だんごまるみ

みなかみもと

だんごまるみ

 今日はどんな楽しいことがありましたか?

 それともいやなことがありましたか?

 いやなことがあると、楽しいことも思い出せなくて、たいへんですよね。

 でもだいじょうぶ。そんなときはまわりを見てください。

 せかいはせまいようで広いのですよ。

 あなたがそれにきづいて、フフフとわらえますように。

 

 クヌギの木の下に、カブトムシが立っていました。

そのりっぱなツノは、ほかの虫たちがみとれるくらいステキなのに、なぜか本人はションボリです。


 このカブトムシは「ヘラクレスオオ カブオ」といいました。

 今、カブオの心はかなしみでいっぱいでした。なにも考えないように目をとじてみましたが、そうすると心はますますくらくなるばかり。


「はぁ…」とため息をついたぶん、カブオの心もちぢみます。でもとめることもできずにカブオがさらにため息をつくと


「ちょっと!」


 足もとでだれかの大声がしました。


「ちょっとあんた!」

 

 おこったような声はさらに大きくなります。


「あんたにいってるのよ!カブトムシ!」


 そういわれてびっくりしたカブオ、つい目をあけて声のするほうを見てしまいました。

 そこにいたのは、カブオよりもずっと小さいのに、カブオよりもずっとえらそうにうでぐみしたダンゴムシです。金色のもようがあるから女の子なのでしょうが、カブオはこんなえらそうな女の子にも、こんなえらそうなダンゴムシにもあったことがありません。おどろいて声もでないカブオに


「きこえてるの?このダメ虫!」


と、ひどいことまで言ってきます。


「だ、ダメ虫?」

 いわれたことのないわる口にカブオがつい聞きかえすと、その子は「しゃべれるんじゃないの!」とさらに声をはりあげました。


「わたしはダンゴ マルミ!ダンゴムシよ!」


大声のあいさつにカブオも


「ぼ、ぼくはヘラクレスオオ カブオ…」


となのりました。


「ならカブオ!さっきからため息ばかりじゃないの!見ているほうもくらくなるからやめなさい!」


 マルミにいわれて、カブオはさらにビックリ。はじめてあった虫に「くらくなる」なんてもんくを言われるとは思いもしなかったのです。


 でも、カブオはにげることができませんでした。

 これまで出会った虫は、みんなカブオをとおくから見るだけ。

 

 だれもカブオの目を見てはなす虫はいませんでした。

 でも目の前のダンゴムシはどうでしょうか?じっとこちらを見てきます。


「それで!なやみごと!?」

 

 マルミがどなりました。


 そのつよい目で見られると、ひみつにしていたなやみごとがカブオの口からうっかりもれてしまいました。


「な、なりたいじぶんになれなくて…」

「なりたいじぶんって?!」


 どうしてこんなに声が大きいのかふしぎに思いましたが、きかれてカブオはモジモジ。だけどマルミにジィッと見られて、つい、つぶやいてしまいました。


「……クワガタムシ」

「はぁ?」


 カブオのつぶやきにマルミは「もう一回いって!」と聞き返してきます。だからカブオはあたりを見まわしてから、こんどはもう少し大きな声でいいました。


「クワガタムシに…なりたいの、ぼく」

「クワガタムシ!あんたカブトムシなのに!」


 ひどくおどろいたマルミの声に、カブオのむねがズキーンッとしました。

 ひみつを話したのもはじめてでしたが、なにより「カブトムシなのに」と言われてカブオの心はとてもいたんだのです。


 カブトムシなのに、へん。次はきっとそう言われる。


 言われなくても、ぼくにはわかる。


 カブオの目になみだがにじんだその時「わかった!」マルミがうなずきました。そして


「それじゃ、いくわよ!」


とカブオの足をつかみ、歩きだすではありませんか。

 カブオはころびかけながら、口をあんぐり。今なんて言ったの?


