第5話 6月12日 (木) 21時32分 モブ山モブ男

 駄目だ、焦ったら。

 そう、ゲームで勝ち続けるために大事なのは、常に冷静でいること!落ち着いて状況を整理しよう!


 あらすじ、クラスメイトの高山と広田からボコボコにされた夜、ゲームキャラになる夢を見た。ゲームキャラになった夢の中で、高山と広田に仕返ししてボコボコにしてやったら、次の日二人は入院していた。そしてまた今日同じくゲームキャラになる夢を見ている。

 つまり、夢だと思っていたのは現実で、僕は夢を見ている間、現実世界の中でゲームのキャラクターになる事ができると言うことだ。


 「………あああああ!だったらキャラクリエイトもっとちゃんとやっときゃ良かったぁぁぁぁ!!しかも名前!モブ山モブ男って!!!」


 まぁこれに関してはもうどうしようもない。気を取り直して検証だ!こう言う状況になった以上、僕はこのゲームを最大限に楽しんでみせるぞ!


 まずは痛覚の確認。試しにほっぺをひっぱてみるがちゃんと『痛い』と感じる。


 「痛いけど、ちょっと痛覚が鈍いような気がする」


 確かに、痛みが強すぎるとHPが減ったら入院したり、動けなくなる。痛覚が鈍いのはこのゲームの、多分仕様だな。


 さて、ここでこのゲーム内で何をするかについて考えよう。

 普通のゲームだったら何かしらゴール(エンディング)が用意されているが今のところそんなものは示されていない。明確な目標等が表示されている訳でもない。

 自由にゴールを決められるオープンワールドゲームなのかな?

 だとしたら………このゲーム内であった出来事は現実世界に影響がある、というかここ現実世界の夜だし。

 つまり、現実世界の僕に有利になるようにゲームを進めていくのが良さそうだ。それを踏まえて、


現時点での問題

・この体は高山と広田から恨みをかっている

・さらにネメシスから恨みを買ったかもしれない


この問題を解決するには………


「このキャラを、強くするしかないか」


強くするにはまずシステム理解だ。


「ステータス」


そう言うと、前回同様空中にウインドウが浮かび上がった。

自分のステータスについては前回確認している。

全ステータスが10なので覚えやすい。


「えーっと、ステータスの他に情報は………おっ!」


現在所有経験値 [ 300 ]

[  レベルアップしますか?  ]


「レベルアップ………ステータスが上げられるのか?」


[  レベルアップに必要な経験値 20  ]


「よし、試しに上げてみるか」


僕はステータスパネルを操作してレベルを上げた。すると、


[  レベルが 2 に上がりました。

   いずれかのステータスを 1 上げられます  ]


「なるほど。任意にステータスを上げていく系ね」


とりあえず力を10から11に上げてみる。


「うん。上がった。ステータス画面にも反映されてる、けど………よく分からん。力が上がってるか実感が沸かない」


[  レベルアップに必要な経験値 60  ]


「さっきは20だった。レベルを上げれば上げるほどあがりにくくなる。普通にRPGだね。さて、お次は」


[  スキル取得  ]


「これだよね」


スキル取得のウインドウを開いてみたのだが、無数にスキルがあるようだ。しかし、ほとんどの項目が[  ???  ]になっている。


これは、まだ取れないスキルとういうことか?それとも何かの条件でスキルは解放される感じなのか?


「お、これ、取れる」


[  スキル 投擲(とうてき)  必要経験値100

       レアリティ ☆

       効果 物を投げた時の命中率アップ小

          投擲速度アップ小  ]


他にも解放されているスキルがある。


[  スキル 近接格闘(きんせつかくとう) 必要経験値 300

       レアリティ ☆☆

       効果 近接格闘が得意になる  ]


[  スキル 逃走(とうそう) 必要経験値 1000 

       レアリティ☆☆

       効果 敵から逃走しやすくなる

       逃走時、俊敏のステータスが5プラスされる  ]


