第2話〈決着〉
〈まえがき〉
2025/12/06 23:15
今話の更新に合わせ、前話の後半に加筆を行いました。
お手数をおかけしますが、既読の方は再度ご確認ください。
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空中に描き出された青く輝く五つの魔法陣は、先の真紅の魔法陣と同じく砲塔であり砲口だった。
凍てつく輝きが一際強くなると同時、それぞれから凛冽なる氷の槍が放たれる。伝播する冷気によって凍結する景色を切り裂いて、鋭利な輝きが宙を行く。
――今ので気絶しないのか。手応えも妙だったし、防御系の付与魔術だな。
対する青年は右手に握った木の棒の感触を確かめるようにしながら冷静に分析し、不敵な笑みを浮かべ言う。
「成程。中々良いローブを着てるなッ!」
跳ねる語尾を伴なって、彼の右腕が霞んだ。猛然たる勢いで迫る氷の槍を迎え撃つように、木の棒が残像と共に振るわれる。
傍目から見ても、ただの木の棒でどうにかなるようには見えない攻撃。されど青年の実力に、常識的な予想は通用しない。辺りに響く
彼が握る木の棒は、確かに超常に非ず。しかし何の変哲もない日常の物品も、常ならぬ者が振るえば超常を破壊する武器となる。
目にも留まらぬ速さで五度。木の棒が振るわれた回数だ。ほとんど同時でありながら纏めての迎撃はできない絶妙な間隔を空けて飛来した氷の槍を、青年は淀みない動きで完璧に迎撃して見せた。
「さて、と」
そのままローブの人影へ目を遣ると、彼は木の幹を支えにしながらなんとか身を起こそうとしているところだった。
「そこまでだ」
言って、青年がローブの人物へ向けて左手を伸ばす。先ほどのような、攻撃を受け止めるための動作ではない。彼の瞳に、腕に、明確な攻撃の意思が宿る。彼我の距離は十メートル以上離れていたが、関係ない。青年には、それだけの距離からでも相手を行動不能にするための手段があった。
戦いを終わらせるべく、彼がその札を切ろうとした、刹那。
バチンッ!という、破裂音のようなものが辺りに木霊した。
音源は、今まさに立ち上がったばかりのローブの人影。男はまるで雷に打たれたように大きくその身を震わせると、全身から力を抜いて再び地面に倒れ伏す。近付いて確認するまでもなく、気を失っているのは明らかだった。
ローブの男から視線を外し、左手を下ろした青年が言う。
「優秀な部下を持つと、手間が省けて助かるな」
彼が笑みと共に視線を向けた先。横合いから、新たに近付いてくる人影があった。
蒼き星の涯なき輝き 夢路 桜花 @kotodama168
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