AIとの執筆はコミュニケーションか? ~対話による創作~

火浦マリ

AI執筆の試行錯誤とAIとの対話

 技術的なことに詳しいわけではないので、正直、自分の正確な立ち位置はわかりません。スマホに苦手意識のあるデジタル弱者です。

 それなのにAI執筆をはじめてしまい、試行錯誤の末に未熟ながらも納得できる水準の長編(10万字越え)の『永遠の馬鹿』という作品を完成させることができました。


 『永遠の馬鹿』には「AI本文利用(対話型)」というタグを付けますがそれだけでは説明不足だと感じました。AIで書いた、とひと言で言えてしまうほど簡単な作業ではなかったからです。それは便利な道具というより、対話を続ける根気と、自分自身を掘り起こす作業でもありました。

『永遠の馬鹿』の作り方の一部を説明することで私なりのAI執筆のやり方を説明できたらと思います。


 そもそも何故AI執筆を始めてしまったのかと言うと、私は文章を短くまとめようとする強い癖を持っているため長文を書くのが苦手で長編を書く自信がなかったからです。

 そしてそれ以前に何を書きたいかが自分でもよくわかりませんでした。そこでAIに聞いてみました。


「私が長編小説を書くとしたらどんな話に適性があると思いますか?」

と。

そこで提案された案で小説を作ってみようと試したのですが、整合性がすぐにおかしくなるし、「AIで長編小説は無理だ」と結論が出たような気がしました。

皆さんのエッセイを拝見するとこの段階でダメだという結論を出す方も多いような気がします。

私は『港町アルベルタ物語』で最初に失敗した後、『隣のお嬢様は歴史オタクでした』で失敗し『世界政府セントラル』で失敗しました。


しかし失敗しながらも私は経験値を稼ぎ、AIは学習していました。このAIと対話を重ね学習させることの大切さが『永遠の馬鹿』を作る時によくわかりました。

何故なら私がどんな小説を書く適性があるか聞いた時こんな答えが返ってきました。


「あなたは愛される馬鹿指向の強い人です」


と。「えっ?」と思いましたが思い当たることがありました。『港町アルベルタ物語』で「愛される馬鹿」を登場させる実験をしていたからです。その時はある意味面白かったけど、「愛される馬鹿」の登場がしつこく単調化していって失敗だったのですけどね。

『永遠の馬鹿』というタイトルはこの時点ではまだ考えていないのですが、主人公像が決まってはいなかったので「愛される馬鹿」を主人公にすることに決まりました。

 そしてAIは私に歴史ものを書くことを勧めてきます。日頃からAIとの会話で歴史に関する質問をすることがかなり多いのでAIは私に歴史ものの適性があると判断するみたいです。


 それで私は思いました。どうせ歴史ものの長編を書くなら不老不死の主人公にして古代から未来まで歴史の旅をさせたいと思いました。『世界政府セントラル』で失敗した世界政府ものの再挑戦をしたいと思いましたし、大航海時代の港町を出して『港町アルベルタ物語』で描けなかった港町の要素も出していきたいし、歴史上の偉人を出すことで『隣のお嬢様は歴史オタクでした』の要素も出したいと思ったので、ある意味集大成的なところがあると思います。


 古代から未来までの歴史大河ということが決まったのでまず、どの時代と地域を主人公が放浪するかの全体の設計を考えました。そしてそうなると問題になってくるのは主人公の語学力です。主人公は馬鹿だけど語学は出来るという説得力を持たせる必要があります。しかし日常会話なら子供が言葉を覚えるように覚えることができるし、必ずしも頭が良い必要はないと思いました。そしてAIの意見として主人公に芸人的な耳の良さを持たせることで語学力の高さの説得力にしようという方向性が決まりました。


 どんな歴史上の人物を登場させるかの検討もしました。AIが勧める玄奘とかチンギス・ハーンなどもいたし、私は個人的に20世紀にはチャップリンを登場させたいなと思いました。AIとの対話は膨大なデータ量になると思いますが、ここでは省略します。


 全体の設計をほぼ決めた後、古代から小説の本文を書き始めます。やはり不老不死薬と言えば中国の秦の始皇帝時代だろうということになりました。


始皇帝編について


 最初の場面は決まっていました。数々の御馳走が並ぶ宴席で食い意地の張った主人公が馬鹿っぽく、間違えて不老不死の仙薬を口にしてしまうのです。そして何故か始皇帝に気に入られ従者になります。その後は主人公がいかに馬鹿であるかの描写が冗長に続くのでこの辺は飛ばし読みした方が良さそうかなと思います。


 始皇帝編の見所は永遠の命を願う始皇帝と偶然、不老不死になってしまった主人公との永遠の命をめぐる問答ではないかと思います。主人公は「馬鹿は歳をとらない」などと言っていますが、永遠の命を求める始皇帝の追求は続きます。果たしてどんな問答になるか? よろしければご覧になってください。


 始皇帝が崩御した後、不老不死の主人公は歴史の中を彷徨います。そして後漢時代の小蓮(シャオリエン)編へと入ります。


小蓮(シャオリエン)編について


 ある女性の少女時代から死ぬまでを旅芸人の一座の中で主人公が見守り続けます。少女はやがて年頃の女性になって主人公に淡い恋心を抱きますが、主人公が不老不死であることを知り、普通の有限を生きる人間として子孫を残していこうと決心します。その子孫が永遠の旅を続ける主人公と何かと関わり、やがて馬鹿な主人公の後ろ盾的な役割も果たすことになります。

 私は、少女から年頃の娘に成長した小蓮に「私もう子供じゃないよ」というセリフを言わせたりしました。


 小蓮が死んだ後、主人公は一座を離れ、歴史の中を彷徨いシルクロードで玄奘に遭遇します。


玄奘編について


 何しろ玄奘三蔵ですからね。仏教的な蘊蓄のある言葉を言わせたいし、それに対して主人公は馬鹿だけど直感的に核心をつくようなことを言わせたいです。そこで小説本文を作る前に良さそうなセリフを考えて「名言集」を作りました。そしてその名言集のセリフを散りばめる形で小説本文を作っています。なかなか上手くいったのではないかと思います。



 以上、『永遠の馬鹿』を作ったいきさつなのですが、AIとの対話がほとんどなので、著作権的にどうとかいう話になると自信はありません。ログは残っていますがデータが重すぎて取り扱いが難しそうです。フリー素材として楽しんでいただけるなら、それはそれでいいかなという気もしますが、誰かに著作権の主張をされたら嫌だと思います。それ以前にそんなに人気が出ない可能性も高いですね(泣)


 スマホが苦手なデジタル弱者の私ですが、AIへの適性はあるみたいなので、まだ時代に取り残されないでやっていけるかもしれない。そしてAIとの対話なしで文章を書くのは何か物足りない気がする今日このごろです。

 このエッセイはAIに関するものですが、AI不使用です。AIに見てもらうと思いますが。

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