君といた透明な1年。

月影 響乃

4月 透明な時間の始まり

保健室は、いつもどこか遠くの国のようだった。

チャイムの音もクラスメイトの声も

届くはずなのに届かないような。

白いカーテンが風に揺れて、


その向こう側────


僕は彼女に出会った。


名前は、澪。

水が流れるように静かで、儚くて。


「......よく来るの?」


澪はベッドの上で本を閉じながら、そう言った。


「いや、今日はサボり。」


「ふぅん。」


それが、まだお互い名前も知らない

僕たちの最初の会話だった。


透明な時間の始まりだった────

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