うん、なるほど。

スキルは僕の行動によって解放される。

まず昨日、瓶を投げて広田をぶっ倒した。これで投擲スキル解放。

近接格闘は高山を倒した時にフラグが立った。

逃走は警察から逃げた時。


スキルのレアリティに関しては、上がどこまであるのか分からねぇ。

☆10なんてのもあるかもしれねぇがこの場合どのくらい経験値が必要なのか想像もつかねぇ。


「クソ、情報が絶望的に足りねぇ!クソゲーかよ!!」


しかし文句ばかり言っていられない。

今俺に必要なスキル、それは圧倒的に「逃走」だ。


今ネメシスや警察に見つかった場合を考えると逃走一択。

しかし逃走の必要経験値は1000。

今持っている経験値ではとれない。


経験値を貯めるか、それともレベルアップや他のスキルに使うか。

僕の判断は………


 [  投擲 スキルレベル1を取得しました。  ]


「えっ?スキルレベル1!?」


投擲スキルを取得してみた僕は慌てスキルを確認する。

すると、投擲スキルの画面に[レベルアップ]の項目が増えている。


[  投擲レベル2  必要スキルポイント 2500

          レアリティ☆☆☆

効果 投擲の命中率アップ中

             投擲の威力アップ中  ]


「なるほど。スキルにもレベルがあるのか。レベル上限はいくつか、そして、レベルを上げるメリットはあるのか………駄目だ。検証すべき事が多すぎる。プレイしながら検証していこう」


取り敢えず投擲スキルの検証だ。実際当たりやすいのか。

その辺にあった石を壁に投げてみる。

狙った場所に10回中7回ヒット。

「いや、失敗したな。スキル上げるあげる前の検証をしていなかった」

前の自分と比較できないので効果が実感しにくい。


「まぁ、もうとっちゃったものは仕方!あきらめよう!」


僕はとりあえず町を適当に歩いてみることにした。


そして次はできれば経験値の取得について検証したいのだが………。


そんな事を考え街を歩いていると、ベストなタイミングで通知が出る。


突然目の前にウインドウが現れる。


[  緊急クエスト発生中!  ]

【付近でクエストが発生しています。

※クエストクリア時には経験値にボーナスが付きます。】


経験値ボーナス!やらない手は無い!


僕は周囲をよーく見回した。すると


「やめて!離して!!」


少し先の方で、高校生くらいの女の子が男に絡まれてる。


「なるほど、理解した。あれ助ければいいのね」


とりあえず地面にあった石を投げる。


    ↓↘→+P(弱パンチ)

    『波動撃(弱め)』


女の子に当たらないように、正確性を重視し、威力を下げたのでほぼダメージはない。しかし確実に男にヒットする。

男は女の子を掴んでいた手を離した。よし、これで思いっきりやれる。


「いてぇな!石?誰だ、こんなの投げ………へっ」


「遅いよ」


あほだな。波動撃やヨガフリーズみたいな飛び道具は直接ダメージ与える為じゃない、相手の隙作ったり、距離詰めたりすんのに使うんだよ。

突然石飛んできて、そっち見た瞬間目の前に男が走って距離詰めてたら………


「う、うわぁぁぁぁ!」


「ビビって次の攻撃、避けられないよね!」


     →+K(キック)!

     『ソバット!』


僕の蹴りは男にクリーンヒットし、男は吹っ飛んだ。



「さ、次は何の技を………あれ?」


男は僕のソバットをくらっただけで、気絶しその場に伸びていた。


「ありゃ、弱すぎじゃね?まぁ、いいか。目的は達成したし」


【  クエスト達成  】

 『おめでとうございます。緊急クエスト「クラスメイトの救出」をクリアしました。経験値1000ポイントを入手しました。


やった。経験値1000!って!?えぇ!?クエスト、「クラスメイトの救出」!?


僕は助けた女の子を、まさかという思いで見た。

そこにいたのは、クラスカースト最上位、僕が最も苦手とするギャル星野琴子だった。

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