そうして俺はサンタクロースをやることにした
隣のシマリス
第1話
ある時、起きたら常識が変わっていた。
この世界にはサンタが存在するらしい。……日本だけ
クリスマスになるとサンタさんが来てくれるかどうかを皆が話し合っていた。
というかニュースにも、ばっちりと空飛ぶサンタさんが映っていた。
サンタさんファンタジーすぎない?
まあ、とりあえずよかったね。お父さん、お母さん。この世界では子供たちのプレゼントを買わなくて済むらしい。
「俊太、少しこっち来なさい。」
「どうしたー?父さん?」
俺が飲み物を飲もうと階段を降りたとき、父さんが俺のことを呼んだ。
「世間でな。サンタクロースてのがいるだろ?」
「ああ、いるね。正体不明の存在らしいね。」
「あれ父さんなんだ。」
「………え?」
あれが父さん?
「っスーーーー それで? 」
「叫んでいいんだぞ」
「いや近所迷惑だから。とりあえずそれで?」
「あ、ああ。 父さん今回ちょっと腰痛めてるからさ。サンタの役割を俊太に代わってもらおうと思って」
「いろいろ言いたいことがあるけど、とりあえず言っとく。……普通にいやだが?」
「い、いやでもうちってもともとサンタの家系なんだ。もともと俊太はサンタになる予定だったんだ。」
サンタの家系ってなんだ。
普通にいやだよ!サンタになる運命なんて!
というかそもそも知りたくなかったよ。サンタが代替わりするの。
見た目的に結構年いってると思うんだが。
「そもそも、なんで俺がやらないといけないんだよ!!他の人にやらせればいいだろ!」
「頼むよ~~。サンタになるには素質が必要なんだよ! 俊太しかできないんだ!」
「今年だけ!今年だけだから!」
「嫌だ!そもそもどうやってなるんだよ!」
「ああ。それはな。 テレレテッテレー♪ サンタさん変換器~!」
と、そういって父さんは一つのステッキを取り出した。
「怒られるぞ。というか40代のおっさんがやんな。痛いぞ」
「ぐっ こ、これがあれば、ほら!」
そう言った瞬間
父さんは、赤い服、真っ白な髭、赤い帽子といかにもサンタと言えるような服装に変わった。正直、父さんと言われても信じられないな。見た目ごと変わったんじゃないか?
………というかコスプレでも可能だろそれ。
「俊太。今コスプレでもできると思っただろ。これ」
「何で分かった。」
「顔に出てんだよ。」
……そんなにわかりやすいか。
「このステッキを使うことのメリットは一つだ。 トナカイとソリが呼び出せる! 」
「……なんで?」
「それは父さんも知らん!」
「知らねえのかよ。」
そこは理解しとけよ。
「まあともかく、これがあれば俊太もサンタになれる! お前もサンタにならないか?」
「ならない。」
「え~。どうしても?」
「どうしても。」
「空を飛ぶ体験もできるぞ?」
「ジェットコースターで十分だろ。」
「はあ~ 仕方ないな。今年はなしにするか。」
「……なしとかできるの? サンタって」
「一応な。ただ子供たちは来ないと悲しむかもな~。サンタが来ないとプレゼントもらえないし。」
「どっかに伝えて親御さんに用意してもらうとかは?ほらテレビ局とかに行って放送してもらうとか。」
「誰もサンタの正体を知らないんだぞ?下手なことをすると見つけられる手掛かりになりかねないし。 そもそもニュースとかで報道されるんだから、子供たちもサンタが来ないってわかっちゃうだろ。 」
「ん~。なるほど。」
「サンタがばれたらばれたで、絶対他国のスパイに狙われるしな」
「そんな影響力あるのかよ。」
まあ父さんには俺がサンタをやることは諦めてもらった。
全国で何件の子供がいると思ってんだ。ムリムリ。
□□□□□□□□
父さんのお願いを断ってから数日のこと
叔母からいきなり電話がかかってきた。
「ん?」
「もしもし?」
「もしもし? 俊太兄ちゃん?」
「おお、洋樹か久しぶりだな!どうした?」
俺には従兄弟がいる小学二年生の洋樹という男の子だ。
今回は叔母の電話を使って、洋樹が電話をかけてきたようだ。
「ねえ。俊太兄ちゃん。俺、最近いい子にしてたんだ!サンタ来るかな~?」
「………来るんじゃないか?というか急にどうした?」
「母さんたちがね。俺にはサンタ来ないかもって言うんだよ!実際に俊太兄ちゃんに来てみたいなと思って!俺良い子だった?」
「ああ、いい子だったと思うぞ。」
「そうだよね!いい子だよね! 俺ね!サッカーボールが欲しいんだ!」
「サンタさんも、俺はいい子だってわかってるからボール届けてくれるよね! それだけバイバイ!」
そう言われて電話は切られた。
「………マジか。」
サンタは今年は来ないんだよ洋樹。皆のサンタは今年、腰痛だよ。
………俺がサンタをやるしか方法がないのか?
