チャーハンは白くない

れなれな(水木レナ)

冬の三景

 どうもどうも、れなでございます。

 最近ね、朝が冷えてきたでしょう?  わたくし、朝から温泉に行ってきたんですよ。

 そしたらね、帰り道、西の空にまだ月が残ってるの。

 もう朝なのに、月が「え? まだ帰らないけど?」って顔してるの。

 時知らずの月、ってやつですね。

 ロマンチック……だけど、ちょっと空気読んで? って思いました。


 で、ゴミ捨てに行ったら、駐車場の車たちがみんな氷の結晶でおめかししてて。 黒い車なんて、まるで「氷の女王エルサが触れたんか?」ってくらい、バリバリに凍ってるの。 うちの車も見に行ったら、案の定、シナプスみたいな結晶がびっしり。 「おお……これは神経回路……」って、朝から車に哲学感じてました。


 で、そのあと病院に行ったんですけどね、内視鏡の結果を聞いたら先生が言うんですよ。

「胃にポリープが……サンタだかタサンだか……」 え? サンタ? ポリープがプレゼント持ってくるの? って思ったけど、要するに「ポリープでいっぱい」ってことらしくて。

 わたくし、思わず天を仰いで「もうご飯が食べられない……!」って嘆いたら、 後ろで母がボソッと、「そんなことはない。食欲もちゃんとある」って。

 ……いや、正論すぎて笑うしかない。


 で、そのまま母が「せっかくだから外食しましょう」って言うから、 「チャーハンが食べたい」って言ったんですよ。

 そしたら母が「そうそう! この前のセット、スープと餃子ついて700円! 満足~!」って。

 それ聞いたら、ああ、じゃあそれにしようってなるじゃないですか。


 で、出てきたのが……スープと餃子と……白米。

 チャーハン、どこ!?  わたくし、思わず「これは違う、わたくしの食べたかったものではない」って言ってしまって。

 母が「私が払うからいいのよ」って言ってくれたけど、納得いかなくて、車の中で反省会。


「お母さん、私、チャーハンが食べたいって言ったよね」

「ええ、でも注文の時『お母さんが言ってたやつにする』って言ったから……」

「うん、でもさ、スープと餃子がついたチャーハンだと思うじゃん?」

 ……もう、ふたりで大笑い。


 帰ってから、ノートに書きましたよ。

「母がネタをくれた。ありがとう」って。



*母との会話は、日常という名の漫才です。

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チャーハンは白くない れなれな(水木レナ) @rena-rena

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