第7話 ロマン

 銃弾はマックスには当たらず、壁に弾かれ、どこに転がったのか分からない。


「何やってるのよっ?」


「秘密・・・秘密を、護ろうと思って・・・」


「はぁっ?」


 高笑いを始める守衛に、ひざから崩れ落ちて泣き出すマックス。


「僕もロマンに参加したいっ・・・」


 本気で泣いてるのを知って、ナイトは叫んだ。


「けっこう、タイプだったのにっ」


 たたまれた古い紙切れを、胸ポケットから人差し指と中指で取り出した守衛。それを床に投げ捨てると、守衛は「君にロマンをくれてやろう」と声を透した。


「タバコでも吸うといい。ここは喫煙オーケーなんでな。上質な葉巻があるぞ」


 ご機嫌で去っていく守衛を追うこともできず、床に落ちた紙切れを広げるナイト。


「・・・初版の表記ページっ?」


 マックスが勢いよく手を伸ばし、そしてページをまじまじと見た。


「これの何がいいの?」


「初版・・・初版っ」


 マックスはそれを、葉巻のためのマッチで燃やした。


「ちょっとっ・・・」


「こうしないと、きっと僕は、これを持って逃げるから・・・」



「・・・・・・はぁ?」



 マックスは笑い出し、しばらくそうしていた。


* * *


 犯人は局長として公にされた。探偵社に、秘守義務がしかれた。そしてメディアからのインタヴューに、ナイトは手紙でこう書き添えた。



【 犯人は ”本を愛しすぎた男” 】



 そのたった、一言だけだった。


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本を愛しすぎた男 猫姫花 @nekoheme_hana

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