でもな~。俺があの格好でプレゼントを?
………………
「父さん、俺サンタやろうと思うわ」
「ええ!?急にどうしたんだ?」
「今年だけだ。」
「相変わらずのツンデレ!!」
「誰がツンデレだ!!」
洋樹のためだ。………頑張った人間には、ご褒美が与えらえるべきだ。
「じゃ、じゃあクリスマス任せていいんだな!?」
「何度も言わないでくれ。やるよ。」
「うおおおおおおおお!!」
「うるさい。」
□□□□□□□□
そうして、いよいよクリスマスイブの夜になった。
「じゃあ俊太。このステッキを持ってみろ。」
「わかった。」
「そしてサンタの姿をイメージして目をつむるんだ。最悪、俺がなった姿でもいい」
俺は、よく広告に出てきたりするような、一般的なサンタをイメージして目をつむる
「よし、もう目を開けていいぞ。」
そういわれて俺は目を開ける。家にある鏡を見てみると、そこには俺が、頭の中で思い描いた通りのサンタの姿があった。
……ここでラブコメのなかにあるサンタコスの女の子とか思い浮かべたらどうなってたんだろ。
「さて次はトナカイさんを呼ぶぞ!」
「ステッキを持ったままこう言ってくれ。トナカイさん今年もクリスマスの時期がやってきました。よろしくお願いします。」
「トナカイさん。今年もクリスマスの時期がやってきました。よろしくお願いします。 うわっ。煙!?」
そうすると、いきなり煙が噴き出て、次に煙が晴れると、俺と父さんの正面にトナカイとその後ろにソリが現れていた。
「やっほー。久しぶり!」
「久しぶりです。」
父さんは敬語で言う。
なんか軽いな。トナカイさん。
「あれ、今回のサンタは君じゃないんだね。」
「はい。今回のサンタは私ではできそうにないので、息子の俊太にやってもらいます。」
「そうなんだ~。よろしくね!俊太君」
「あ、はい。よろしくお願いします。」
そういって俺はお辞儀をする。
・・・・・・・トナカイに
「じゃあ早速出発しようか!乗って乗って!」
「はい。」
俺はトナカイさんに急かされ、ソリに乗る。
ソリは思った以上に広めで、そこにはプレゼントを中に入れた白い袋とタブレットが正面に固定されていた。
何でタブレット?
「あの、このタブレットは?」
「ああ、そのタブレットでプレゼントを配った時の反応がリアルタイムで見れるんだよ。まあ、子供は寝ていることがほとんどだけどね。」
「へ、へえー」
それでいいのか サンタよ。
そうして俺が行く準備を進めているときだった。
「あ、そうだ。俊太」
父さんが俺に話しかけてきた。
「うん?どうした?」
「いや、大したことじゃないんだが伝え忘れたことがあってな。」
「え~ 今更?」
まあ、行くことは決めたから別にいいんだけど
「サンタって命の危険があるから。」
「……………は!?」
大事なことだろうが!絶対今言うことじゃねえ!!
