ミステリーあるある漫才
天野 純一
第1話 ミステリーあるある漫才
A・B「どうも~アマジュンです~。よろしくお願いします~」
A「早速なんやけど」
B「うんどうしたん?」
A「運動はしてないよ」
B「……『運動したん?』じゃなくて『うん、どうしたん?』な」
A「ああ、そういうことね。いや俺最近やりたいことできてさ」
B「ほう。やりたいこと」
A「そう。小説投稿サイトでミステリー書いてみたいな~思てね」
B「ほう。ええやん」
A「サイト名はカカナイヨマナイっていうんやけど」
B「ナニモウマレナイ」
A「ちょっとストーリー考えてみたんやけど、一回聞いてみてくれへん? 俺初心者やからよー分からんくてさ」
B「俺こう見えて結構ミステリー好きやからな。そういうことやったらいくらでも」
A「おぉ助かるわ。まず主人公の名前は
B「クイーンみたいなことかな」
A「それでシリーズ作品にしよう思てね。勝山の最初のセリフが『殺人鬼と同じ部屋で寝るなんて無理だ! 俺は部屋に戻るぞ!』」
B「一旦止まろか」
A「別に動いてはないけど」
B「主人公死んでまう」
A「え?」
B「そのセリフを吐いた者は死ぬねん。例外なく」
A「自分の部屋にこもって身を守ってるのに?」
B「のにやねん」
A「そうなんか。ほな他にも考えてきたから聞いてくれる?」
B「おう」
A「主人公はパトカーに乗ってる警察官。彼は高速道路で無線機に向かって叫ぶ! 『ごめん、絶対後で合流するから!』」
B「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
A「は?」
B「死んじゃう」
A「なんで?」
B「あとそれあんま高速道路のジャンクションで使うセリフちゃうねん。合流ってそういうことじゃないから」
A「はあ。じゃあもう一個だけ考えてきたから聞いてくれや。戦争中のラブコメを描いた話なんやけど」
B「……うん」
A「主人公の勝山はヒロインに向かって優しく告げる。『この戦いが終わったら絶対けっこ——」
B「だから死ぬって」
A「『この戦いが終わったら絶対血行良くなるね』って」
B「前言撤回。引き換えにストーリーが死亡」
A「さっきから何やねん。意味が分からん」
B「こっちのセリフやわ。あとさっきから冒頭のセリフとして不適切すぎるやろ。なんでページめくった途端にコッテコテの死亡フラグ立てられなあかんねん。そういうのはもうちょい話が進んでキャラに思い入れができてから使うねん」
A「そうなんか。お作法が多くてムズイなぁ」
B「ほな書く前に一回プロの小説読んでみたら? 読んだ感想とか投稿するのもアリちゃう」
A「おお。それええな。森博嗣のミステリーとか有名やんな」
B「ああちゃうちゃう」
A「何が」
B「森博嗣はミステリーじゃなくてミステリィな」
A「何が違うねん! そんなこと言うならミステリーとミステリと推理小説の違い教えてくれや。いつもごっちゃになんねん」
B「それは無理や。みんな適当に使ってるだけやから」
A「あぁああ? ルール細かいところとガバいところの差が激しすぎるやろ」
B「ちなみに作者は基本ミステリって呼んでるけど、別にどの呼び方でもいいと思ってる穏健派らしい」
A「作者……?」
B「まあそれは置いといて。お前はどういうミステリーが好みなん?」
A「やっぱ結末でビックリするやつかな」
B「ほな叙述トリックものとかええんちゃう」
A「あ、聞いたことあんで。文章で読者騙すみたいなやつやろ。でもそれって感想書くとき気をつけなあかんのちゃうん」
B「おーよく分かってるやん。叙述トリックは事前に存在を知ってるだけで驚きが減ってまうからな」
A「ほな『〇〇トリック』って伏字にしなあかんな」
B「あーダメダメ」
A「あ?」
B「みんなお前と同じこと考えるせいで『〇〇トリック』っていう表記そのものが叙述トリックの専売特許みたいになっとんねん。絶対書くな」
A「クソめんどくせぇ。じゃあ逆に何書いたらええねん。キャラを褒めるとかならいいんかな。『このキャラ、シリーズ化してほしい!』みたいな」
B「あーダメダメ」
A「今度は何や」
B「そういう奴がおるせいで『話題になってる割に通常よりシリーズ化を求める声が少ない小説』にはメインキャラクターに関するどんでん返しがあるんじゃないかって邪推されてまうねん。絶対書くな」
A「もうええて。……さてはお前、とんでもないネタバレアンチ過激派やな? 普通のミステリ読みの人もっと判定ユルいと思うぞ」
B「……バレたか」
A「何やお前。もうええわ」
A・B「どうもありがとうございました~!」
ミステリーあるある漫才 天野 純一 @kouyadoufu999
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