「行くってどこへ?」


 するとマルミはあたりまえと言わんばかりにふりかえると


「クワガタムシのところに!」

 

というではありませんか。ビックリつづきのカブオでしたが、それにはさすがにとびあがりました。


「クワガタムシに!なんで!?」

「なんでって、クワガタムシのなりかたをききにいくのよ!」


 そのへんじに、うるんでいたカブオの目は一しゅんでかわきました。


「そんなのあるわけないじゃないか。だって、クワガタムシは生まれたときからクワガタムシだよ?」

「じゃあ、クワガタムシがどうやってクワガタムシになったのか、あんたせつめいできる!?」


 マルミがギロッと見てきます。


「知らないだけで、どこかでなにかしたらクワガタムシになれるかもしれないじゃないの!」


 口があいたままのカブオに、マルミはどなります。


「とにかく!ここでかんがえるより、クワガタムシに会ってみるの!うまくすればあんた、なれるかもしれないのよ!」

「な、なれるかなぁ……」


 ウジウジするカブオに、マルミは大きく息をすいこむと


「このダメ虫!」


と、これまでいちばん大きな声でどなりつけました。


「なりたいじぶんになるために、できることをする!ため息つくよりも、クワガタムシに会うほうがずっとけんこうてきよ!」

「けんこうてきって?」

「朝のじゅえきをのんだり、おちばをモリモリたべるようなこと!」


 なるほど。なんだか元気になりそうな…。

 うっかりそう思ってしまったカブオは「さあいくわよ!」といわれるまま、マルミについていくことになったのです。




 花畑には、たくさんのチョウがとんでいました。色とりどりの花とチョウはとてもきれいでしたが、そんなようすも、やってきたマルミとカブオの目には入りません。


「さあ!クワガタムシをさがすわよ!」


 やる気みなぎるマルミはそうさけびましたが、カブオのほうはこまり顔です。


「…ここにクワガタムシはいないんじゃないかなぁ」


 カブオはおずおずとつぶやきました。


「クワガタムシはクヌギのほうがすきなはずだよ?」

「そうなの?!」


 言うと、マルミがとてもおどろいた顔をしてふりかえったので、カブオの声はますます小さくなります。


「さっきの木の上にもいたんだよ…。だからボク、見上げて、かなしくなってたの」

「なんでそれをいわないのよ!」


 いかりで体が赤くなるのではと思うくらいに、マルミはおこりました。「だってきゅうに歩くから…」とカブオもボソボソいいかえしましたが、それでおさまるマルミではありません。


「それならきけばよかったのに!」

「できないから、よけいかなしくなっていたんだよぅ」


 カブオはうつむきました。

 が、どなられっぱなしで、だんだんじぶんがムカムカしているのにも気づきました。

 なんでこんなにおこられるの?何も知らなかったのはマルミちゃんのほうなのに!


「…マルミちゃんこそ、よく知らないのにここまで連れてきてさ…。クワガタムシは花はたべないよ?」

「虫っていえば花畑でしょ!」

「それならぼくらも花畑にいるはずでしょ?思いこみは、よ、よくないと思うな!」


 カブオは生まれてはじめて大声で言い返しました。


「あてずっぽうで歩き出すなんて!マルミちゃんこそ、ダ…ダ、ダメ、じゃないか!」

「なんですって!」


 言われたマルミの目がさんかくにつりあがります。

 二人のケンカにチョウたちがふりかえりました。そして、その中の、青いはねをしたチョウが二ひきのところへヒラリととんできました。


「大きな声ねぇ」


 おっとり話しかけられて、二ひきはビックリ。その青いチョウは二ひきの前におりたつと


「どうしたの、ケンカ?」


 とわらいます。でも、目がわらっていません。だまる二ひきにチョウは指を口にあてました。


「ここでケンカはだめよぅ。お花がびっくりするから」

「そんなことあるの?!」

「大きい声もだ~め」


 マルミの口に、チョウはゆびをあてました。


「お花もいきもの。大きな音にはおどろくし、ケンカしてるとミツが出なくなるのよぅ。だから…」


 ニコニコしながらチョウはピシャリと言いました。


「ケンカするなら遠くでしてね~」

 