「まて!理由聞かせろ!」
「じゃ。出発するよ~」
「待って!? トナカイさん待って!?」
「気を付けていって来いよ~」
「くそ親父が!!帰ったらマジでぶっ飛ばす!!」
□□□□□□□□
「さて、目的地に着いたぞ~!ここがいい子のいる地区だ!」
「……いい子ってどうやって決めてるんです?それ」
「お。良いこと聞くな~。赤いお鼻がいい子のところに導いてくれるんだよ!ほれ。」
そういったトナカイさんの赤い鼻から出たレーザーのようなものが真下の民家を指している。
「意外とハイテク!」
「いつだって技術は進歩しているのさ。」
「ええ……」
なんか思ってるのと違うな。
……そういえばサンタってどういう風にプレゼント配るんだ?
「あのー、トナカイさん。サンタってどういう風にプレゼントを配るんですか?最近の家だと煙突はないんですけど」
「あはは。煙突か~。それは一昔前までのやり方だね。今はまた別の方法があるのさ」
「俺の言うことを復唱してみて!」
「聖なる夜、サンタがいい子に祝福を与える!」
「せ、聖なる夜、サンタがいい子に祝福を与える」
「
「
「はい。今ので近く一帯にプレゼントが配れたよ!」
「今ので!?」
「ほらタブレットを見てみな!」
そう言われたので俺は、タブレットを見てみる。
そこにはクリスマスツリーの前で、車のおもちゃを持って喜んでいる子供の姿やプレゼントの隣ですやすやと眠っている子供の姿が映っていた。
「ほらどんどん行くよ!あまりゆっくりしすぎると間に合わないしね!」
「わ、わかりました。」
そこから俺は、慣れないながら詠唱して子供たちにプレゼントを配っていった。
□□□□□□□□
プレゼントを順調に配っていると、トナカイさんの鼻が青く点滅しだした。
「っち。出やがった。」
トナカイさん!? なんか急に態度変わってない!?
「普段はいい子なのにこのクリスマス直前の時期から性格が悪くなる子が現れる!そういった子には悪魔がついているんだ! それを駆除するのもサンタの仕事だぜ!」
なんかいきなり小説の主旨変わってない?これ。
「ほら。俊太 サンタのステッキを持って叫べ!」
「聖なる夜、いい子に憑りつく悪い悪魔を粛正する! 」
「せ、聖なる夜、いい子に憑りつく悪い悪魔を粛正する」
「
「
そう言った瞬間、
”ズガーン”
近くの家に雷が落ちた。
…………え?
「トナカイさん!? ねえ!あれ大丈夫なの!? 明らかに雷落ちたよ! ねえ!サンタって悪い子殺すの!? 俺、犯罪だよね!?殺人罪だよ!」
「うるさいな~。大丈夫さ。よく見てみて!」
トナカイさんにそう言われたため、俺はもう一度悪い子の家の方を向く。
ひとまず火事は起こっていなかった。なんで?
タブレットを見て、その子の様子を見てみると、ただベッドで普通にすやすやと眠っているだけだった。
「な? いったろ? あの雷は悪魔を浄化するための雷。 人間に害はないよ。」
俺はほっとした。やだよ? 人生の中で犯した犯罪が、サンタコスでの殺人罪とか。
「ちなみにあれを放置しておくとどうなるの?」
「次のクリスマスで駆除されるのを待つしかねえな。それまでずっと性格は悪いままさ。」
「……そうなんだね。」
「……気に病むなよ。それをなくすためにも
「わかった。」
その後も、俺とトナカイさんはその後も悪魔を浄化したり、プレゼントをいい子たちに配布しながら進んでいく。
そうして悪魔を浄化するのに慣れてきたときだった。
「
「GYAAAAAAAAAAAA」
「な、なんだ!? 雄たけび!?」
「浄化の技が効かないぐらい強い悪魔だ!よりにもよって今年に来るか!」
目の前には、3Mぐらいの人と同じような悪魔が宙に浮かんでいた。
「来るぞ!避けろよ!」
「うわっ」
悪魔が俺のことを爪で引き裂こうと突進してきた。
俺はソリの手綱を操りながら、しゃがんで回避する。
全力でソリを走らせ、その悪魔から逃げるが、速度は同じ!!
それどころが時々突進してきて追い抜かされる。
その度に爪が俺の方に向かってくるし、方向転換して逃げ続けるしかない!
