔法陣のアドレスを名前を指定して調べる。

keisaku_port=io_port_search("計測")

kekkai_port=io_port_search("結界")

shintou_syougeki_port=io_port_search("浸透物理攻撃")


# 読み込み先の部屋大きさ座標の辞書

room_pos = {"x1": 0, "y1": 0, "z1": 0,"x2": 0, "y2": 0, "z2": 0}


# 読み込み先の人間座標の辞書

human_pos ={}


# 読み込み先の人間座標の辞書

target_human_pos ={"x": 0, "y": 0, "z": 0}


# ポートアドレスkeisaku_portに指示を書き込む

io_port_write_command_str(keisaku_port, "部屋の大きさを調べろ")


# keisaku_portからXYZを読み込む 接続先は計測の魔法陣

io_port_read_XYZ(keisaku_port, room_pos)


# ポートアドレスkeisaku_portに指示を書き込む

io_port_write_command_str(keisaku_port, "人間全員の頭の中心座標を調べろ")


# keisaku_portからXYZを読み込む 接続先は計測の魔法陣

io_port_read_XYZ(keisaku_port, human_pos)


# ポートアドレスkekkai_portに指示を書き込む

io_port_write_XYZ(kekkai_port, room_pos)

io_port_write_command_str(kekkai_port, "先に送った座標の大きさで害意判断の結界を張れ")


# 何セットあるかを求める

max_index = len(human_pos) // 3


for i in range(1, max_index + 1):

target_human_pos["x"] = human_pos[f"x{i}"]

target_human_pos["y"] = human_pos[f"y{i}"]

target_human_pos["z"] = human_pos[f"z{i}"]


# ここで1組ずつ処理

io_port_write_XYZ(kekkai_port, target_human_pos)

io_port_write_command_str(kekkai_port, "先に送った座標で害意を判断しろ")

if io_port_read(kekkai_port):

io_port_write_XYZ(shintou_syougeki_port, target_human_pos)

io_port_write_command_str(shintou_syougeki_port, "先に送った座標に攻撃しろ")

――――――――――――――――――――――――


 この攻撃を瞬時に実行できるのはボットだけだ。

 人間が手動でやれば五秒はかかる。

 事前に準備していいなら、これくらいは楽勝だ。


 そんなことを考えているうちに、スクリプトが用意した馬車が王城の入口で止まった。

 馬車を降り、車体の下に張り付いていたリタが隠れたのを確認してから、俺は王城へ入る。


 後続の馬車にはスクリプトが乗っている。

 ギルドマスターには領地なしの男爵位が与えられるらしい。

 ……ジャバも男爵。

 貴族というだけで偉そうにしやがって。

 暗殺する気はないが、失脚は願っている。


 ベイシーたちは途中で別れ、使用人の待合室へ案内された。


 俺は謁見の間へ通され、王の前で片膝をつき頭を下げる。


「パイソンよ、ご苦労だった。さて、褒美は何が良い」


「王よ、このような薄汚れた格好で御前に出るとは不敬ですぞ。シャツも裂けております。不敬罪で処刑なさってはいかがでしょう?」


 ジャバの野郎、白々しい。


「とりあえず理由を尋ねたらいかがです? 理由もなく功労者を処刑しては、誰も従わなくなります」


「ちっ!」


 スクリプトの言葉にジャバが舌打ちする。


「ふむ、申してみよ」


「ドラゴンにやられ、呪いのような状態になりました。シャツを脱ぐと死んでしまいます」


「ペテンだ! はったりだ!」


 ジャバが喚く。


「ならば、ジャバ殿と、わしが呼んだ真偽官に判断してもらおう」


「……仕方ない」


 スクリプト側の真偽官はすでに待機していた。

 ジャバ側は王族直属の真偽官が来たらしい。


 二人の判定は……俺は嘘を言っていない、だった。


 王族側の真偽官は嘘をつけない。

 食い違えば、どちらかが魔法契約で死ぬ。

 魔法契約が無効化されていても、矛盾は必ず露見する。

 嘘をついた側が破滅するのは必然だ。


「ではパイソンよ。ドラゴンスレイヤーとなった褒美、何が良いか申せ」


「宝物庫から、宝物をひとつ頂きたいと思います」


「ふはは、語るに落ちたな。この者はドラゴンスレイヤーなどではない!」


「はい。厳密には俺ではありません。クランメンバーが止めを刺しました。真偽官、判定を」


「おい、やれ!」


「この者の言葉は本当です」


「なぬっ!」


「ジャバ、さっきから見苦しいぞ。同じギルドマスターとして恥ずかしい」


「くっ……」


「では、パイソンに宝物庫の宝をひとつ与える。下がってよい」


 宝物庫で俺は卵を見つけ、持ち出した。


「そっ、それは……!」


 宝物庫の扉の前にいた近衛騎士の顔が青ざめる。


「王の命に従ったまでだ」


「待て! こいつを殺せ!」


 俺はリタに使った浸透物理攻撃の自動攻撃ボットを起動。

 近衛騎士たちは全員その場に倒れた。


 城を出る途中、ベイシーたちと合流。

 待合室の外にもチンピラが何人も転がっていた。

 リタの姿は見えないが、仕事は完璧だ。


 スクリプトと真偽官とも合流し、王城の庭へ出ると──

 兵士と騎士で埋め尽くされていた。


「【生成AI】“浸透物理攻撃の自動攻撃.py”の部屋サイズ計測部分を、この庭に対応するよう修正しろ。【ハック】浸透物理攻撃の自動攻撃.py」


 次の瞬間、兵士も騎士も全員気絶した。


「だらしないな。集団貧血か何かか? この攻撃、俺は制御してないぞ」


「真偽官」


 スクリプトが短く命じる。


「この方の言葉は本当です。この魔法攻撃は、この方が制御していません」


「はははっ、聞いたな。王族の影も優秀だからな。ジャバよ、文句があるならいつでも戦争して良いぞ。大義名分があるならな」


「スクリプト、お主、本当に悪よのう」


「パイソン、お前もな。はははっ」


 痛快だ。

 腹は括っている。


 さて……心臓をなんとかしよう。

 それが終われば、本格的に非対称戦・情報戦・ハイブリッド戦・経済戦争の開始だ。


 荒事はスクリプトに任せる。

 俺は防御を固め、こちらから武力は使わない。

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魔法制御ハッカー~魔法陣をハックしたら、王国の階級がバグって、クズ貴族だけ底辺に落ちた件~ 喰寝丸太 @455834

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