 ニッコリ言われると、おこられるよりもこわいことってありますよね。

二ひきはすぐに「ごめんなさい」とあやまると、そそくさと花畑を出ていこうとしました。でも、去り行く二ひきに、チョウが「ねえ」と声をかけます。


「おふたりさんのケンカは何がげんいん?カブトムシとダンゴムシがいっしょなんてめずらしいわよねぇ」


 その声にマルミはいきおいよくふりかえりました。


「このカブオ!クワガタムシになりたいんだって!」


 その声がずいぶんイジワルだったので、カブオもきげんのわるい声をだしました。


「それでクワガタムシをさがしていたら、このマルミちゃんはそもそもクワガタムシをよく知らないんだって!」

「知らないものはしかたないでしょ!」

「はい、大きな声だめぇ。」


 チョウに言われて、二ひきは自分の口をあわてておさえました。


「でもクワガタムシにあって、どうするの?」

と首をかしげるチョウ。カブオは何も言えません。「へん」と思われるのがこわかったのです。

 でもマルミは、小声だけどはっきりといいました。


「クワガタムシになれないか聞いてみるのよ。わたしたちがなりかたを知らないだけかもしれないから」

「それじゃなれるかどうかわからないのに、さがしているの?」


 チョウは目を丸くしました。

 そのようすに、カブオはこわくて下をむきました。へんって言わないで…!

 でも、どうでしょうか。

 カブオのそうぞうとちがって、チョウの目はなぜかキラキラとかがやきだします。


「すてき!」


 チョウの明るい声に二ひきは「へ?」と声をあげました。

 さっぱりわからない二ひきがキョトンとしていると、チョウはさらに声をふるわせます。


「わたし、答えがないとそれでおしまい、かんがえることもないと思っていたの!でも二ひきはちがうのね?答えがないのはじぶんが知らないだけとかんがえて、さがしにいくなんて、ステキ!ワクワクする!」


そして青空にむかって「今日はワクワクきねん日よ!」とさけんだのです。

チョウのはしゃぐようすを、二ひきはぽかんと見ていました。


「…大声だしちゃだめじゃなかったの?」

「きねん日…?」


 二ひきはたがいに「へんな虫がいるもんだなぁ」と思いながら、少しホッとしていました。ばかにせず前向きに受けとめる虫がいるのは、なんだかうれしいことだったからです。


「それじゃあ、クワガタムシをさがしにいきましょうね!」

 と、きゅうにチョウに手をとられ、カブオはまたころびかけながら、マルミをふりかえりました。マルミもおどろきつつ「そ、そうね!とにかく林にもどるわよ!」とうなずきます。


「そこならきっとクワガタムシがいるわねぇ!もう、ワクワクがとまらない!」

いまやだれよりはしゃぐチョウに手をひかれながら、二ひきはほかのチョウに「大声出してごめんなさい」と頭をさげて、花畑からはなれたのでした。


 クヌギ林にもどるのは、あっというまでした。近道をしたのではなく、チョウに「はやく!」とひっぱられたからです。林の入口が見えてくると、チョウが「クワガタムシがいないか見てくるわ」と先にとんで行ったので、二ひきはようやくフラフラとすわりこみました。行ったり来たりしたので、なんだかとってもつかれていたのです。


 二ひきともしばらくボンヤリしていましたが、カブオはふと、ききたいことを思い出しました。


「マルミちゃん」

「なによ?」


 かわらずふきげんな声のマルミでしたが、カブオはもうオドオドしません。ふきげんなのが、きっとふつうのマルミなのです。だから


「なんでぼくに声をかけたの?」


と聞くことができました。

マルミがこちらをむきます。


「なにが?」

「ぼく、ずいぶん体が大きいでしょ?これまでこわがられて、ほかの虫に話しかけられたことがないんだ」

「あら、そ」


 ふきげんなへんじにも、カブオはあきらめません。


「でもマルミちゃんは話しかけてくれたでしょ?どうして?」


 いわれてマルミはじっとカブオを見ました。その目にカブオがうつっています。

マルミが何かいおうとした、その時です。


「きゃーっ」と林の中でひめいがひびきました。チョウの声です!二ひきはたちあがると、あわてて声のしたほうへと向かいました。

 はじめにカブオがいた木のあたりに、チョウの青い羽が見えました。ひらひらとんでいますが、その顔はひきつっています。みるとチョウのすぐ下に、みどりのカマキリがいるではありませんか。そいつはカマをふりあげてチョウを見ていました。