「トナカイさん!あれをどうにかする方法は!?」
「ソリの中に黒いプレゼント箱が乗ってるはずだ!それを悪魔に向かって投げつけろ!」
「わかった!」
俺は、ソリの中で黒いプレゼント箱を見つけた。
「おりゃあああああ!!」
俺は、悪魔が突進してきた瞬間にそれを投げる。
悪魔はそれを爪で引き裂いた。………だめじゃん!!
「トナカイさん!プレゼント破られたんだけど!?」
「大丈夫だ!それでいい!」
黒いプレゼント箱が引き裂かれ、俺が慌てていると、
黒いプレゼント箱の中から闇が現れた。
その闇は悪魔に纏わりつき、徐々に悪魔の体を飲み込んでいく。
「GYAAAAAAAAAA!?」
悪魔は完全にいなくなり、闇も消えていった。
………とりあえず助かった・・・のか?
「ふう~~~~」
「お疲れさん。俊太。よくやったな!」
「父さんが言ってた命の危機ってこういうことだったんだね。」
「ああ。実際に過去にはああいう強い悪魔に命を奪われたやつもいる。そういう意味ではサンタも命がけの仕事なのさ。」
ええ……そんな壮絶なバトルあんの?
「さて、これがこの町のラストの一軒かな。これが終わったら次の場所だ」
「……わかった。」
そこは俺のいとこ、洋樹の家だった。
「聖なる夜、いい子にサンタが祝福を与える
「よかったな。洋樹。」
タブレットには、ベッドの上のサッカーボールの隣で、ぐっすりと寝ている洋樹の姿があった。
・・・それから俺は、トナカイさんと一緒にずっとプレゼントを配り続けていた。
もうすべての子が寝ている状態であったが、この俺が送ったプレゼントで皆が喜んでくれると考えると、案外気分も悪くなかった。
□□□□□□□□
「ただいま~」
時刻は6時。まだ薄暗いぐらいだがもう俺はへとへとだ・
ようやく俺はすべてのプレゼントを配り終えて、自宅に帰ってきた。
眠い。早く寝たい。
「おかえり。」
父さんが出迎えてくれた。
「とりあえず今日はゆっくりと休みなさい。それから話を聞かせてもらおう。」
そして俺は、ベッドに横になってすぐに寝た。爆睡だった。
起きたら十四時だ。今日が日曜日で良かったよ。ホントに
それから翌日、洋樹から電話がかかってきた。
「それでね。朝起きてたら枕元にね!プレゼントが届いてたんだ!
しかも僕が欲しかったサッカーボール!」
「よかったな。きっとサンタさんも洋樹がいい子にしてたのを見守ってくれてたんだよ。」
「うん! 僕これからも良い子にしようと思う!」
「そうか。頑張れよ!」
そこから、しばらく話して俺は洋樹との電話を切った。
「どうだった?洋樹君は」
父さんがそう声をかけてきた。
「喜んでたよ。すごく」
「よかったじゃないか。」
「ああ。本当にな。」
「それで~どうだ? サンタになりたいっていう気持ちは湧いてきたか?」
「まあ、たまにならやってもいいかもな。」
「ホントか!?」
「近い!!!たまにだからな!」
「それだけで十分だ!!興味を持ってくれたならそれで!」
父さんはその後しばらく喜んでいた。
それから三年経って…………
「もうベテラン感が出てきたね~」
「そういうのは言わなくていいんだよ。」
「じゃあ準備はいいかな? サンタさん?」
「おう。」
「それじゃあプレゼントを届けにしゅっぱーつ。」
俺は、今年のクリスマスもプレゼントを届けに行く。
良い子にご褒美を送るために…
そして、これからもその子が良い子で居続けられるようにという願いを込めて。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まだクリスマスは早いですが。短編書きました。
カクヨムコンテストに記念受験みたいな感じで入ってみたいので。
皆はサンタはどのくらいまで信じてましたか?
作者は多分小学2年生ぐらいまで信じてました。
そうして俺はサンタクロースをやることにした 隣のシマリス @tonarinoitati
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