「なにしてんのよ!」


 立ちどまったカブオとはぎゃくに、マルミはカマキリをどなりつけました。その声があんまり低くてこわかったので、カマキリがパッとこちらをふりかえりました。


「ち、ちがうんです!おれ、話しかけただけです!」

「それならまずそのカマをおろしなさい!」


 どなられて、カマキリはすぐにカマをおろしました。チョウは少しほっとしたようですが、かわらずとんだまま。そのようすにカマキリは少しシュンとします。


「おれ、チョウさんがずっとなにかさがしていたから、おてつだいしようと思って…」

「思って、すきあらば食べようと…?」


 カブオの声にカマキリは「ちがいます!」と首をよこにふりました。


「たしかにおれはカマキリだけど、こまっているなら力になりたいって思っただけなんです!」

「うそくさ~い…わたしのおともだち、そう言ったカマキリにこの前かじられたわよ?」


 とびながらチョウは言いました。その目はきつく光っています。だまされないぞという心の声が聞こえるようで、カマキリはさらに小さくなりました。


「…そうですよね。おれ、こわいですよね」

 

 うなだれるカマキリに、マルミとカブオは顔をみあわせました。言っていることはどうであれ、なかなかかわいそうです。だからついカブオが


「クワガタムシをさがしているんだけど…」


と言ってしまうと、とたんにカマキリの顔がパッと明るくなりました。


「クワガタならさっきそこの木で見ました!」

 

 いうとカマキリは、おくへと歩いていきます。話しかけられたのがうれしそうなようすに、カブオはぼくみたいだな、と思いました。そして、チョウがかわらず空から見下ろしているのも、少しかなしいなと思いました。


「この木です、ねもとにもぐるのを見ました!」


 クヌギの下にたどりついて、とくい気にカマキリはいいました。


「おーいクワガタムシ~」


 さっそく、マルミがカマキリのよこでおちばをガサガサさせながらクワガタムシをさがします。


「クワガタムシさん、だよ」

 

 マルミの言い方にカブオはハラハラ。

 そして「いないですか?」とさがしていたカマキリの体が…。

きゅうにガタガタふるえだしました。


「あんた、だいじょうぶ?」


 カマキリに気がついて、マルミは手をとめました。カブオもカマキリの顔をのぞきこみます。が、その目がギョロギョロうごきだしたので、ギョッとのけぞりました。 カマキリはブツブツなにかつぶやきだします。


「ダメなんですおれ。もう虫は食べないってきめたのにおなかがすいているときに目のまえでうごくのをみると、じぶんをおさえられなくて…」


 いいながら、ゆらゆらとカマをふりだしたカマキリに「ほらぁ!」とチョウはさらに高くとびあがりました。

 カマキリのへんかにカブオはこわくて動けません。

 でもハッと気づいたのです。カマキリが見ているのは小さなマルミでした。

 マルミもまた石のようにそこから動けずにいました。大きなカマキリがカマをふりあげ近づいてくるのは、小さなマルミからしたらどれほどこわいことでしょうか。


「マルミちゃんっ」


 カブオはさけびました。でも出たのはそれこそ蚊のなくような声。

 こわくて動けないじぶんの弱虫さに、カブオはなきそうでしたが、ないてはいられません。マルミをたすけないと。にがさないと!マルミちゃん!

 その時、カブオの頭にひびいたのはマルミのあの声でした。

 だから、カブオはありったけのゆうきを出して、頭の中のマルミの声といっしょにさけんだのです。


「この…!」


 カブオのふるえた声は林の中いっぱいにひびきました。


「ダメ虫―っ!」

 

 その声に、マルミはハッとします。

 カマキリは目の前にせまっていました。

 でもマルミはもう固まってなんていません。

 カマキリをにらみつけ


「食べられてあげないわよ!」


とさけぶやいなや、クルリと丸まったではないですか!

 そのしゅんかん、カマキリがマルミにとびかかりました。

ですが、その固いからはカマキリのするどいカマをキーンッはじきとばしたのです!

はじきとばされ、しりもちをついたひょうしに、


「あれ?」


とカマキリは目をぱちくり。すかさず、丸まったままのマルミが


「つぎはおなかいっぱいにしてから話しかけなさい!」


とどなりつけました。その声のこわいことと言ったら…。


「は、はいっ!ごめんなさい」

 

 マルミにどなられ、カマキリはあわてて林からにげていきました。


「マルミちゃん、だいじょうぶ!?」


 カブオがマルミに走りよります。立ち上がりながら「だいじょうぶよ」とこたえたマルミの声が小さすぎて、カブオはびっくり。


「やっぱりどこかいたいんじゃない?小さい声…」

「これがいつもの声の大きさなの。聞こえにくいだろうから大きい声で話しているだけ!」


 たしかにさいごのほうはいつもの大声です。その声をきくと、カブオはワンワンなきだしました。


「なにないてんのよ!?」

「マルミちゃんがぶじで本当によかったよぉ…」


 大きい体をふるわせてないているカブオに、マルミはため息をついてから、ポンポンと足をたたいてやりました。


「おふたりさん、ぶじ?」


 チョウがようやく空からおりてきました。そして、とてももうしわけなさそうに


「…にげちゃってごめんなさい」


とあやまります。


「でもぼくも何もできなかったよ…」


 なみだをふきながらそういったカブオに、マルミは首をよこにふりました。


「あんたのダメ虫で、たすかったわ」


 そして「ありがとう」といって、ほほえんだのです。

 それはカブオにとって、今日いちばんおどろいたしゅんかんでした。

 その二ひきのよこで、お日さまを見上げたチョウが


「…おそくなっちゃった。今からクワガタムシをみつけるのはむりよね?」


 といいました。

 たしかに今からだとほとんどの虫は夜にそなえて、ねてしまいます。

 カブオとマルミも、つかれてすでにあくびが出そうです。


「しかたないわね。今日はかえりましょう」


 マルミがいったので、カブオはドキッとしました。

 これでクワガタムシさがしはおしまいなのでしょうか?

 それだともうマルミたちにあうこともないのでしょうか?

 それは、とても、いやです。


「あ、あの、ぼく」


 カブオはドキドキしながら、がんばりました


「明日も、またいっしょにさがしたいな…」


 その声に、マルミもチョウも目を丸くします。

 でもすぐさま


「そうね。じゃあ明日のあさ、お日さまがのぼるじかんにここで!」

 

と笑いました。


 カブオもホッとしているじぶんをふしぎに思いながら、にっこり。

 それから三びきは林の入り口まで出て「それじゃ」とわかれました。それぞれのかえり道をすすむ中、でも、ふと思い出したカブオが、遠くなるマルミのせなかに「ねえ!」と声をかけました。


「なによ!」


 いつものおこった大声でマルミが遠くからへんじします。

 カブオはまけないくらい大きな声でききました。


「なんでぼくに話しかけてくれたのー?」

 

 さっきおしえてくれなかった答えが気になっていたのです。

 マルミはやっぱり少しだまりこんで立っていましたが、


「あたしもあんたといっしょよ!」


 と大声でこたえました。


「クワガタムシになりたいってことー?」

「ちがうわよ!」


 そしてマルミは、今日いちばんふきげんな大声をだしました。


「あたしがなりたいのは、カブトムシーっ!」

 そういうと「また明日ね!」とマルミは走っていってしまいました。


 マルミが見えなくなっても、カブオはポカンとそこに立っていました。

 だんだん体がポカポカして、それなのにムズムズしてへんな感じ。

 だけどいやな感じではありません。


「また、あしたね」

 

 口のなかでつぶやいて、カブオはフフフと空をみあげました。



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